Vol.5 No.1 2012
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−68−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)報告:シンセシオロジー(構成学):知の統合からイノベーションへスをやるということ、それから実務的なことをやろうということでした。「シンセシオロジー」とディシプリンの関係、それを実体化させていくときの仕組みという観点からいかがでしょうか。赤松 「シンセシオロジー」が目指しているのは、事例を集めることによって、既存のディシプリンを超えた何らかの方法論が見えてくるのではないかということです。例えば戦略的選択型、ブレークスルー型、アウフヘーベン型と分けられると思いますが、「シンセシオロジー」のいいところはすべての分野を対象にしていることです。意外に自分の専門分野でなくても理解できるのですが、それは「研究者のものの考え方」という意味で共通しているところがあって、構成するという観点になると話が通じてくる。それが学際をつなぐディシプリン構築の一つの力になるのではないかと思います。妹尾 ディシプリナリーの話でいうと、私は新領域を開発する方法は、“尖”端知、学際知、間隙知、融合知、横断知、上位知、今のところこの6つだろうと思っています。また、先端的領域は仮説検証なんだろうかという疑問をもっていまして、むしろ探索学習ではないかと考えています。さらに、「シンセシオロジー」を横から拝見していて、一体どこにいくのかなと思ったときに、オントロジカルなディシプリンではなく、むしろエピステモロジカルなディシプリンやメソドロジカルなディシプリンでの展開もあってよいのではないか、と考えます。それを指向しているとしたらシンセシオロジーの可能性はすごい領域になりそうな気がして、私はワクワクしています。小野 大変元気づけられるご意見をありがとうございます。日本語の“科学”という用語は「枝分かれしていった先」という意味があると思うのですが、シンセシオロジーでは特定のディシプリンをつくらないということを考えておりまして、各ディシプリンに共通で横断的、あるいは融合にも使えるような3つの形態の方法論を今は強調していますが、先生が言われた形態もぜひ検討していきたいと思っています。小林 「イノベーションにつながる政策をどのように議論していけばいいのか」ということに関して、「イノベーションをベンダーではなくユーザードリブンで行う」、「日本が世界のスピードについていけない」等々のお話もありましたが、「どのように計画して政策にもっていくのか」、ということについてはいかがでしょうか。赤松 具体的なものを手にしてみて初めて何かを感じるというところがあります。存在物になった物やシステムの力はすごくあるので、そこをうまくフィードバックをかけながらやっていくというプロセスを組むことはひとつ考えられる。これまでであればハードウエア的なものをしっかり積み上げていかないと物ができなかったけれども、シミュレーション的なものをうまく使って、想定される形をある程度つくってやってみることは早い段階でできるのではないかと思います。隅藏 ニーズ収集するための仕組みとしてボトムアップ的なものが必要だというふうに提示したのですが、もちろんいろいろなルートがあり得ます。特にニーズを考えないでやっている基礎研究がどこかでニーズにつながることもあるので、うまくそれらを汲み上げて必要なところにつなげていくマッチングの仕組みが必要ですし、それらのインタラクションのところにいる目利き的な人材の育成が必要だと考えます。妹尾 みんなが「知をどう使うかという知のあり方」を開発しはじめた、ここがポイントです。私は「知を活かす知」という言い方をしているのですが、日本が遅れているのは知そのものの開発ではなく、知を活かすための知の開発です。シンセシオロジーは知を活かす知の開発を試みているのだろうと思いたいのです。赤松 知といっても事実的知識ではなくて“当為的な知識”、「何をなすべきかの知をつくる」、これが一番のターゲットだと考えています。妹尾 そこに踏み込まれたのはすごくよいと思っているのです。一つは研究開発について、時間的な変容と空間的な変容が起きていると思っています。国内ローカルでやったものをグローバルに出すという国内先行ではなく、グローバルファーストをやらないとだめになってきた。時間的な問題をいうと、これまでのような短期1~3年、中期5年、長期10年という考え方でいいのだろうか。イノベーションの短期とは既存モデルの磨き上げの時期、長期とは次世代モデルの普及・定着の時期、中期を既存モデルから新規モデルに移行する時期と定義するとバイオの世界とITの世界では明らかに違います。もう一つは、政策と産業界の動向があまりにもかけ離れているので、その乖離をチューニングし直しましょうと提案しています。このリチューニングの方法論も「シンセシオロジー」で開発するターゲットの一つとして期待しています。小林 きょうの議論をさらにまた発展させていだきたいと思います。私自身も新たな示唆を受けましたが、会場の皆さんも新しい方向性が少し見えてきたのではないかと思います。これでパネル討論を終了させていただきます。ありがとうございました。
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