Vol.5 No.2 2012
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研究論文:災害救助支援のための情報共有プラットフォーム(野田)−119−Synthesiology Vol.5 No.2(2012)るオープンソースのシステム開発では、他の人が作成したモジュールをどう再利用するかが重要となる。上記の言葉は、モジュールの機能ではなくモジュールが扱うデータ構造の方が、その再利用のための知識の受け渡しがスムーズであることを示していると言える。災害情報システムも同じく、多数の人間・組織が部分的なモジュールの設計・開発に携わる。また、その開発スパンも長期にわたるものであり、その設計思想やアーキテクチャの知識の伝承は重要となる。その意味においても、データを中心としたモジュール連携の考え方は、災害情報システムの開発手法として的を射ていると言える。4 実証システムこの論文で提案している減災情報共有プラットフォームは、文部科学省の大都市大震災軽減化特別プロジェクト、科学技術振興調整費、安全安心科学技術プロジェクト、首都直下地震防災・減災特別プロジェクトおよび経済産業省の戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト等を通じて開発を進めてきた。そして、これらのプロジェクトを通じて数多くの連携システムを構築し、実証実験を行ってきた。この章ではこのうち、見附市と豊橋市の実証実験の概要について述べる。4.1 見附市実証実験災害時には、現場から報告された情報および各部署間での情報の共有が重要である。提案アーキテクチャに基づく各種災害情報システムを多数連携させる試みとして、2006年10月27日に新潟県見附市市役所にて、水害を対象として防災、減災に関わる多数の機関、多数の各種情報システムのDaRuMaを介した情報システム統合を行う実証実験を行った(図7)。この実験では、市役所の複数の関係部署および消防・警察と、電力・ガス等のライフラインの情報をDaRuMaを介して統合し、相互に情報を共有することを試みた。同時に、災害ボランティア等からの携帯端末を使った通報や水位観測センサーからの自動通報等も統合し、災害対応にあたる職員が情報の整理に忙殺されることなく、災害対応活動に専念できる統合システムを構築した[13]。この実験の特徴は、図7に示した10以上に上る多数の情報システムの連携を延べ3日で実現した点である。一般にシステムの連携は、その機能合わせやプロトコルの擦り合わせ等で時間を要することが多く、特に別々に設計・実装されたシステムを連携させる場合、かなりの工数を要することになる。一方、提案のプラットフォームでは、連携はすべてDaRuMa上におかれたデータを介してのみに限定し、プロトコルもMISPという単純なデータベースプロトコルとしている。これにより各システムの改変はMISPへの対応という形で最小限で済み、また、個別システムとDaRuMaの接続テストが容易であったため、短時間での接続が可能となったと考えられる。この実験は市役所の防災訓練の一環として行われ、実際の市の防災担当職員により、現実的な災害シナリオにのっとって進められた。こういったシステムの評価は難しいが、システム連携により情報が一元化できたことで、災害対応を確実にできるという評価を、訓練を体験した職員より得ている[13]注4)。この点と、システム連携に要した時間の少な新潟県情報共有システム東北電力情報共有システムNTT東日本情報共有システム(総務省実証実験)防災科学技術研究所防災科学技術研究所センサー群(気象・河川・ダム)マスコミへの情報提供工学院大学避難誘導シミュレーション交通シミュレーション産総研安全・安心マイプランマスコミ向け情報DB消防庁内閣府東京大学東京大学情報入力・表示産総研防災科研防災科研産総研防災科研新潟県情報共有DB見附市情報共有DB避難所表示システム防災科学技術研究所災害対応管理システム消防庁情報収集・端末停電情報通行止め情報避難所情報電話不通情報警戒水位情報府省庁間防災情報共有プラットフォーム図7 見附市実証実験全体図
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