Vol.5 No.1 2012
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研究論文:家庭用固体高分子形燃料電池の実用的耐久性確保のための技術開発(谷本ほか)−55−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)つ、製品としての価値を損なわない方針で進める方法が試みられた。すべての製品に関してこの方法が有効とは言えないが、社会情勢からくる要請、あるいは製品のもつ特徴等から試行の可能性があった。PEFCを発電デバイスとして組み込んだ家庭用コージェネレーションシステムは、70 ℃程度で動作するPEFCが発電した電気と同時に発生する熱の冷却に用いられた排熱水を給湯する家庭内でのコージェネレーションが適用可能である。これは家庭内での省エネルギーの推進やCO2排出量低減をとおした温暖化対策の役割をもつ製品として市場導入の可能性があると予想された。実際に、2003年にはガスエンジンを用いた家庭用コージェネレーションシステムが市場化され普及に至った先行事例がある。ガスエンジンの発電効率は20 %台で電気に比べて熱供給が主体となる熱主電従供給となる。家庭でのエネルギー使用形態として、電化機器の比率が高まったことや我が国での高温多湿の気候風土を考えると、電気供給の比率の高い電主熱従供給の要求が高いと考えられる。そのため、コージェネレーションの発電デバイスには高い発電効率が求められる。PEFCの発電効率は30 %台が期待できるので家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの社会的受け入れの可能性が高いと予想される。実際に、1990年代以降の継続的なPEFC研究開発の進展に伴い、性能面ではおおむね発電効率30 %台と、市場化の条件を満たしつつあったが、製品の耐久性については競合技術に比べて充分でなく、実用化に対応した耐久性確保の技術開発が必要であった。この状況の中で2004年当時、2008年に燃料電池の本格普及を目指した家庭用燃料電池コージェネレーションを導入する方針が定められ、2005年度からモニター導入事業が進められるのと並行して、市場化のために必要となる耐久性向上に係る研究開発が求められた。その際、普及当初のPEFCの耐久性目標は、社会的な受け入れ性、システムコスト等から40,000時間とされた。低炭素エネルギー社会への移行という社会の変化のもと、これまでの競合技術に対して、燃料電池が小型化し技術課題のハードルを下げ、家庭用コージェネレーションとしての開発課題を耐久性に重点化することで市場化につなげる展開の考え方を図2に示した。なお、PEFC技術の製品の展開として考えられる自動車用途、モバイル電源用途に対しても、その耐久性向上の技術開発は不可欠である。自動車用途では、使用環境の過酷さ、電源デバイスとしての急激な出力変動、短時間での起動等が想定され、その上実用面では稼動時間が停止時間に比べて短いと予想される。このような稼動条件の違いは耐久性確保の技術見通しを立てる際に異なった対応にはなるであろうが、PEFCの材料構成に大きな差はないので家庭用コージェネレーションシステムでの検討で得られる劣化現象、劣化メカニズムの知見は同じにように適用可能と考えられる。3 PEFCの劣化加速手法の目的と必要性我が国のPEFC技術は、1990年代前半から国のプロジェクト、燃料電池システムメーカー等がそれぞれに技術開発を進めた。そのため、システムメーカーにはPEFC材料、構成、システムに関する各社固有の技術が蓄積された。2004年頃に、前述した省エネルギーの推進および地球温暖化対策としての家庭用燃料電池コージェネレーションの2008年市場化を目指す方向性が示されたが、40,000時間の耐久性を確保する技術に対して各社とも共通的課題の存在を認識しつつも技術情報交換が進まない状況にあった。特に、実用化の上で課題となる劣化現象に関しては、PEFCの運転条件が、材料、特性、電池構造に影響を与えることが予見されてはいたが明確ではなかった。このような中で2008年PEFCの本格普及を目指すための耐久性に関する技術確立の一環として、2004年10月から3年6ヶ月のNEDOプロジェクト「PEFCスタック劣化基盤研究」が、スタックシステムメーカー、エネルギー供給会社、大学と産総研からなる産学官連携コンソーシアムで開始された。家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの中核となる燃料電池の耐久性には40,000時間以上が必要とされていたが、2005年当時のPEFCの寿命は1万時間程度とされており大幅な耐久性向上技術が必要であった。燃料電池システムメーカーの所有する固有の技術情報を保持しながら共通する劣化課題を解明するために、各社ごとの燃料電池に対しての劣化加速手法の開発という目標家庭用コージェネレーションシステムの電源機械電源エンジンタービン二次電池性能信頼性価格安全性市場製品化製品としてのデザインの不一致製品としてのデザインの不一致市場化困難コストコスト耐久性耐久性性能性能燃料電池近年の社会背景:持続的経済発展、低炭素エネルギー技術シナリオドリブンでの市場化小型発電電源として技術ハードルを下げる機器の性能と共に要求性能が向上(発電システム、自動車、コジェネシステム、電気機器)市場化市場化の課題を長寿命化技術にベース技術からの堅実な高度化図2 燃料電池開発の過去の過程とそれを踏まえ市場化を目指した開発への展開

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