Vol.5 No.2 2012
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シンセシオロジー 研究論文−113−Synthesiology Vol.5 No.2 pp.113-125(May 2012)1 はじめに2011年3月11日の東北太平洋沖地震は、自然災害の猛威とともに、災害の多様さ、予測困難さを我々に思い知らせることになった。この15年あまりの間、我が国の震災対策の多くは、阪神淡路大震災を一つのモデルとして進められてきた。阪神淡路のケースでは直下型地震による家屋倒壊や火災延焼により多数の被害者が出ることになり、広域の消防・医療応援とそれを支援するための情報共有が大きな課題となった。これを受け、初動における組織間の事前取り決めや自治体間の相互応援体制等の整備は徐々に進められてきた。一方、今回の震災では被害者の大半は大津波によるものであり、時間差で襲ってくる津波に対する警報の伝達等に多くの課題を突きつけた。もちろん阪神淡路の経験が無駄になったわけではなく、関係各機関の初動や広域連携についても一定の進歩がみられ、長年にわたる取り組みは災害対応として着実な改善をもたらしている。ただ、災害対策には十分というレベルはなく、どのように万全の対策をしても「想定外」を覚悟しなければならないことを、今回の震災で再認識することになった。災害列島と言われる我が国[1]では、災害に対する備えを継続的に整えていかなければならない。各自治体は、地震や火山噴火、津波、台風・風水害、雪害等、多種多様な自然災害からは逃れることはできない。また、首都圏や京阪神・中京地区等の大都市圏では、建物や交通機関が密に集積しており、テロや災害が発生した際に影響が拡大することが懸念されている。実際、日本の大都市は災害等の危険度で上位に名を連ねている[2]。これに対し、災害時の被害を少しでも軽減する対策を打っていくことは、住民の生命・財産を守ることに加え、安心して投資していける地域としての地位を確立して産業振興を助ける意味でも重要である。災害対策では、耐震等ハード面での備えと並んで、情報収集・活用の面での枠組み・体制作りが必須である。想定野田 五十樹東日本大震災ではさまざまな「想定外」に国や自治体の防災体制が翻弄されることとなった。このような事態を軽減するためには、さまざまな要請に臨機応変に対応して構成していける災害情報システムが望まれる。この論文ではその基盤として、データ仲介による緩い情報システム連携の考え方とそれに基づく減災情報共有プラットフォームを提案する。このプラットフォームではさまざまな情報システムを簡便に連携させることができ、災害時の多様な状況に対応してシステムを迅速に組み上げることができる。データ仲介によるシステム連携の考え方は東日本大震災でも有効に働いており、今後、この考え方に基づく設計の在り方を普及させていくことが重要である。災害救助支援のための情報共有プラットフォーム− データ仲介による情報システム連携 −Itsuki NodaInformation sharing platform to assist rescue activities in huge disasters- System linkage via data mediation -Various “unexpected” situations caused by the Great East Japan Earthquake severely hampered disaster-control systems of Japanese national and local governments. A flexible framework for disaster information systems that is reorganizable depending on circumstances is required to mitigate such serious situations. In this article, I propose the concept of “loose linkages” of information systems based on data mediation and a platform for disaster mitigation information sharing. The platform enables us to link various systems quickly, so that we can reconstruct disaster information systems according to various situations in major disasters. I found that the concept was effective for the Great East Japan Earthquake along with various ad-hoc activities of information volunteers. We should spread this concept and platform to Japanese national and local governments, and support organizations to prepare for future disasters.キーワード:情報共有、防災・減災、データベース、情報システム連携Keywords:Information sharing, disaster mitigation, database, system integration産業技術総合研究所 サービス工学研究センター 〒305-8568 つくば市梅園1-1-1 中央第2Center for Service Research, AIST Tsukuba Central 2, 1-1-1 Umezono, Tsukuba 305-8568, Japan E-mail: Original manuscript received December 20, 2011, Revisions received February 22, 2012, Accepted March 1, 2012
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