Vol.5 No.2 2012
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研究論文:鉄鋼厚板製造プロセスにおける一貫最適化に向けて(西岡ほか)−112−Synthesiology Vol.5 No.2(2012)条件に応じた個別の事象を逐次算定、積算し、その結果を評価関数により評価、比較して最適値をとる条件を選択する方案が大半でしたが、大規模かつ多品種の混流生産において、生産順列、すなわちシミュレーションの計算条件の組合せが膨大となる場合、計算機の負荷が過大となり、実用に適さない問題がありました。圧延各工程には、処理能率に影響を与える異なる因子が存在します。例えばスラブヤード工程では、スラブ切断速度、スラブ重量等、加熱工程では、加熱炉装入温度、加熱条件(加熱炉抽出温度、保持時間)等、粗圧延工程では、加熱炉抽出温度、スラブサイズ等、仕上圧延工程では、圧延速度、圧延組織制御のための圧延パス間の待ち時間、圧延長さ等、剪断工程では、切断速度、切断精度等が挙げられます。この能率モデルでは、各工程の処理能率に影響を与えるこれらのパラメーターを抽出するとともに、これらのパラメーターが有意な差異をもつ製品群に分類し、製品群毎に処理能率を統計的に算出しました。さらに、品種、サイズ、加熱炉装入温度等により分類された製品群毎に各工程の処理能率を比較することにより、製品群毎に直列、直結、多段の複数サブ工程中のネック工程を特定して、製品群毎の固有の一貫能率を求める手法を採用しています。議論6 一貫工期モデル質問(赤松 幹之)圧延工程の能率向上によって、精整工程の所要変動が増大した、とありますが、能率向上がロットサイズの拡大につながり、ロットサイズが大きくなると、精整工程が多様であるために精整工程に取りかかれずに仕掛品が多くなるという理解で良いのでしょうか。納期余裕日数の分散に関して、圧延開始納期余裕と製造工期とが独立であることから、それぞれの分散の和で求められるとしています。しかし、圧延開始から製造完了は、圧延開始から納期に含まれており、互いに依存性があるように想像されます。圧延開始納期余裕と製造工期とがなぜ独立とみなせるのでしょうか。回答(水谷 泰)圧延工程の能率向上によって、日当りの圧延量が増大すると、不可避的に精整工程への流入量、すなわち、精整工程の所要量が増大し、それに伴い所要変動も増大します。「能率向上によってロットサイズが大きくなった」とのご指摘のとおりです。精整工程への発生量のばらつきが大きくなると、待ち時間の延長、仕掛の増大につながります。鉄鋼厚板の生産は論文中に述べておりますように、多様な製品注文(注文当り同一仕様の製品は約3 t)を、ロットで製造して(同一の製鋼製造条件:最低300 t、生産性を考慮すると2,000 t超が望ましい)、ロットで出荷する(同一の需要家、納期、輸送機関毎に)点に特徴があります。納期は同一の出荷ロットに対して設定されますが、需要家のニーズにより、多様な製品注文が同一の出荷ロットに含まれるため、製造ロットは出荷ロットとは一致しないことが一般的です。そのため、圧延開始のタイミングは、納期から想定される製造工期を遡って決定はされるものの、製造ロットをまとめるためのばらつきを不可避的にもつとともに、厚板とは独立の、上流工程である製鋼工程の操業変動に伴うばらつきをもつことになります。一方、製造工期は発生工程の有無や操業の変動に依存して、やはりばらつきをもつことになります。したがって、納期余裕日数は、圧延開始納期余裕日数(圧延開始~納期)と製造工期の差として求められます。納期余裕日数=圧延開始納期余裕日数(圧延開始~納期)-製造工期右辺の2項が独立である場合は、この論文中にあるσ納期余裕日数=(σ圧延開始納期余裕2+σ製造工期2)1/2が成り立ちます。実績により検証したところ、ほぼ上記式の関係が成り立つことが確認されたことから、「右辺の2項は独立」との仮定がほぼ妥当なものであると結論しております。
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