Vol.5 No.1 2012
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研究論文:シンセシオロジー論文における構成方法の分析(小林ほか)−45−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)詳細な評価モデルを構築している。これらの個別の戦略は、変化する社会の特定のニーズに対応して、ターゲットを絞って取り組むことが多く、その基盤として国土の基本情報や技術に関する総合的な戦略に基づく研究が不可欠である。国土の基本情報である地質図については、斎藤の研究[43]に見られるように、防災・環境・産業立地・資源等さまざまな用途に対応できる知的基盤として、地質分野としての総合的な戦略に基づき、さまざまな要素技術(地質学、地球物理学、地球化学等)を統合することにより、地質現象の理解を深めつつ、その成果は地域地質図等の公共財として社会に提供されている。さらに、脇田の研究[44]に見られるように、社会のニーズに応じて情報技術等の要素技術も駆使して地質情報を統合し、全国のシームレス地質図としてインターネット上で常に最新のデータを利用しやすく社会に提供し、そのフィードバックにより改善を図っており、螺旋型の構成が用いられている。地質分野は戦略的選択型の構成をとることが多いが(表1)、これらの研究活動を通じて、地質現象の経験的モデルの深化とともに、決定論的モデルに関連付けることにより地質現象の理解を深めることができ、社会の期待に応えることのできる予測精度向上を実現できる。このように、地質分野の研究は、複雑系としての地質現象の理解が、変化するさまざまな社会ニーズと対応して、螺旋構造の相互作用を取り込みながら進展している。4 構成方法における分野の特性前章で示した分野での構成的研究の分析から、この章ではそれぞれの分野の特性を述べ、構成に共通の方法論については次章で述べる。表1では、アウフヘーベン型、ブレークスルー型、戦略的選択型、の3類型とその組み合わせとして分類したが、組み合わせ型が数的には多くはないことと、分野の特徴を見るために、組み合わせ型については3類型のうちの2つまたは3つからなるとして、それぞれを重複して数え直した結果を図10に示す。定量的な議論をするには十分な数ではないが、分野による違いがみられる。ブレークスルー型の占める比率が高いのは、ライフサイエンスのバイオテクノロジー分野とナノテクノロジー・材料・製造分野、そして環境・エネルギー分野の中でも低環境負荷技術の研究開発である。いずれも、良いコア技術があるとブレークスルーがおきる分野であると言える。一方、ライフサイエンスでも人間生活技術分野では戦略的選択型が多く、また地質分野も同様であるが、これらは一つのブレークスルー技術では課題が解決できない分野であることが分かる。さらに、1例を除くすべての研究において戦略的選択による構成が行われているのは標準・計測分野であり、トレーサビリティ体系を構築するためには、多くの要素を考慮する必要があることが分かる。一方、螺旋型が見られるのは、バイオテクノロジー、人間生活技術、情報通信エレクトロニクスそして地質分野である。材料、電子・光デバイスや製造技術の分野、化学的・物理的な標準・計測分野等では、要素技術が明確に定義され構成方法も比較的明快なものが多いが、地質分野、バイオテクノロジー、情報分野や人間生活技術分野では要素技術において複雑性が増していくだけでなく、構成方法においても人間や実社会・実環境との相互作用が大きな比重を示してくることが分かった。図11に、一つの考え方として、構成要素の数と規模と、分野間の関連性を示した配置図を示す。図の下部の基盤的部分には、技術分野の基礎となる代表的な学術的分野を示してある。物理や化学の分野は構成要素というものが明確に定義しやすく、最も基盤的な部分を形成すると考えられる。物理学では構成要素を細かく突き詰めていくとクォークやレプトンに至るが、それらが相互作用を媒介して原子核、原子・分子へと上の階層に向かっ機械工学生物学複雑系地質学化学物理学構成要素の数と規模ナノテクノロジー・材料・製造標準・計測地質環境・エネルギーヒューマンライフバイオテクノロジー情報・エレクトロニクス複雑相互作用系多元要素系図10 分野ごとに4類型に分類した結果 (組み合わせ型を各類型に重複して計数) 図11 構成方法における分野的特性螺旋アウフヘーベンブレークスルー戦略的選択地質標準計測ナノテクノロジー・材料・製造情報通信・エレクトロニクスライフサイエンス(人間生活技術)ライフサイエンス(バイオテクノロジー)環境・エネルギー100 %90 %80 %70 %60 %50 %40 %30 %20 %10 %0 %23133112116416461188636

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