Vol.5 No.1 2012
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研究論文:シンセシオロジー論文における構成方法の分析(小林ほか)−40−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)いものでも製品化することが重要と考えられる。すなわち、大きな本格研究に展開するためには、まず小さな本格研究が必要と言える。筆者らは、このような構成方法を螺旋型と名付けた(図3)。こういった螺旋型、およびブレークスルーと螺旋との組み合わせの型の構成は3件の論文で見られたが、こういった螺旋型だけでなく、バイオセンサーをコアとした4件の論文においては、コア技術によるブレークスルー型の構成をとっている。西宮らによる不凍蛋白質の大量精製[13]や大串による再生医療の実用化[14]の二つの研究においては、それぞれ実用化に必要な要素技術を選定し、それらを統合しており、戦略的選択のシナリオで進めている。この他家村らによる、リザーバを使って1系統のポンプを使うという全く新規の方法でクロマトグラフィーを高度化したブレークスルー型の構成もあった[15]。(表1)ライフサイエンス(人間生活技術)分野においては、最終的に製品を使う人の特性を考慮した製品設計を行うことが研究開発の目的である。そこでは、まずは人間の特性を科学的に理解・把握することが基本となる。それは第1種基礎研究になるが、このとき人間理解を過度に追求してしまうと、第2種基礎研究へのシフトがなかなかできなくなる。明らかにしようとしている人間特性がどのように使われるかを明確化して、そのために必要な研究シナリオを構成していく必要がある。持丸らによる個人にふさわしいメガネフレームの研究開発の例では、個人個人にあった形のメガネフレームを提供することを目標とし、さらに客自身が自分の好みのフレームデザインを選ぶのを助けるために必要な技術を開発した[16]。第1種基礎研究としては、頭部形態に適合したメガネ枠の形状設計技術の開発であるが、さらにメガネを購入するユーザーにそれを適用するために必要となる要素技術を選定して、それを統合した。この研究の特徴は3次元形状モデル(頭部相同モデルと呼ぶ)を開発したことで、簡易計測にも、形状のパターン分類にも、また感性的評価にも使うことができて、効率よくこの全体のゴールを達成できたと言える。したがって、全体のシナリオとしては、「戦略的選択型+ブレークスルー型」による構成である。実際、ブレークスルー技術が得られないと構成の効率が悪くなり、途中で挫折しかねない。コア技術をブレークスルー技術として種々に展開できることは、第2種基礎研究の大きな力になる。倉片らによる高齢者の聴覚特性に適合した報知音を設計するためのアクセシブルデザインの研究[17]においては、高齢者の何割の人に聞こえるように設計するのかが重要になる。したがって、人間の聴覚特性についても厳密な特性把握ではなく、むしろ人による違いすなわち特性値の分布の把握を行っている。そして、この考え方は、製品の報知音が実際に使われる家庭での条件(聴取条件)の把握にも適用されている。報知音の妨害となる台所での流しの音やテレビの音等の騒音レベルを計測して、その分布を知ることで、高齢者でも聴き取れる音量を定めることができている。このように人間特性だけでなく、実際の生活場面に適用するために把握すべき生活環境の特性が何であるかをよく検討することが、こういった戦略的選択型の構成には必要である(図4)。• 頭部形状ごとのメガネフレームが与える顔の感性的印象• 家電製品が使われる生活環境の騒音• ディスプレイサイズや視聴距離等の映像呈示条件• 頭部形状3次元計測• 聴覚特性の加齢変化の解明• 映像酔いと映像動きとの関係の解明• 頭部形状のパラメタライズと類型化• 聴覚特性の加齢変化• 酔いを誘起する映像動きパタン• 種々の形状を表現できる頭部相同モデルと簡易計測法• 高齢者の可聴域データベース• 映像酔いを予測するモデル• 顔にフィットしたメガネ• 高齢者に聞こえる報知音を持つ家電製品• 酔いを起こさない快適な映画やゲーム等の映像人間に適合した製品研究開発の実施研究シナリオ構成のプロセス人間特性計測時の条件設定製品使用環境・条件の同定製品使用環境の特性計測ツールに組込まれる人間特性の具体的項目および必要な精度ツールの構築に必要な人間特性の検討ツールを使い易くするための技術製品設計にあった設計ツールの検討人間特性研究ツールに必要な各種人間特性および要素技術群人間特性をモデル化、データベース化したツール• 店頭で顧客を計測してメガネ形状タイプを選定• 報知音基準の工業標準を参照して設計• 不快感を起こす映像箇所を自動抽出して修正人間特性を考慮した製品設計図4 ライフサイエンス(人間生活技術)分野における戦略的選択型の構成プロセス

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