Vol.5 No.1 2012
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−65−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)報告:研究・技術計画学会構成学ワークショップ−シンセシオロジー(構成学):知の統合からイノベーションへ−価値をうむだけだったらinventionです。これが私の問題提起の一つです。第二に、既存モデルをいくら改善・洗練させてもイノベーションにはなりません。既存モデルの錬磨(improvement)と新規モデルの創新(innovation)も、これまた区別すべきでしょう。レコードの技術をいくら高めたとしてもCDにはかなわず、CDの技術をいくら高めても最終的にはiPodの世界に入る。そうだとすると、新規価値の創出と普及・定着をどうやるのか。クリエーション、ジェネレーション、プロデューシング、その一つの方法論としての“統合化”あるいは“構成化”という意味でのシンセサイジングではないかと思います。しかし、それだけでしょうか。最後の「知の創出と再編成は社会的価値転換と産業競争力強化にどう貢献するか」の議論をします。イノベーションの方法論には、研究・技術計画学会が中心に置いている「技術革新起点型」もありますが、デザインやコンセプトを起点として技術をうまく活用するという「事業革新起点型」があります。コンセプトドリブンもあれば、デザインドリブンもある。例えば、商品企画から入った例としてがあり、意味から入りモノとコトを変える例として旭山動物園があるでしょう。人気の秘密は、形態展示というコンセプトを行動展示に変えたことを通じて動物園の設計まで全部変えた。デザインドリブンとは、例えば日用品がそのまま防災に使えるというふうに、日常と非日常の垣根を越えたものにする「スマートデザイン」があり、現在私はその運動を始めています。これを私は「オアの関係からアンドの関係への変容」と言っています。これ以外にもユニバーサルデザイン、エコデザインの考え方もありますが、これらは最初に革新的なコンセプトを置いて、それを起点として技術を誘導するスタイルです。そして「商品形態・事業業態革新起点型」です。製品イコール商品と考えていた時代からハードウエアにソフトウエアやユースウエアが入ってくる。iPodはiTunes storeというサービス形態と同時に価値の創発的形成をしています。iPodについて、ウオークマンはプレーヤーだが、iPodはメディアとプレーヤーとストレージの融合体であり、かつiTunes storeというサービスとの複合的な価値形成だと言ったのは、自慢させていただくと私です。この方向にすべてビジネスモデルは動いています。モノとサービスとの相乗的階層化による価値形成、すなわち商品形態・事業業態の革新です。調査をして、ニーズを調べれば何かが出てくるというのは20世紀までの話です。ニーズを“欲求”とか“要望”とか訳される方がいますが、我々やマーケティングの人間は“不足”“欠落”あるいは“欠乏”と訳します。欠乏を充足させることが調査の対象であった時代では今はありません。複数の垂直統合型企業が切磋琢磨して自前主義・抱え込み主義でやれる時代では、技術がイノベーションに直結していました。しかし、今のようにビジネスモデルと知財マネジメント、広い意味での標準化も含めて、それらの開発、展開による「国際斜形分業型のイノベーション」の時代には、その方法論は通じません。技術優位であれば企業優位であったときのように、技術に注力すれば事業優位になるのか。G7時代は10億人の先進国市場を相手にしていました。G20時代は30億以上の世界を相手にしなければなりません。その時、商品形態や事業形態、産業生態のモデルによって技術が全く変わってきます。これは技術政策をされている方には喧嘩を売るような話にみえるかもしれません。実際、半分は喧嘩を売っております。産業生態系がいったん作られたら、どんな優秀な要素技術を開発しても生き残れないという新しい産業の鉄則に目を向けるべきだと思っております。結論です。技術優位=産業優位を前提にするだけのR&D政策はいかがなものでしょうか。あるいは技術起点で全ての産業競争力が形成されるという前提だけの政策はいかがなものでしょうか。これは2002年に知財立国ができたときの基本モデルです。もちろん王道ですから重要だと思いますが、今、世界のイノベーションは事業覇道で動いていることを直視すべきです。我々はこの二つの両輪を同等に眺めないといけない。シンセシオロジーがこの世界をどういうふうに考え、どのような議論をしていくのか、それが求められているのではないかと考える次第です。いずれにせよシンセシオロジーの展開に大いに期待をしたいと思います。(話題提供)隅藏 康一(政策大学院大学) お話を伺って想起したことを知的財産に関連して話題提供させていただきます。「シンセシオロジー」のポイントの一つは「要素の選択と統合を行って目標を達成する」ことです。知的財産権は、本来、個々の権利を行使して独占排他権を確保すること、裏を返せば他人の研究開発をブロックし、遅延させるという機能を持ちます。しかし、これからの知的財産権はシンセシスの時代へ入るのではないか。特許やノウハウを含めたいろいろな知的財産を選択・統合してプール化し、パッケージにして流通を促進させる。これによって研究開発が奨励され、そこに蓄積されているナレッジに他者がアクセスすることでイノベーションの加速につながる、そういった事例を紹介したいと思います。知的財産の協働的マネジメントとして二つのパターンを考えました。一つは、「研究開発は各機関で個別に行われるが、知的財産のマネジメントは共同で行う」パターンです。

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