Vol.5 No.1 2012
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研究論文:家庭用固体高分子形燃料電池の実用的耐久性確保のための技術開発(谷本ほか)−56−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)を設定して、劣化現象の解明の研究を進めるスキームでこのプロジェクトが実施された。40,000時間は実時間では4.6年程度あるため、短時間で40,000時間の耐久性を見通す技術としての劣化加速試験法の開発は、各社としても意義があると同時に、劣化加速試験法には科学的説明が必要であるため劣化要因解明が進められることにもなる。実際にプロジェクトでは、劣化加速試験方法による40,000時間の寿命確認だけが目的でなく、劣化要因解明も重要な開発課題であった。このプロジェクトでは、2008年の市場化を予想される燃料電池コージェネレーションシステムの実用的な劣化加速試験法の技術確立のために、1年間での加速試験で、40,000時間を見通す劣化加速試験法の開発に取り組んだ。そのために、エンドユーザーに近いエネルギー供給会社が主導して、燃料電池コージェネレーションシステムでのPEFCの劣化に係る課題について、エネルギー供給会社、燃料電池システムメーカーとラウンドテーブルでの議論を通して、PEFCの劣化に関する優先課題を抽出して、劣化機構解明、劣化加速試験法の開発を目指した[1]。4 劣化機構の検討4.1 実電池・スタックの劣化要因と劣化加速法プロジェクト開始時に、参画メンバーそれぞれが保有した電池特性の時間変化プロファイルのデータを図3に示す。電池の特性低下による劣化を4つのパターンに分けて検討した。その中で(c)の加速劣化型のパターンは、定常的運転下の定出力が継続されるが、屈曲する時期が予測できない。屈曲点以降で急速に規格出力が得られない状態となるので、このパターンがコージェネレーションシステムに対してもっとも致命的と判断される。(a)の直線的な性能低下では、電圧低下率から寿命となる時期の予測が可能である。その時期が40,000時間より早ければ、それを抑制する必要がある。(d)のパターンについては、電池作製上の管理およびシステム構成の不具合等に起因する場合が多いと判断した。これらを踏まえて、各システムメーカーの電池特性の経時変化データ、発電による電池材料劣化の状況に関しての情報から判断して、以下の3つの要件を備えるものが当面の最重要課題であり、メカニズム解明も含めて最優先で取り組むべきものであると考えた。3つの要件とは①(c)の劣化加速型のパターンを呈すること、②電池電圧の低下傾向が飽和せず、40,000時間の耐久性を考えた場合にその影響が致命的であること、③現時点で劣化の評価方法および対策が明確でないものである。図4に示す「耐CO被毒性の低下」および「電極でのフラッディングの進行によるガス拡散性の低下」を当面の実用的な耐久性向上のための課題として選び出し、メンバー内で共通の認識とした。これらの劣化要因を加速する劣化加速試験法として導入ガス切替試験法を提唱した。これは①PEFCのカソード(空気極)へ空気と窒素(不活性な雰囲気)を交互に導入する手法(手法1)、②PEFCのアノード(燃料極)へ水素→窒素→空気→窒素→(水素)のサイクルを繰り返す手法(手法2)である。両方法ともにカソードを高電位にすることでカソード触媒層の担持カーボンの表面が酸化されて担持カーボンが濡れやすくなり、触媒表面に滞留した水によるフラッディングが進行し、電極でのガス拡散性の低下につながると予測される。ガス切替による劣化加速試験法の科学的説明のためには、カーボンの腐食挙動についての材料面と腐食反応機構の解明も重要となる。また、もう一つの劣化要因である「燃料極での触媒の耐CO被毒性の低下」については、これを加速条件とすることも検討されたが、実際のシステムではアノードガス中のCO濃度が数10 ppmレベルで影響が生じることが確認されている。CO被毒を起こす要因の制御を精度良く実施できなければ実用的な劣化加速試験法とすることが困難であると判断し、これを要因としての劣化加速試験法につなげることは適当でないと判断した。これは、むしろ結果として発生する事象であるので、劣化の度合いを判断する際の指標となる。実際のPEFCのアノード触媒には、CO被毒に耐性をもたせるために通常は、被毒しやすい白金(Pt)触媒に替わって白金とルテニウム(Ru)を合金化した触媒が使用されている。しかし、この合金触媒でも耐CO被毒性の低下は発生しており、使用されているルテニウムが長期運転下でアノード触媒から溶出しているためと考えられる。また、同時に合金触媒中の白金の挙動も耐久性に係時間時間時間時間電池電圧電池電圧電池電圧電池電圧(d)突然劣化型(c)加速劣化型(b)劣化飽和型(a)直線的劣化型電池特性プロファイルの低下のパターン時間に比例して低下するので、予測可能。低下度合が大きい場合は劣化率の低減が必要。致命的な劣化図3 電池特性の経時変化パターンでの劣化挙動の類型

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