Vol.5 No.1 2012
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研究論文:シンセシオロジー論文における構成方法の分析(小林ほか)−37−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)だけで貢献するわけではなく、さまざまな領域の知識や要素が相互に関連して行われるものであり、社会に導入されるためにはこれらを統合して、具体的な技術として構成しなければならない。そのために研究開発における構成の方法論を明らかにしていくことは有益であると考える。そこで、我々は、Synthesiology 1巻1号から3巻4号までの約70編の論文のうち、環境・エネルギー分野9編、ライフサイエンス(バイオテクノロジー)分野10編、ライフサイエンス(人間生活技術)分野7編、情報通信・エレクトロニクス分野12編、ナノテクノロジー・材料・製造分野14編、標準・計測分野12編、地質分野6編を対象として、それぞれの専門分野を背景として構成的研究の方法を分析し、さらに共通的な方法論の抽出を試みた。具体的には、第2章で要素技術の構成方法の基本型を、第3章で分野ごとの構成方法の分析を、第4章ではそれを基にした構成方法における分野の特性を示した。その上で、最後に第5章において、構成方法としての必要性が明らかになった「技術的な構成」と、それに続く「社会導入に向けた構成」の特徴を示した。この論文は、このように既存論文の分析(アナリシス)という方法により、研究成果を社会につなげるための構成学という新しい“学”を創出(シンセシス)することに貢献することを目指している。2 要素技術の構成の基本型筆者の一人(小林)が以前提案した、①アウフヘーベン型(二つの相反する命題を止揚し、新概念を創出する方法)用語3 [3]、②ブレークスルー型(重要要素技術に周辺技術を結合させ統合技術に成長させる方法)、③戦略的選択型(要素技術を戦略的に選択し構成を行う方法)を、まず要素技術の構成の基本型の例として紹介しておく[4]。これはSynthesiologyの発刊からごく初期の研究論文12編から抽出した基本型である。①アウフヘーベン型の例としては、西井による「高機能光学素子の低コスト製造へのチャレンジ」の研究で示されたガラスモールド法とインプリント法を組み合わせたものが挙げられる[5]。この研究では、これまで両立が困難であると考えられていた両法の統合を行って新技術を産み出した。この例を基にして、この論文ではアウフヘーベン型は「これまで統合が困難であると考えられていた複数要素間の複雑な構成方法」としてやや広い意味で使用している。また、その概念には具体的には、“構造”、“機能”、“実体”等の統合・構成があると考えられる。また、②ブレークスルー型の例としては舟橋らによる「熱電発電を利用した小型コジェネシステムの開発」を挙げることができる[6]。ここでは良好な熱電材料であるコバルト系層状酸化物の発見が一つのブレークスル―となって、それに周辺要素技術を付随させて統合技術が形成される例が示されている。さらに、③戦略的選択型の例としては岸本による「異なる種類のリスク比較を可能にする評価戦略」を挙げることができる[7]。この研究では、化学物質のリスク評価という研究の目標に至るために幾つかの技術要素をシリアルに選択していくというのが構成のプロセスである。図1にこれらの構成方法の基本型の概念図を示す。これらは構成方法の中の極めて基本的な素過程と言うべきものであり、これらを並列的にあるいは多段に組み合わせたり、ニーズや実環境との相互作用の中で改良していく等のプロセスが見られるが、以下の論考では以上の素過程を念頭にいれて検討を進めた。なお、表1に分野ごとの構成の類型分類を示すが、単一の基本型だけではなく、それらを組み合わせた類型への分類も含まれる。詳細は以下で述べる。3 技術分野ごとの構成的方法の分析(1)環境・エネルギー分野環境・エネルギー分野に分類される研究は、環境アセスメントやリスク評価等の評価技術から、環境負荷物質の挙動と抑制、再生可能エネルギー、省エネルギー、生産効率化等極めて幅広い課題に及び、これまでのSynthesiologyの論文で示された方法論もさまざまである。しかし、①環境負荷物質の低減、二酸化炭素の排出抑制への貢献、社会的・行政的な規制への貢献等、社会ニーズが明確である特徴をもっており、これを果たすため、②すり合わせ型や科学に裏打ちされた要素技術の多段的結合等の多元的な技術統合を行い、③要素技術の見直しやエンジニアリングの立場からの再構成によって既存技術をさらに高度化している、等の特徴をもっている。例えば、「異なる種類の化学物質のリスクを比較する」と統合技術要素技術A周辺要素技術C統合技術要素技術C要素技術B周辺要素技術B統合技術重要要素技術A要素技術B要素技術A3.戦略的選択型2.ブレークスルー型1.アウフヘーベン型図1 構成方法の基本型
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