Vol.5 No.1 2012
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研究論文:シンセシオロジー論文における構成方法の分析(小林ほか)−46−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)て構成的に物質を作り上げている。化学では、電子間の複雑な相互作用がさまざまな反応とそれによるさまざまな物質を作り出していくのが特色である。工学の中で代表の一つの機械工学では、相互作用は力学的または電磁的相互作用が主となるが、その要素は巨視的であり要素数は限られたものになる。さらに地質学や生物学になると構成要素の数が飛躍的に増大し、複雑性も上昇し、その記述は多様性を増すこととなる。これらの学術分野の上に成り立つ技術分野は、ナノテクノロジー・材料・エレクトロニクス等の比較的構成要素が少ない多元要素系から、地質や環境・エネルギー等構成要素が飛躍的に増大するものの要素間の相互作用は基本的に物理・化学的におよそ明確に定義されている複雑系、さらには情報やバイオロジー、人間生活技術等構成要素間の相互作用そのものに多様性がある複雑相互作用系等と特徴付けていくことができる。構成要素の数と規模が増加することにより、構成方法もさまざまなものになっていくが、これはシナリオの作り方やその特性とも関係している。構成要素が少ない多元要素系では、構成要素や構成方法がより明確なために、そのシナリオも比較的分かりやすく作ることができる。すなわち、技術的な構成方法が明確であるために、それだけシナリオの論理的な展開が行いやすいという特性と関連している。また技術の展開としてマイルストーンやロードマップが比較的描きやすいと言えるであろう。それに比較して複雑系、複雑相互作用系になるにしたがって、構成要素の数や相互作用がさまざまなものになり、構成の範囲も広がってくる。またシナリオの描き方も一律ではなく、実社会やユーザーとの相互作用によりその展開も変化していくことが特徴であると考えられる。なお、ここで示された技術分野は、明治時代以来の産業振興の要請にしたがって旧商工省、旧逓信省、旧通産省工業技術院等が順次研究開発体制を整備してきた分野であり、かなり広い分野を含んでいるが、必ずしもすべての技術分野を網羅しているわけではない。そのためこの章で示した分野の特性は限定的であることを付記しておきたい。5 シンセシオロジーにおける構成方法(1)技術的な構成の方法70編の論文の分析を踏まえ、構成方法の共通の特徴の抽出を行った。シンセシオロジーが考えている構成の方法論として、戦略の構築とシナリオの設定⇒要素選択と組み合わせ⇒技術的構成の実現⇒社会での試用という一連のプロセスが考えられるが、このように線型なプロセスに加えて、「フィードバック」が特徴的なプロセスとなっているものがあることが明らかになった。個別の要素選択と組み合わせの例として、前述のアウフヘーベン型、ブレークスルー型、戦略的選択型等の幾つかの類型で代表的に表現することができるが、表1に示したように、これらの3つの型は、実際にはそれぞれが単独で存在するというよりは、それらが直列的や並列的に複数組み合わされていくことが現実的な考え方である。また、構成としては何段かにわたって行われることが普通であり、その意味では技術の構成にはフラクタル構造が見られるということができる。多段構成の例として、第3章(1)の環境・エネルギー分野の構成例が挙げられる。ここでは、社会ニーズからブレークダウンした戦略的選択型方法と重要要素技術によるブレークスルー型方法が組み合わさっている(図12)。一方で、この構成方法は戦略性に立脚して進められる。要素選択と組み合わせが行われるとそれらは戦略性およびシナリオにフィードバックされ、さらに要素選択と組み合わフィードバックフィードバックフラクタル構造要素選択と組合せ要素選択と組合せ要素選択と組合せ要素選択と組合せ(例)社会導入に向けた構成戦略的選択型ブレークスルー型アウフヘーベン型社会での試用戦略性(戦略とシナリオ)図12 シンセシオロジーにおける技術的な構成
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