Vol.5 No.2 2012
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研究論文:鉄鋼厚板製造プロセスにおける一貫最適化に向けて(西岡ほか)−99−Synthesiology Vol.5 No.2(2012)量の拡大が実現された(図2)。複雑な製造フローをもち生産における制約条件のハードルが高い厚板製造において、工場単位の全体最適はどのように可能になったのであろうか。この論文は、製造現場においてどのように生産管理が革新されていったのかを紹介し、実現された生産管理システムを時間に関するマルチスケール階層構造として把握し、モデル化することにより、プロセス産業である鉄鋼業がリーン生産方式から何が学べるかを明らかにする。2 鉄鋼厚板製造について製鉄所の製造プロセス用語2は、鉄鉱石、石炭等の原料を高炉で銑鉄とし、転炉、精錬を経て鋼を得る。その後の連続鋳造においてスラブ(長方形の鋼片)を造り、圧延され製品である厚板となる。厚板製造は綿密な生産計画による受注生産であり、転炉一鍋300~400トンの大ロットから3トン程度の厚板を細分化して製造する。製品としての厚板は船やビル、橋、建設・産業機械、液化天然ガス・海底油田掘削用の海洋構造物等多岐にわたる構造物の重要部材として広く使われており、規格が多種多様である、使用か所が厳密に決まっている、一品一葉ごとのスケッチサイズである等、他の鉄鋼品種とは異なる特徴をもつ。厚板は多品種小ロットの受注生産であり、用途が多岐にわたるために、その製造プロセスは複雑である。まず、圧延プロセスで多種多様なサイズの厚板を製造するとともに、金属組織を制御して材質を造り分ける。次に、精整プロセスでは、上流工程で生じた不具合の修正や、用途や必要特性に応じてさまざまな付加的な処理(熱処理、塗装等)を行う。圧延工程における材質の造り込み、とりわけ水冷型のオンライン加工熱処理プロセス(TMCP: Thermo-Mechanical Control Process)は1980年代に日本で開発され、その後30年間にわたり、高級厚板製造の最先端技術として日本の厚板製造の根幹技術となっている。厚板圧延プロセスの概括を図3に示す。TMCPでは圧延後の加工組織に対して冷却速度制御を行うことによって、必要になる金属組織と特性を自由に作り図1 君津厚板工場における製造工期の短縮図2 日本の厚板工場の生産量増加率の比較(出典:日本鉄鋼連盟 鉄鋼用途別受注統計月報(普通鋼/特殊鋼))図3 厚板における金属組織制御とTMCP技術[3]02040608010012014060 Hr20052001工期(工程所要時間)/Hr1.25 1.53 200520051.20 1.32 20041.11 1.20 20031.01 1.06 20021.00 1.00 20012001日本日本君津君津生産量増加率0.80.91.01.11.21.31.41.51.6圧延と冷却の組み合わせで一層強靱化冷却変態延伸再結晶粒成長抑制仕上圧延粗圧延加熱金属組織の変化温度変化プロセスオンライン加速冷却:オンライン冷水プロセスホットレベラー仕上圧延機粗圧延機加熱炉ホットレベラーによる平坦化多パス圧延制御加熱温度制御鋳造条件制御オンライン水冷による組織制御厚板強冷却:マルテンサイト中間冷却:ベイナイト緩冷却:フェライト・パーライト800 N/mm2超500~600 N/mm2クラス600~800 N/mm2クラス連続鋳造

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