Vol.5 No.2 2012
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研究論文:鉄鋼厚板製造プロセスにおける一貫最適化に向けて(西岡ほか)−104−Synthesiology Vol.5 No.2(2012)分散の和は全体の分散の和に等しくなる。すなわち、それぞれのばらつきが独立に決まるものとすると、納期余裕日数の標準偏差は下式にて推定される。σ納期余裕日数=(σ圧延開始納期余裕2+σ製造工期2)1/2ここで、σ納期余裕日数:納期余裕日数(製造完了~納期)の標準偏差σ圧延開始納期余裕:圧延開始納期余裕日数(圧延開始~納期)の標準偏差σ製造工期:製造工期(圧延開始~製造完了)の標準偏差納期余裕日数の予測値は実績値とよく一致しており、それぞれが独立事象と仮定することの妥当性が確認された。上式により納期余裕日数の標準偏差に対する各項の寄与を算出したところ、納期余裕日数の標準偏差に対する圧延開始納期余裕日数、製造工期のばらつきの寄与は、それぞれ約70 %、30 %であり、前者の寄与が支配的であることが確認された。したがって、納期余裕日数の標準偏差の低減のためには、納期に対する圧延開始タイミングの標準偏差を減少させることが重要である。これは、在庫量低減のためには、圧延/製鋼鋳造のロットサイズの制御が不可欠であることを意味する注2)。5.5 製造工期~工程毎工期の寄与に関する分析次に、製造工期のばらつきに及ぼす厚板各工程の寄与について検討した。精整各工程の通過所要時間がそれぞれ独立に決まるとすると、全体製造工期の分散は、各工程通過所要時間の分散の和として、下式のように表現される。厚板工程全体製造工期の標準偏差と、精整各工程の通過所要時間がそれぞれ独立に定まるものとして次式にて算出した圧延+剪断+精整工期の標準偏差はおよそ一致しており、各工程の通過所要時間が独立であるとの仮定が妥当であることが確認された。したがって、当式を用いれば、各工程の所要と能力の変動が厚板製造全体の製造工期に及ぼす影響を簡易に推定可能となる。σ圧延+剪断+精整=(σ圧延+剪断2+∑σ精整各工程2)1/2ただしσ圧延+剪断+精整:圧延+剪断+精整工期の標準偏差σ圧延+剪断:圧延+剪断工期の標準偏差σ精整各工程:精整各工程(手入、冷間矯正、油圧プレス矯正、ガス、塗装、超音波探傷、電溶、マーキング、ショット、焼準、焼入、焼戻)の通過所要時間標準偏差上記の評価の結果、圧延+剪断工程の全工程の製造工期に対する寄与は20 %に過ぎず、製造工期短縮に対する圧延能率の向上効果は限定されることがわかった。一方、精整工程の工期については、大部分は作業待ち時間であり、必要作業時間の寄与はたかだか5 %に留まる。すなわち、納期に対する圧延開始タイミングのばらつきを低減し、適正なロットサイズに制御するとともに、各工程の所要時間と仕掛量を最小化する操業を実現するならば、製造工期が大幅に短縮される可能性が高いと考えられた。品種ごとの通過工程数および製造工期を図5に示す。品種により、通過工程数および製造工期は大きく異なること、製造工期は通過工程数におよそ依存していることが分かる。したがって、各工程の負荷平準化のためには、品種ごとの投入量の平準化が必要であり、さらには投入量の跛行性を予防する観点から、ロットサイズの制御が重要であることが理解される。筆者らは、通過パターンごとに製造工期分布を求め、それらを製造品種ごとの通過パターンの構成比率で按分することで、製造品種ごとの製造工期分布を求める方式を採用した注3)。製造工期を本製造工期モデルにて予測した結果、予測値は実績とよく一致しており、本モデルの妥当性が確認された。したがって、通過工程と各工程での所要時間が分かれば、製造工期が予測できることになる。5.6 所要時間/仕掛モデルの構築工程が独立配置の場合、工程間に十分な仕掛をもつことが可能な場合は、各工程の能率が他工程の影響を受けることは少ない。一方、十分な仕掛がない場合には、他工程の処理待ちの発生や段取り替え時間が増加する等の能率が低下する「リスク」がある。そのため、置場能力が許す範囲内にある限りは仕掛を低減しようとする動機が働かず、精整工程のボトルネック工程への設備増強後も仕掛の最小化はなかなか進展しなかった。精整工程の工期は、前述のように必要作業時間の寄与はたかだか5 %であり、大部分が作業待ち時間であることから、各工程の所要時間と仕掛量を最小化する操業が製造工期の短縮へ向けての課題であった。厚板の精整工程のように、発生の頻度および間隔、処理の間隔にばらつきがある場合の待ち時間の解析には待ち行列理論の適用が有効であることが知られている。そこで筆者らは、工程ごとの通過所要時間を記述可能なモデルを構築することを目的として、待ち行列理論を厚板製造へ適用し、各工程の製品の通過所要時間と仕掛量の予測モデル(所要時間/仕掛モデル)を構築するとともに、その妥当性(各工程仕掛量と通過所要時間の精度良い予測が可能)を検証した。時間ごとの発生頻度と処理頻度が一般分布で変動するとともに、設備故障等に起因する休止の頻度および時間が変動する場合、ある工程の所要時間および仕掛は待ち行

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