Vol.5 No.1 2012
32/84

研究論文:マグネシウムおよびその合金中の不純物酸素分析手法(柘植ほか)−29−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)ないタイプであり、窒素を吹き捨てる形でパージを行ったものの、わずかな酸素が残ってしまい切粉の酸化が生じたと考えられる。このように切粉の酸化を避けるためには、とても慎重な作業を必要とすること、また、グローブボックス中で切粉を作製し錠剤成型器に採取する操作は相当に難しく熟練を要するばかりでなく、回転機械である旋盤を厚みのある手袋を通して操作することは危険性を伴う作業であることから、作業現場において簡便に実施可能であることが望ましい分析方法としてはふさわしくないと考え、切り粉採取法の採用は見送ることとした。一方、以上のような切粉採取に関する実験結果から、その後の研究遂行に役立つ二つの貴重な知見を得ることができた。まず一つは、図6の芯の部分の測定結果からわかるようにバルク体の表面の酸素の影響は、今回開発した分析方法ではほとんど問題にならない程度であることがわかった。これは、Mgは酸素親和性が高く大気中で簡単に表面が酸化される試料ではあるが、その酸化は表面のごく薄い層に限られていることを意味している。これにより、体積に対して表面積が比較的少ない形状を採用するなら、表面酸化の影響はこの分析法の検出限界と同等程度に抑えられることが明らかとなり、次に示すコアドリル法の開発につながった。他の一つは、切粉を同じ厚さとすればある程度酸素量の揃った切粉成形体が得られるという結果であり、これは分析値の妥当性検証試験や共同分析試験等に用いる試料を準備する上で重要な知見となった。2.2.2 コアドリル法2.2.1で述べたように、体積に対して表面積の少ないバルク体を試料とすることで、表面酸化の影響を抑えることができる。その一方で、試料採取法として充たすべき要件として、さまざまな形状が予想される測定対象物の任意の位置から測定に適した大きさの試料を偏りのないように、かつ簡便に採取できることがある。その他にもIGF-IRA法固有の条件として、試料を黒鉛るつぼに確実に投入できることが必要である。IGF-IRA法の市販装置では、最初に炉内の不活性ガスパージを行い黒鉛るつぼの脱ガスの後、試料を直径8 mmほどの試料落下経路を自重で落下させながら投入することとなる。鉄等の試料では、比重が大きいために問題とならないが、Mgの場合は比重が小さいために、何らかの原因で経路の途中で引っかかる恐れがある。これら二つの要件を充たすためには、試料を小さく、形状を球体に近づければよい。一方、試料投入量と測定値の精度はトレードオフの関係にあり、球体の測定試料を得るためには加工の手間がかかり加工中の酸化の影響が大きくなることが予想される。この研究では、これらの条件を勘案し、できるだけ簡便に採取できる形状として円柱形を選び、測定精度を維持しつつできるだけ小さな寸法として試行錯誤の結果、直径7 mm、長さ4 mmとした。この形状の試料を、測定対象物から効率よく採取するために、直径7 mmの丸棒をくりぬくことができるコアドリルを試作した。試作したコアドリルにより、測定対象物の任意の位置から丸棒をくりぬいて採取し、任意の深さの部分を丸棒から切り出すことで試料を作成した。コアドリルの写真を図7に示す。図8に直径170 mm、長さ500 mmの押出用ビレットから系統的に130個の試料を切り出した事例を示す。このような、大型試料の分布解析用試料の切り出しも2日間以内に可能である。3 国際標準化に向けての手法の信頼性検証国際標準化を行うためには、これまでに述べた要素技術の確立に加えて、それを各国の専門家からみて標準化にふさわしいレベルの分析法であることを示す必要がある。具体的には、1)分析値が精確に対象物中の酸素を測定していること、2)分析法を適用可能な合金の範囲が明らかであること、3)市販されている不活性ガス融解法の装置においてこの分析法を適用した際に再現性のよい結果が得られること等である。以下に国際標準化に向けて、これらの点に関して検討した結果について述べる。図7 試料くりぬき用コアドリル(内径7 mm)図8 押出用ビレット中酸素分布測定のためのコアドリルによる試料採取例170 mm No.1 -1 No.1 -13 500 mm No.1 -5 No.1 -6 No.1 -11 No.1 -12 No.1 -4 No.1 -8 No.1 -2 No.1 -3 No.1 -9 No.1 -7 No.1 -10 合計130本各サンプルは 7×50(mm)鋳造方向50 mm×10 切断No.10No.9No.8No.2No.1コアドリル採取

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です