Vol.5 No.1 2012
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−67−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)報告:研究・技術計画学会構成学ワークショップ−シンセシオロジー(構成学):知の統合からイノベーションへ−ものです。②“製品の形にしてやってみせる”という方法もあります。製品の形にまず作って、どんな性能があるかを具体的に見せてしまうというものです。多くの長さの国家標準器として用いられるヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザの発振波長はレーザ共振器の機械的長さによって決まっていたのですが、それを汎用的な要素技術をうまく使って机の上に乗るコンパクトな長さ標準器を作り、「こんなに小さくてもできる」ということを見せました。また実時間全焦点顕微鏡は、高さに違いがあってもピントが合うことを見せてインパクトを与えることで、実際に製品化されています。③“ニーズは理解されているが、躊躇がある”こともあります。知財の関係や、必要性や重要性はわかっているけれども、なかなか手をつけてもらえない。このときは相手の理解を待つか、あるいは相手の懐に飛び込む。紫外線防御化粧品のケースですが、ものはできたものの知財関係でうまく話が進まなくなったので、しばらくその問題を棚上げにして、調整することで2、3年後に製品化されました。また情報システムの信頼性を高めるための活動をしているグループは、実際にそのフィールドに入り、価値を理解してもらったという例があります。最後に、「製品化はできていて、社会に定着させる場合」です。これには多様なステークホルダーの寄与がポイントになります。IH調理器が家庭に普及していくプロセスの中で、重要な役割をしていたのが感性リード・ユーザーである料理研究家の貢献だったという例です。また、カーナビは要素技術から全体の社会システムまで、ミクロからマクロまでのさまざまな技術の統合ですが、それぞれが自分たちの役割を考えながら産業システム全体としてうまく動くことによってカーナビを広めていきました。この場合、特に大事だったことは各レイヤーの企業の人たちが「カーナビを広めよう」という夢を共有していたということです。幾つかの事例のサマリーですが、これからの議論の材料にしていただければと思います。研究開発成果の社会導入のためのシナリオ• 感性的リードユーザーによる製品の使用価値の付加• 異業種との連携と、競合他社との連携・標準化による競争と共同関係の構築産業としての確立・拡大ステークホルダーへの技術導入促進• 時間を掛けた新技術の価値の理解• 現場に入って共同して課題発見を行なって理解を促進試作品の幅広い試用機会の提供• 試作製品のターゲットユーザーへの貸出し、公開試用版による不具合抽出、必要機能の抽出。• 製品の形にして、実現機能のインパクトを表現要素技術の展示やサンプル提供• サンプルで機能をみせて新技術のインパクトを呈示• サンプル試用からのフィードバックで技術課題・研究課題を抽出産業界でニーズが明確化されていない場合• 計量標準のトレーサビリティ体系の構築• 新技術に適合した製造技術の開発産業界でニーズが明確化されている場合パネル討論「知の統合からイノベーション創出に向けて」小林 「構成知」をイノベーションにつなげるための方法論の発表について、フロアからご質問、ご意見をお受けしたいと思います。フロア 第4期科学技術基本計画で「科学技術政策から科学技術イノベーション政策へ」ということが決定されたが、どうやっていいかわからないという状況だと思います。ただ、今、非常時で思考の枠組みを変えるチャンスではないか。ぜひ、妹尾先生、隅藏先生から過激なご発言をいただきたいと思います。妹尾 “イノベーション体感速度”が日本だけ非常に鈍いという感がします。死の谷という問題があるから解決しようという発想はあります。しかし、欧米のビジネスモデルをみると、むしろ死の谷自体を作らないモデルを工夫しているのです。問題を解決するのではなく、問題自体を解消しようとしている、これは大いに学ぶべきだと思っています。ファンドを入れずに急速に市場形成が立ち上がれば研究開発投資の回収はあっという間にできる。そのスタイルを新興国とのWin-Winの関係でつくるというモデルをなぜ日本はできないのだろうかと訝っています。隅藏 社会的に必要な技術を収集する方法として、例えば地図ですが、みんながGPSを入れた携帯をつけて車や徒歩で移動すると歩いた道が地図と同じように表示されて使えるというウェブサイトがあります。これはまさにボトムアップ的なものづくりの可能性を考えさせられるものであり、そういったことも活用できるのではないかと思います。妹尾 今のお話は、ベンダードリブンではなくてユーザードリブンだということとも言えるのではないでしょうか。イノベーションの提案はベンダー側がやるという発想ではなく、ユーザードリブンイノベーションの力をもっと引き出さなければいけない。今日の非常時に盛んに言われているのはソーシャルイノベーションです。私はソーシャルイノベーションとは、「ソーシャルを、ソーシャルで、ソーシャルにやる」ことだと考えています。生活空間から社会空間における今の閉塞感は、社会全体の価値形成を変えなければ打破できない。今、ソーシャルビジネスという領域が出てきています。同じ空間にソーシャルにつながることによっていろいろなことが創発されるという世界が動き始めていることに注目したいと思います。フロア 研究・技術計画学会の前身として、30年前、東京大学の中で基礎科学科第二をつくったのですが、シンセシ

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