Vol.5 No.1 2012
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研究論文:高品質なプロジェクトマネジメントを実現するトレーサビリティ・マトリックスの構築(榮谷ほか)−6−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)分値は、要素間の難易度を評価して決める(難易度の設定指針:参考資料1)。基準値は1であり、難易度が高いほど1より大きな値をとり、低ければ1より小さな値をとる。4.3 複雑性の定義前述のとおり情報移転の複雑性は以下のように定義する。「複雑性=難易度×相互依存性」とする。ただし、難易度=“システムマトリックス n”のユークリッドノルム、そして、相互依存性=“システムマトリックス s - 単位行列”のユークリッドノルム、とする(計算事例:参考資料2)。難易度・相互依存性は共にプロジェクトの個々の要素と要素間の状態を反映した変数である。したがって、それらの指標を捉えることで各行列の要素と要素間の関係性を捉えることができる。同時に、それを掛け合わせた複雑性の変化を捉えることでプロジェクト全体を捉えることができる。4.4 正方行列化について要素間の関係は必ずしも正方行列にはならない場合もある。その時には、相互依存性の算出に必要な対角化をするために正方行列化する必要が生じる。正方行列化するには成分値0を付与することで正方化する。成分値0であるので、正方行列化によって相互依存性は追加した次数分その値は変化する(なぜならば、正方行列化で追加した行または列の分の対角成分を引くため、追加分の対角成分が-1になるからである)。しかし完全な独立性は単位行列という正方行列で表されることを考えると、非正方行列における成分値0の付与による相互依存性の値の変化はその非正方行列の独立性を示す指標であると解釈される。以上のことから、成分値0の付与により正方行列化することをルールとする。5 トレーサビリティ・マトリックスを活用したプロジェクトマネジメントのPDCAサイクルこの章ではプロジェクトの全体と細部を的確に把握し“木も見て森も見る”方法論を説明する。説明にあたってはPDCAサイクル(計画→実行→評価→改善のサイクル)をシナリオに用いる(図4)。はじめに、トレーサビリティ・マトリックスを作成するために具体的に要素を整理し、マトリックスを構成する。そして出来上がったトレーサビリティ・マトリックスの難易度や相互依存性を改善してプロジェクト全体としての複雑性を低減する。そのプロジェクトで実際に開発作業を進め、その進捗状況をチェックする。進捗指標としてプロジェクトの複雑性を用い、その変化を見ることでプロジェクトの状況を俯瞰する。複雑性の変化が増加傾向にあるならば、それはプロジェクトの状況になんらかの問題が生じているため、その原因となっている要素を洗い出す。シミュレーションにより、要素の難易度や相互依存性を変化させ、プロジェクト全体の複雑性を低減することに一番効果的な要素を洗い出し、プロジェクトの状況を改善する。以降ではPDCAサイクルに沿って詳細に説明する。5.1 PLAN(計画)5.1.1 要素の洗い出しとその関係性の整理図4に示したようにプロジェクトの現状分析を行い、システムマトリックスの作成に必要な要素の洗い出し、その関係性の整理を行う。しかし、要素の粒度がまちまち、または関係性が分からない等の理由からシステムマトリックスを作成できないことも想定される。そういった場合は、そもそもプロジェクト計画上になんらかの問題があると考えられるため、その解決を行う。スタートプロジェクトを実行感度の高い要素へ対処策を実行構成要素の難易度を変化し、複雑性の感度分析変化率が増加傾向か?複雑性の変化率をチェック工程毎、月・週単位など適切な周期で見直しを実施複雑性を評価難易度の低減相互依存性の低減要素の粒度がまちまち? 関係性が整理出来ない?プロジェクト計画の問題点整理(ex.体制が曖昧、作業フローが曖昧など)システムマトリックスを作成要素の洗い出しとその関係性整理PLANCHECKACTDONoYesNoYes図4 プロジェクトマネジメントのPDCAサイクル
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