Vol.5 No.1 2012
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研究論文:シンセシオロジー論文における構成方法の分析(小林ほか)−43−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)ドバックがそのまま構成法にも反映される可能性が高い。一方、製造技術の場合も構成法に大きな変化はないが、一つの革新的な要素技術が全体の構成法を大きく変えてしまう場合があり得るのは特徴の一つであろう。この分野の分類結果も表1に示す。(5)標準・計測分野標準・計測分野の特徴として、特に計量標準においては、エンドユーザーの手元に確実に高い信頼性を有する計量標準(物理標準、化学標準・標準物質)が到達することが大前提である。また、それらの標準は国際的にも相互に承認されていることが基本である。そのため、3つの必須要件、①SI(国際単位系)トレーサブルな国家計量標準の確立、②国際整合性の確保(国際的に認知された測定方法、国際比較)、③産総研、認定事業者、エンドユーザーを結ぶトレーサビリティ体系の構築、のもとにシナリオが組み立てられて研究開発が実施されている。要件①は「技術的な構成」に、要件③は「社会導入に向けた構成」に対応し、要件②は両者を結ぶ役割を担っていると言える。以下、物理標準、化学標準の研究開発にかかわる二つの例を示す(図8)。物理標準の例では、新井らによる1000 ℃~1550 ℃付近の温度範囲での熱電対校正のための温度標準のトレーサビリティ体系の構築に関する研究がある[37]。この領域での温度計測は、特に鉄鋼業をはじめとする素材産業、熱処理等に関係する部品製造業、半導体プロセス産業等温度管理が重要となる各種産業で重要となる。熱電対はこれらのさまざまな産業現場において最もよく使われる温度計の一つであるが、測定の信頼性はそれほど高いとは言えず、計量標準の確立とトレーサビリティ体系の整備が急務だった。この温度領域での国家計量標準は純金属の温度定点群である。具体的には銀の凝固点(961.78 ℃)、銅の凝固点(1084.62 ℃)、パラジウムの融解点(1553.5 ℃)であり、これらの定点の温度値は熱力学的な温度目盛りを基にしてメートル条約加盟各国の代表が集まる国際度量衡総会で合意、決定されたものである[要件①]。国際的に認知されるために、諸外国の標準研究所との国際比較(APMP-T-SI-4)が行われ、産総研の校正値および不確かさの小ささは参加機関のトップレベルという高い信頼性を達成した[要件②]。また、トレーサビリティ体系の構築には、産総研と校正事業者間で精密な標準値を受け渡す仲介標準器が必要であり、この仲介器には安定性と堅牢性が求められた。このため、これらの条件を満たす高い信頼性を有する白金パラジウム熱電対とR型熱電対が開発された[要件③]が、その過程において適切な熱処理が熱電対の安定性に大きく寄与することが新たな知見として発見された。また、産総研オリジナルの技術であり世界の計量標準研究機関に普及しつつある共晶点の温度定点への適用性も示され、近い将来さらに高い信頼性をもつ温度目盛りの供給も期待される。化学標準の例では、井原らによる国民の日常生活の安全に直結する食品・環境中の有害成分(残留有害物質や残留農薬)の試験検査機関における分析の信頼性を保証するための標準物質の開発にかかわる研究がある[38]。食品・環境中有害物質の数は法規制として取り上げられたものだけでも1千種類以上におよぶため、迅速に多数の標準物質を開発・評価する必要があり、そのための定量NMR法を開発した。これは、化学物質ごとに標準物質を準備するというこれまでの手法ではなく、多種類の実用標準物質の校正を最小限の種類の上位標準で行うという革新的な手法である。仲介標準器、国家標準物質・仲介物質CCQM-CIPM, APMP-T-SI-4温度定点群、凝固点降下法橋渡し「社会導入に向けた構成」「技術的な構成」③トレーサビリティ体系の構築①SIトレーサブル出口(エンドユーザーの手元に確実に高い信頼性を有する計量標準が到達する事)が明確であり、それを達成するため、シナリオを作り必要な要素技術を選択・構成②国際整合性計量標準の研究開発を規定する3つの要件社会・産業界における状況認定校正事業者の状況国の政策、規制当局の方針国家計量標準の確立標準供給の実施国際比較への参加国際的に合意された測定方法図8 標準・計測分野における戦略的選択型構成方法

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