Vol.5 No.1 2012
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研究論文:シンセシオロジー論文における構成方法の分析(小林ほか)−49−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)Synthesiology(構成学):研究成果を社会に活かすために行なうべきことを知として蓄積することを目的として、2008年に発刊された学術ジャーナル。このジャーナルでは、研究の目標の設定と社会的価値を含めて、具体的なシナリオや研究手順、また要素技術の統合のプロセスが記述された論文が掲載されている。どのようなアプローチをとれば社会に活かす研究が実践できるのかを読者に伝え、共に議論するためのジャーナルである[1]。本格研究、第1種基礎研究、第2種基礎研究、製品化研究:研究テーマを未来社会像に至るシナリオの中で位置付けて、そのシナリオから派生する具体的な課題に幅広く研究者が参画できる体制を確立し、第2種基礎研究を軸に、第1種基礎研究から製品化研究を連続的・同時並行的に進める研究を「本格研究(Full Research)」と呼ぶ。なお、第1種基礎研究は未知現象を観察、実験、理論計算により分析して、普遍的な法則や定理を構築するための研究を指す。第2種基礎研究は複数の領域の知識を統合して社会的価値を実現する研究を言う。その一般性のある方法論を導き出す研究も含む。さらに、製品化研究とは、第1種基礎研究、第2種基礎研究および実際の経験から得た成果と知識を利用し、新しい技術の社会での利用を具体化するための研究を指す。用語1:用語2:用語説明シンセシオロジー編集委員会: 新ジャーナル「Synthesiology-構成学」発刊の趣旨, Synthesiology, 1 (1), i (2008).吉川弘之: 本格研究, 東京大学出版会 (2009).ルネ・セロー: ヘーゲル哲学, 白水社 (1973).R.K. レスター, 小林直人: シンセシオロジーへの期待, Synthesiology, 1 (2), 139-143 (2008).西井準治: 高機能光学素子の低コスト製造へのチャレンジ, Synthesiology, 1 (1), 24-30 (2008).舟橋良次, 浦田さおり: 熱電発電を利用した小型コジェネシステムの開発, Synthesiology, 1 (2), 94-100 (2008).岸本充生: 異なる種類のリスク比較を可能にする評価戦略, Synthesiology, 1 (1), 31-37 (2008).葭村雄二, 鳥羽誠: 輸送用クリーン燃料の製造触媒の研究と開発, Synthesiology, 1 (3), 176-182 (2008).鈴木明, 川波肇, 川﨑慎一朗, 畑田清隆: コンパクトプロセスの構築, Synthesiology, 3 (2), 137-146 (2010).諏訪牧子, 小野幸輝: 循環発展的なプロジェクト構造を生むバイオインフォマティクス戦略, Synthesiology, 2 (4), 299-309 (2009).近江谷克裕, 中島芳浩: ホタルの光の基礎研究から製品化研究へ, Synthesiology, 1 (4), 259-266 (2008).ゲイリー P.ピサノ: サイエンス・ビジネスの挑戦, 日経BP社 (2008).西宮佳志, 三重安弘, 平野悠, 近藤英昌, 三浦愛, 津田栄: 不凍蛋白質の大量精製と新たな応用開拓, Synthesiology, 1 (1), 7-14 (2008).大串始: 実用化をめざしての再生医療技術開発, Synthesiology, 1 (3), 170-175 (2008).家村俊一郎, 夏目徹: タンパク質のネットワーク解析から創薬へ, Synthesiology, 1 (2), 123-129 (2008).持丸正明, 河内まき子: 個別適合メガネフレームの設計・販売支援技術, Synthesiology, 1 (1), 38-46 (2008).倉片憲治, 佐川賢: 高齢者に配慮したアクセシブルデザイン技術の開発と標準化, Synthesiology, 1 (1), 15-23 (2008).氏家弘裕: 映像の安心な利用を可能にする映像酔い評価システムの開発, Synthesiology, 3 (3), 180-189 (2010).池田博榮, 小林祥延, 平野和夫: いかにしてカーナビゲーションシステムは実用化されたか, Synthesiology, 3 (4), 292-300 (2010).久保友香, 馬場靖憲: 2タイプのリード・ユーザーによる先端技術の家庭への導入モデルの提案, Synthesiology, 2 (3), 201-210 (2009).中島秀之, 橋田浩一: サービス工学としてのサイバーアシスト, Synthesiology, 3 (2), 96-111 (2009).湯浅新治, 久保田均, 福島章雄, 薬師寺啓, 長浜太郎, 鈴木義茂, 安藤功兒: スピントロニクス技術による不揮発エレクトロニクスの創成, Synthesiology, 2 (3), 211-222 (2009).佐藤証, 片下敏宏, 坂根広史: 暗号モジュールの安全な実装を目指して, Synthesiology, 3 (1), 56-65 (2010).荒井和雄: SiC半導体のパワーデバイス開発と実用化への戦略, Synthesiology, 3 (4), 259-271 (2010).田中良夫: グリッドが実現するE−サイエンス, Synthesiology, 2 (1), 32-41 (2009).[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20][21][22][23][24][25]参考文献構成のフェーズがあるが、社会ニーズが明確になっている場合とそうでない場合、産業としての拡大を図る場合でも、それぞれ異なったアプローチが求められる。まだ事例としては十分多いとは言えないが、今後、「社会導入からイノベーションの創出」を考えた場合、このような構成例の分析を積み重ねて、そのダイナミズムを分析していくことが重要であろう。7 謝辞この論文の作成にあたり、対象とした論文の筆者の方々に深甚の謝意を表したい。限られた時間の中で、それぞれの研究をどの程度まで理解できたかは課題であるが、できるだけ筆者の研究のシナリオや方法論を捉えることに努力を傾注した。しかし、必ずしも筆者の意図を正しく汲んでいない部分もあると思われるので、その点はご指摘いただければ幸いである。また、この論文の作成を進めるにあたって、ワークショップ等でのご意見も含め多くの方からいただいた貴重な示唆に対して感謝の意を表したい。アウフヘーベン:アウフヘーベンとは、ヘーゲルが弁証法の中で提唱した概念で、ある一つの命題(テーゼ)と、それとは矛盾する別の命題(アンチテーゼ)との二つの相反する命題を統合し、より高次元の段階である総合命題(ジンテーゼ)を導くこと、とされ日本語では「止揚」と訳される[3][4]。用語3:

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