Vol.5 No.1 2012
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研究論文:マグネシウムおよびその合金中の不純物酸素分析手法(柘植ほか)−34−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)執筆者略歴柘植 明(つげ あきら)1983年、工業技術院名古屋工業技術試験所入所後、ファインセラミックスの化学分析方法の研究開発に従事。産総研となってから工業標準に関する研究にも従事し、これまでにJIS R1603,R1616原案作成・改訂において、ファインセラミックス原料粉体中の不純物酸素・窒素・炭素の分析手法開発を担当してきた。現在、計測フロンティア研究部門不均質性解析研究グループ主任研究員。この研究では、経済産業省基準認証研究開発制度による委託研究において、分析手法の開発・ISO素案作成を行うとともに、ISO/TC79/SC5会議への参加等を通じて規格案提案に向けた事前活動にも取り組んだ。兼松 渉(かねまつ わたる)1984年、工業技術院名古屋工業技術試験所入所後、構造用セラミックスの機械的特性、加工損傷に関する研究に従事。産総研となってから工業標準に関する研究にも従事し、これまでにJIS R1674原案作成委員会主査、ISO/TC206(ファインセラミックス)/WG31コンビナー、同WG36プロジェクトリーダ等を務める。現在、計測フロンティア研究部門不均質性解析研究グループ、グループ長。この研究では、経済産業省基準認証研究開発制度による委託研究のコーディネート、ISO素案作成等に従事した。査読者との議論議論1 全般コメント(岡路 正博:産業技術総合研究所(現:(株)チノー))当初から産業界への貢献を明確に目指し、また出口として標準化を見据えた研究開発を進めており、シンセシオロジー誌にふさわしい内容の論文と思います。議論2 国際的な状況コメント(長谷川 裕夫:産業技術総合研究所エネルギー技術研究部門)「1はじめに」で日本、中国、韓国の状況が述べられていますが、原料生産、製品生産に関する世界各国のシェアを、参考図として示していただければ、業界の状況を理解しやすくなると思われます。社団法人中部経済連合会:「温暖化問題と交通体系のありかた」 (2007).日本マグネシウム協会:「平成16年度自動車用Mgの実用化に関する調査」(2005).A. G. Haerle: The effect of non-metallic inclusions on the properties of die cast magnesium, SAE Technical Paper 970331, Detroit, MI, (1997).H. Hu and A. Luo: Inclusion in molten magnesium and potential assessment technique, JOM, 10, 47-51 (1996).西 直美: ダイカストの歩み, 軽金属, 57, 163-170 (2007) . R. Inoue and H. Suito: Determination of oxygen in iron-aluminum alloy by inert gas fusion-infrared absorptiometry, Material Transactions, JIM, 32 (12), 1164-1169 (1991).坂本 満、上野英俊: 部材の軽量化による輸送機器の省エネ化-難燃性マグネシウムの研究開発-, Synthesiology, 2 (2), 127-136 (2009).[1][2][3][4][5][6][7]参考文献回答(兼松 渉)米国地質調査所の報告を元に作成したマグネシウム地金の国別生産量円グラフを図1として1章に追加し、世界シェアの数値をこれに合わせて修正(95 %→85 %)しました。なお製品生産に関しては、他の非鉄金属製品に比較して市場規模が小さく、業界団体等による統計にもマグネシウム製品が独立した調査対象項目となっていないというのが実態です。議論3 IGF-IRA法を選択した経緯コメント(岡路 正博)いくつかある酸素分析法の中からIGF-IRA法を選択した経緯について、よりシナリオドリブン的な見地から示していただけたらと思います。2章1節で、いきなり不活性ガス融解-赤外線検出(IGF-IRA)法から始められていますが、3章1節で示されているフェノール溶解法、荷電粒子放射化分析法との比較を最初に取り上げて、標準化に向けてなぜIGF-IRA法が最適かを示される方が論理的には分かり易いと思います。論理展開の順序を再考していただければ幸いです。回答(柘植 明)IGF-IRA法を選択した経緯につきまして“2.1基本となる技術の開発”の最初の部分に、IGF-IRA法が標準化に最適である理由がより明確に理解されるように、放射分析法や湿式操作を伴う分析法等の問題点やIGF-IRA法が広く産業界に普及しており標準化に適していること等の文章を書き加えました。議論4 試料採取法の選択の経緯コメント(岡路 正博)議論3におけるコメントの趣旨と同じですが、同様に試料採取法についても、両者(切り粉採取法、コアドリル法)の比較検討を最初に簡潔に記述した方が、筋道が自然で理解しやすいと思います。回答(柘植 明)“2.2試料採取法について”の冒頭部分から“2.2.1切り粉採取法”の最初の部分にかけて加筆し、一般的な切り粉採取法ではマグネシウムのように酸素親和性の高い材料における表面酸化の影響が避けられないこと、したがって均質化操作を行うことはできないが酸化の影響が小さいコアドリル採取法を採用した経緯を示し、筋道をより明確化しました。議論5 荷電粒子法の一致の妥当性の根拠コメント1(岡路 正博)3章1節の終段で、この方法と荷電粒子法の一致の妥当性の根拠を説明されていますが、データが不一致である原因の説明には推定が入っており、より客観的な説明が求められると思います。例えば、後段の、“No.3試料は...、水分や水酸化物が含まれていたものと考えられた。”では、水分や酸化物の濃度を具体的に測られた結果なのでしょうか?また、一致度に関しては、不確かさの要求レベルとの比較で、十分満足できると言えるのでしょうか?回答1(柘植 明)水分、水酸化物等については測定しておりません。この実験に用いたNo.3の試料が、切粉を湿度を上げて酸化させた試料であることから推測した誤差要因です。不確かさの要求レベルということに関しましては、もともとIGF-IRA法による金属中酸素の分析値は相対標準偏差で2 %−10 %程度(試料の投入量によって変わります)の変動をもつことが許容されているものです。この比較的低い精度を許容している背景には、金属中酸素分析値が、日常的な製品の工程管理において値が一桁高くなるような不具合の検出等に用いられることが多いということがあります。そういう意味では、この方法が生産現場で用いられる際の不
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