Vol.5 No.2 2012
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研究論文:鉄鋼厚板製造プロセスにおける一貫最適化に向けて(西岡ほか)−103−Synthesiology Vol.5 No.2(2012)る。筆者らは、各工程の能率影響因子を適正に抽出し、これらの影響因子が有意な差異をもつ製品群に分類し、製品群ごとに能率を統計的に算出するとともに、製品群ごとに各工程の能率を比較することにより、直列、直結のサブ工程中のボトルネック工程を特定して、製品群ごとの固有の圧延工程全体能率を決定する圧延能率モデルを構築した。製品群サイズを適正に調整すると、圧延工程全体では一貫能率の実績値と製品群の固有の一貫能率の誤差が相殺され、生産順列に起因する変動にかかわらず、圧延能率を高精度に予測することが可能となる注1)。また、この圧延能率モデルによって、品種ごとに下流工程で発生する工程の発生率を推定することができる。能率モデルは、各工程の能率および負荷を決定することを目的としているが、上記に示したようなこのモデルの適用により、圧延工程における大幅な圧延能率の向上を達成した。5.4 製造工期モデルの構築筆者らは、圧延工程の大幅な能率向上を達成したが、この結果、プッシュ型の構造がさらに強化され、ロットサイズ拡大に起因する精整工程の所要変動(処理すべき量の変動)が増大した。すなわち、上流工程である製鋼から圧延のロットサイズ拡大と下流工程である精整負荷の平準化を両立させる最適化の必要性が顕在化した。中間仕掛製品総量は、日当たりの平均生産量と製造工期(日数)の積におよそ等しく、適正な製品在庫量は製造工期のばらつきと、狙いとする納期達成率から定まる。しかし、これまでは、両者の影響因子と連関を定量的に把握し、精密かつ最適に制御する生産スケジューリングがなされているとは言い難かった。したがって、製造工期を短縮し在庫削減を実現するためには、製造工期のばらつきと納期達成率の連関を明らかにするとともに、注文品種構成や製造ロットサイズが、各工程および一貫での製造工期や在庫に及ぼす影響を包括的かつ定量的に記述可能なモデルを構築する必要がある。製造工期は、短ければ短いほど良い変数であり、負にはならない値であるが、日数の平均と標準偏差にはある程度の線形関係がみられる。この事象を表す最も単純なモデルはばらつきの大きさが瞬時値に比例するというものであるが、この場合、ばらつきの分布は対数正規分布となるので、製造工期分布を対数正規分布にて近似することとした(図4)。製造工期分布が対数正規分布に従うとすると、目標とする納期を達成するのに必要とされる日数を簡便に算出可能となり、製造工期モデルの構築あるいは評価を行う上で極めて有用である。対数正規分布は次式のように表される。ここでµはxの対数平均、σはxの対数標準偏差である。 0> 022exp21 ( )= < 0xx2(ln( )- )xxxfσσ納期に対する製造完了の余裕日数の実績値はおよそ正規的に分布しており、その平均値および標準偏差が定まれば、納期達成率、すなわち、納期余裕日数(製造完了~納期)が0日以上となる確率は、次式に示す累積確率分布関数を用いて簡易に算出される。納期達成率: expd22221( - )( > 0; , )= 1-σσσxpttここで、x:納期余裕日数 µ:納期余裕日数平均値 σ:納期余裕日数標準偏差次に、納期余裕日数のばらつきの要因について検討した。注文により納期が設定され、輸送機関や品種ごとの仕様に基づき圧延開始タイミングが決まる。このとき、注文された多様な製品をまとめてロットとして出荷するために、納期余裕と個別の製造工期は独立的になる。また、圧延開始タイミングはさらに上流である製鋼工程の変動の影響を受ける。納期余裕日数のばらつきに対しては、圧延開始のタイミング(圧延開始納期余裕日数:圧延開始~納期)のばらつきと製造工期(圧延開始~製造完了)のばらつきが影響する。構成する事象が独立に発生する場合、各独立事象の図4 製造工期分布構成比率(%)製造工期(日)納期達成製造工期対数正規分布近似実績納期<1<3<5<7<9<11<13<15<17<19<21<23<25<27<29<31<33<35<37<39<41<43<45<47<49024681012141618 exp (2 µ + 2){exp( 2)-1} exp µ + 2 20222exp21-(ln( )- )> 0xxx < 0x ( )= xfσσ ( )= xE ( )= xVσσσ
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