Vol.5 No.1 2012
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研究論文:家庭用固体高分子形燃料電池の実用的耐久性確保のための技術開発(谷本ほか)−59−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)家庭用PEFCコージェネレーションシステムの燃料電池は1 kW程度の燃料電池を発電源としている。この燃料電池にガス切替法による劣化加速試験を適用して、その耐久性が評価された。その結果、それぞれの燃料電池システムメーカーの燃料電池に関して、カソードガス切替法では加速倍率7倍程度が得られるとともに、アノードガス切替法では100倍程度の加速効果を確認できた。このプロジェクトにより、家庭用PEFCコージェネレーションシステムを製造するそれぞれのメーカーが、この劣化加速試験法での試験から40,000時間の耐久性を確認でき、市場化の道筋がつけられた。エネルギー供給会社、燃料電池システムメーカーは、家庭用PEFCコージェネレーションシステムの普及を図るため、このシステム商品機にエネルギーとファーム=農場を合わせてエネファームとの統一名称を与えた。エネファームは2009年5月に市場化されて、表1に示すような普及が進んでいる。6 おわりに次世代技術としての燃料電池の研究を進めてきた筆者らには、常に次世代の技術と言われていた燃料電池がエネファームとして商品化されたことは、これまで研究を継続してきた者として喜ばしいことである。次世代技術であった燃料電池が商品化できた要因として、エコ志向の社会状況での家庭用コージェネレーション市場が形成しつつある初期段階であること、この市場内でまず導入されたガスエンジン技術に比較して燃料電池の発電効率が高いことに優位性があったことであろう。家庭内でのエネルギー利用における電主熱従の傾向が高まっているので、発電効率の高さは電気を主とする電気と熱のバランスからも適用性が高く、商品としてみてガスエンジンコージェネレーションとの差別化が可能であった。また二酸化炭素削減対策ならびに災害対策で省エネルギーへの関心が、家庭用コージェネレーションの市場形成を加速した面もある。さらにエネファームの商品化には産学官連携のプロジェクトによる技術開発も重要であった。これまで市場化が近い製品に関して、メーカーとしては固有情報の共有化の基に技術開発を進めるというインセンティブは大きくない。今回の場合、家庭用コージェネレーション市場という新たな市場形成を目指し、エネルギー供給会社が参画した垂直連携であり、産総研も参画して固有の技術情報の配分が管理され、開発された情報の共有化が進み、研究開発に対してのリスク低減等の好ましいインセンティブが働いたと考えている。現在では補助金によりエネファームの普及が拡がっているが自立して普及するためには、さらなる低コスト化、信頼性や耐久性の向上が望まれる。そのためには、燃料電池システムメーカーでの家庭用コージェネレーションシステムの設計面からの対応と同時に、PEFC本体の性能および耐久性の向上や低コスト化技術の対応も図ることが必要である。産総研としての可能な限りの貢献を果たしたいと考えている。謝辞産学官連携プロジェクト「PEFCスタック劣化基盤研究」は、2004年10月から2008年3月まで、NEDO(独立行政法人・新エネルギー産業技術総合開発機構)の委託事業で実施したもので関係各位に感謝いたします。また、このプロジェクトの実施者である以下の機関(実施時の名称)にも深く感謝します。東芝燃料電池システム㈱、三洋電機㈱、松下電器㈱、東京ガス㈱、大阪ガス㈱、新日本石油㈱、京都大学、横浜国立大学、同志社大学。注1)http://www.fujielectric.co.jp/about/news/11041101/index.html3,6813,96910,52618,1761,3491,0161,9114,2765,0304,98512,43722,452平成21年度平成22年度平成23年度総計合計設置台数/台LPガス仕様/台都市ガス仕様/台(平成23年度については、平成23年12月27日までの申請で受理されたもの)NEDO成果報告書「平成17年度~平成19年度成果報告書 固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発 基礎的・共通的課題に関する技術開発 固体高分子形燃料電池スタックの劣化・解析基盤研究(スタック劣化メカニズム解明に関しての基礎的支援研究」管理番号 100012431。NEDOホームページよりダウンロード可能。A. Taniguchi, T.Akita, K. Yasuda and Y. Miyazaki: Analysis of electrocatalyst degradation in PEMFC caused by cell reversal during fuel starvation, J. Power Sources 130, 42-49 (2004).K. Yasuda, A. Taniguchi, T. Akita, T. Ioroi and Z. Siroma: Platinum dissolution and deposition in the polymer electrolyte membrane of a PEM fuel cell as studied by potential cycling, Phys. Chem. Chem. Phys., 8, 746-752 (2006).T. Akita, A. Taniguchi, J. Maekawa, Z. Siroma, K. Tanaka, M. Kohyama and K. Yasuda: Analytical TEM study of Pt particle deposition in the proton-exchange membrane of a membrane-electrode-assembly, J. Power Sources 159, 461-467 (2006).C.A. Reiser, L. Bregoli, T.W. Patterson, J.S. Yi, J.D. Yang, M.L. Perry and T.D. Jarvi: A reverse-current decay mechanism for fuel cells , Electrochem. Solid-State Lett., 8, A273-A276 (2005). Z. Siroma, N. Fujiwara, T. Ioroi, S. Yamazaki, H. Senoh, K. Yasuda and K. Tanimoto: Transient phenomena in a PEMFC during the start-up of gas feeding observed with a 97-fold segmented cell, J. Power Sources, 172, 155 -162 (2007). Z. Siroma, M. Tanaka, K. Yasuda, K. Taninoto, M. Inaba and A. Tasaka: Electrochemical corrosion of carbon materials in an aqueous acid solution, Electrochemistry, 75, 258-260 (2007).[1][2][3][4][5][6][7]参考文献表1 エネファームの補助金による導入実績

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