Vol.5 No.2 2012
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研究論文:鉄鋼厚板製造プロセスにおける一貫最適化に向けて(西岡ほか)−110−Synthesiology Vol.5 No.2(2012)C.E. Helfat, S. Finkelstein, W. Mitchell, M. Peteraf, H. Singh, D. Teece and S.G. Winter: Dynamic capabilities, Understanding Strategic Change in Organization, Blackwell Publishing (2007).ピエール・プルデュー: 科学の科学: コレージュ・ド・フランス最終講義, 藤原書店, 東京 (2010).ゲオルク・フォン・クロー, 一條和生, 野中郁次郎: ナレッジ・イネーブリング, 東洋経済新報社, 東京 (2001).藤本隆宏: 日本のものづくり哲学, 日本経済新聞社, 東京 (2004).邉見公雄, 武藤正樹: ジェネリック医薬品講座, ぎょうせい, 東京 (2011).吉川弘之: テクノグローバリズム, 日本機械学会誌, 94 (868), 200-204 (1991).執筆者略歴西岡 潔(にしおか きよし)1977年大阪大学大学院工学研究科精密工学専攻修士課程修了。1977年新日本製鐵株式会社に入社。厚板の製造、研究、本社技術行政、役員として全社技術開発企画を担当。1997年君津製鉄所厚板工場長(部長)、2001年本社厚板営業部部長、2005年取締役、2006年執行役員、2009年顧問、東京大学先端科学技術センター客員研究員、現在に至る。2005年日本鉄鋼協会技術貢献賞、2007年谷川熱技術振興基金粉生熱技術振興賞受賞。この論文では、1997年に厚板工場長として厚板生産管理の革新に着手、一貫最適化の実現を主導。水谷 泰(みずたに やすし)1991年東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻修士課程を修了。2006年ノースウエスタン大学博士課程修了 Ph.D(Materials Science and Engineering)。1991年新日本製鐵株式会社に入社。技術開発本部君津技術研究部主任研究員、君津製鉄所厚板工場厚板技術グループリーダー、厚板課長等を経て、現厚板工場マネージャー。これまでに、厚板製造における生産性向上、TMCP技術の開発、一貫最適化に従事。この論文では、技術スタッフとして、一貫最適化の企画、実行推進とともに、生産管理マルチスケール階層モデルの構築を主導。上野 博則(うえの ひろのり)1996年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。1996年新日本製鐵株式会社入社。君津製鉄所厚板工場にて主に高能率化やTMCP技術開発等、操業技術改善ならびに設備企画・開発、厚板製造プロセスの抜本的改善に従事。2005年国際鉄鋼協会(World Steel Association)への派遣等を経て、現名古屋製鉄所厚板工場厚板技術グループマネジャー。この論文では、技術スタッフとして現場改革、操業改善に貢献。川﨑 博史(かわさき ひろふみ)1980年大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻修士課程修了。1980年新日本製鐵株式会社入社。君津製鐵所厚板工場配属後技術スタッフとして工場操業技術改善、商品技術開発に従事。本社技術本部厚板技術室掛長、君津製鐵所厚板工場長(部長)等を経て、現本社厚板[27][28][29][30][31][32]事業部参与。2008年日本鉄鋼協会渡辺義介記念賞受賞。この論文では、2001年に厚板工場長に就任し、工期短縮と生産拡大を実現。馬場 靖憲(ばば やすのり)1977年東京大学経済学部卒業。1986年サセックス大学博士課程修了 Ph.D.、SPRUフェロー、科学技術政策研究所主任研究官等を経て、1993年4月より東京大学人工物工学研究センター助教授、1997年同教授。2001年7月以降、同先端科学技術研究センター教授。2007年4月より同大学院工学系研究科先端学際工学専攻。この論文では、知見の構成化、体系化を担当。査読者との議論議論1 鉄鋼厚板製造プロセスの生産性コメント(上田 完次:産業技術総合研究所)プロセス産業の最適一貫生産という重要で困難な問題を取り上げ、実践的な取り組みにより解決課題項目を明らかにしてモデル化を行い、具体的な鉄鋼厚板製造プロセスでの実績の事例をまとめた論文であり、構成学にふさわしい内容と言えます。この研究のシナリオでは、リードタイム最小化と生産性向上の両立の困難さの認識を根拠にしていますが、この論文での生産性向上とは何を意味するかを明確に記述してください。回答(西岡 潔)生産性は、時間当たりの生産量、すなわち、「能率」を意味しております。鉄鋼業におけるプロセス改革・改善は、メインラインの能率向上に重点がおかれてきました。しかし、個別の設備あるいは設備群の能率向上は製造工期の最小化には繋がらず、逆にこれを悪化させる原因にもなります。この両者をいかに両立させるかがこの研究の主題とするところです。議論2 ミドルマネジメント質問(上田 完次)この論文の主張の一つとして、経営革新におけるミドルマネジメントの役割の重要性が記述されていますが、ミドル層の意味を明確にできませんでしょうか。回答(西岡 潔)この論文におけるミドル層は、現場の工場長クラスを念頭においています。トップマネジメントは、会社全体の組織と制度を変える権限を有するのに対し、ミドルマネジメントは制度と構造の範囲の中で、運用と評価を変える権限を有しています。経営トップの強力なリーダーシップによる全社的な組織、業務構造の改革と、現場経営を担当するミドル層による革新活動が同期化することによって、本来変わりにくい組織活動が一新され、変化する市場環境に対して能動的に対応することが可能となることを、この論文は示唆しています。議論3 マルチスケール階層モデルが得られた経緯と今後の展開コメント(上田 完次)6章は、製造知識の体系化に向けて、あらたなモデルの提案をするという主張です。興味深い内容ですが、どのようにしてこのモデルが得られたかが明確ではありません。また、このモデル提案が、今後どのような産業やプロセスに横展開されるべきか等、展望を述べてください。回答(西岡 潔)提案モデルは、演繹的に導出されたものではなく、試行錯誤を経て作成したモデルを帰納的に理解すれば、時間階層に跨るモデル構

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