Vol.5 No.1 2012
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研究論文:シンセシオロジー論文における構成方法の分析(小林ほか)−51−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)原田 晃(はらだ こう)1978年北海道大学大学院水産学研究科修士課程修了。北海道大学水産学部助手、フロリダ州立大学特別研究員を経て、1991年資源環境技術総合研究所入所。2001年産業技術総合研究所環境管理研究部門地球環境評価研究グループ長。2003年経済産業省産業技術環境局評価企画調査官。2006年産業技術総合研究所環境管理技術研究部門長。2009年からは東北センター所長。専門は、地球化学・環境科学で、人為活動が自然界の物質循環に与える影響評価の研究に従事。この論文では、環境・エネルギー分野に関する部分を担当。湯元 昇(ゆもと のぼる)1983年京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了。日本学術振興会奨励研究員(京都大学医学部)、新技術開発事業団早石生物情報伝達プロジェクト研究員、京都大学理学部助手(化学教室)を経て1992年大阪工業技術試験所入所。その後、産業技術総合研究所セルエンジニアリング研究部門長、研究コーディネータを経て2008年理事に就任。専門は生化学。この論文では、ライフサイエンス(バイオテクノロジー)分野に関する部分を担当。査読者との議論議論1 全体評価コメント(上田 完次:産業技術総合研究所)シンセシスの科学としての構成学の確立を、実践を通して目指した論文であり大変興味深く意義のある論文と考えます。議論2 論文のタイトルと目的質問・コメント(上田 完次)この論文の目的は、研究成果を社会につなげるための構成学を目指す(副タイトル)ために、Synthesiologyの掲載論文における構成方法の分析(主タイトル)を行うと理解できます。既存論文のアナリシス(という方法)により、構成学という新しい“学”をシンセシス(創出という目的)する、すなわち、この論文のポジショニングは、「シンセシス by アナリシス」であると理解してよろしいでしょうか。もし、そうであれば、そのように言及するのがよいと思われます。回答(小林 直人)とても明確な示唆を有難うございます。ご指摘のとおりで、この論文の目標は副タイトルにある「新たな構成学を目指す」ことにありますが、そのために主タイトルの「構成方法の分析」を行ったと理解いただければと思います。その意味では、まさに「シンセシス by アナリシス」であると言うことができます。その趣旨を、第1章の最後に付け加えました。議論3 「統合」と「構成」:用語の定義と使い方コメント(小野 晃:産業技術総合研究所)シンセシオロジーでは「統合」と「構成」は中心的な概念となっています。これら二つの用語はこの論文でも多く用いられていますので、定義と使い分けについてコメントします。「統合」と言うときは、もともと別々であった要素を統べて一つにまとめ合せる過程とその事実に主たる関心があります。まとめ合せた結果どのようなものができ上がったかへの関心は従たるもののように思えます。なお「統合する」という動詞の直接目的語には要素がきます。一方、「構成」と言うときは、結果として出き上がったものの方に視点があり、それがどのような構えをしており、どのような要素から成り立っているかに主たる関心があります。他方、要素をまとめ合せる過程への関心は従たるもののように思えます。なお「構成する」という動詞の目的語にはでき上がったものがきます。以上のような用語の定義でよろしければ、この論文の「統合」と「構成」の用語の使い方を見直していただければと思います。回答(小林 直人)興味深いご指摘ありがとうございました。確かに「統合」は要素を合わせていく「過程」に中心があり、一方、「構成」は、「ある目的に向けて」「統合」と並行しつつ各要素の相互作用をより「精密に調節」していくことと考えられます。その観点から語の使い方を見直すとともに「構成・統合」と言う時は順序を逆にして、「統合・構成」という言葉に改めました。議論4 構成要素間の関係とフラクタル構造コメント(小野 晃)シンセシオロジーの構成方法の3つの基本型が図1に提示されています。要素技術と統合技術とを関係付けるこれらの図式は、互いの論理的関係を示しているものであり、必ずしも時間軸上の前後関係(矢印の方向に時間が経過すること)を示しているものではないようにも見えます。一方、図3の「螺旋」、図6の「循環」、図9と図12の「フィードバック」は、時間軸上の前後関係を示す概念に見えます。また図2に示されているように、技術体系は一般に多層構造になっており、下位の階層での統合技術は、上位の階層にいくと改めて要素技術として位置付けられることがあります。図12の「フラクタル構造」とは、このような要素技術と統合技術の関係が事象の大小によらず互いに相似形で、同じ論理構造をもっていることが、また図3では小さな本格研究が螺旋的に展開して上位の階層でのより大きな本格研究に展開することが主張されているように見えます。筆者も以上のような見解と考えてよろしいでしょうか。回答(小林 直人)およそご指摘のとおりだと思います。図1の関係図も、時間軸上の前後関係を表していないわけではなく、例えばブレークスルー型の場合は、ある重要要素技術ができた後に、それに周辺技術を付け加えて統合技術になります。ただし、その場合でも周辺技術がすでに存在している場合もあり、「フィードバック」ほどの明確な時間的な流れの構造を示しているわけではありません。また、フラクタル構造はまさにご指摘のとおりで、下位の階層での統合技術は、上位の階層にいくと改めて要素技術として位置付けられることを示しています。さらに本格研究の場合でも同様の構造を示していると言えましょう。議論5 アウフヘーベン型の内容コメント(上田 完次)第2章においてアウフヘーベン型とは、二つの命題が正と反の関係にあるとき、それを止揚する新概念を創出(合)するとされています。しかし、科学技術での同種の課題としては、ヘーゲル哲学における厳密な対立的矛盾の止揚というよりは、複数要素(二つに限らない)間のコンフリクトやトレードオフ問題、全体最適化問題として扱われる場合も多いと思われます。基本型について、概念だけでなく、“構造”、“要素”、“要求”、“機能”、“実体”等で説明していただければ、読者は理解しやすいと思います。基本型について、筆者らがすでに論じた論文があれば、文献の引用をお願いします。回答(小林 直人)ご指摘のとおり、ここでいうアウフヘーベン型は厳密な対立的矛盾の止揚というよりは、複数要素間のコンフリクトやトレードオフ問題、全体最適化問題等を含んでいます。ここで、アウフヘーベンという言葉を使用してよいかどうか、やや迷いましたが、かなり性質が異なり、場合によっては共存できない二つの技術の組み合わせが高度な統合技術になった例を検討している間に思いあたりました。この論文の例
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