Vol.5 No.1 2012
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研究論文:シンセシオロジー論文における構成方法の分析(小林ほか)−42−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)合わせが論文に記載されている[27](表1)。ハードウエア分野では要素技術の定義と選択とそれらを用いた構成方法が比較的シンプルで明確であり、ミドルウエアの構成においてもおよそ似通っているものの、人間や実環境との相互作用が増えて大きな意味をもつソフトウエアやアプリケーション分野では、定義され選択された要素技術が一方的に統合されていくのではなく、社会環境との相互作用の中で進化(深化)していくことが特徴と言うことができる。(4)ナノテクノロジー・材料・製造分野ナノテクノロジー・材料・製造分野では、浅川らによる有機ナノチューブの大量合成方法を構成例の一つとして挙げることができる[28]。これは内部にナノ微粒子やタンパク質等を包摂することにより広い分野への応用が期待されている有機ナノチューブの大量合成技術の開発に関するものである。その技術はシーズ主導ブレークスルー型の典型例の一つであると言えるが、さらにこれを作るためにとても詳細な分子設計とその統合技術でこの量産化に至って、その後さらに用途開拓をいろいろな企業と共同して行い実用化に向けて進んでいる(図7)。こういったブレークスルー型は坂本らによる難燃性マグネシウムの研究[29]等、合わせて4件の研究開発で見られた。一方、茶屋原らによる大型単結晶ダイヤモンド・ウェハの技術開発[30]では、マイクロ波プラズマCVD法、異常成長粒子発生の抑制、大型化等の要素技術を戦略的に選択して統合している。要素技術の一つであるウェハの大型化については「繰り返し側面成長」というブレークスルー技術も含まれているが、全体としては戦略的選択によって構成が進められている。こういった戦略的選択型の構成は、光触媒技術等5件の研究開発で見られた。また小林(慶)らは、鋳造と粉末冶金の技術を組み合わせたプロセスでFe-Al金属間化合物を利用した高硬度、高強度の材料を開発した[31]。これは乾式の新しい粉末冶金合成とこれまでの鋳造法を組み合わせて新たな方法を作り上げたアウフヘーベン型の構成の例であり、高尾らによる紫外線防御化粧品の研究開発[32]にもアウフヘーベンが行われている。他方、製造分野での特徴的な例として、明渡らによるAD(エアロゾルデポジション)法によりさまざまな製品を開発した製造技術がある。ここではセラミック粒子を常温で固化・緻密化できるAD法が大きなブレークスルーとなって、それをコアに戦略的選択型の構成によって静電チャックやMEMSスキャナー等の製造に適用し、低コスト、低環境負荷、高機能、低資源消費の「ミニマルマニファクチャリング」の概念にあたる製造法を構成している[33]。中村らが取り上げたPAN系炭素繊維に関する研究開発[34]もこういった「ブレークスルー型と戦略的選択型」の組み合わせと言える。また、渡利らによるセラミックス製造の省エネプロセスの研究[35]では、省エネのために開発すべき技術を精緻に検討した上でバインダー技術の改良に注目し、その評価と改良のための優れた技術を確立している。これは明確な目的に向けて戦略的に要素技術を選択した上で、科学的なアプローチで改良技術を確立したという意味で、「戦略的選択型+ブレークスルー型」の組み合わせと言えよう。さらに、北らによる製造の全行程を考慮した資源およびエネルギーの使用合理化に関する研究[36]ではアルミニウム製造の全行程におけるエクセルギー(環境を基準としたGibbsの自由エネルギー)の解析を行い、省資源・省エネルギーに資する鋳造プロセスの重要な指針を得ている。これは明確な目標に向けて評価すべき要素を逐次抽出して分析を行ったという意味で戦略的選択型構成方法と言えるであろう。ナノテクノロジー・材料分野の構成方法の特徴は、電子デバイス等のハードウエア技術の構成方法と大きく異なることはない。材料等はその研究成果物がそのまま市場に完成品として出るという面が少なく、後の要素技術として使われる場面が多いため、ある性能仕様を満たすことが主として要請される場合は、比較的構成法が明確である。ただし、種々のニーズ側との相互作用がある場合は、そのフィー製品化技術安全性評価技術用途開発技術分子設計技術大量合成技術有機ナノチューブの大量合成方法開発要素技術4要素技術3要素技術1要素技術2統合技術図7 ナノテクノロジー・材料・製造分野におけるブレークスルー型の構成方法 大規模データ収集センシング技術ユーザーモデリング日常行動予測モデルベイジアンネットネットワークによる周辺要素技術C周辺要素技術B統合技術によるサービス一般的知識モデル重要要素技術A図6 社会循環型の構成方法 (文献[26]の図6を改訂)

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