Vol.5 No.1 2012
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研究論文:マグネシウムおよびその合金中の不純物酸素分析手法(柘植ほか)−28−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)の温度はMgの沸点を大きく超えており、Mgはほとんど完全に蒸発分離できたものと考えられた。昇温の速度や加熱時間を変えてこの共融物の重さを測定し、Mgと受容体を分離できる適切な昇温条件の範囲を明らかにした。るつぼ中の残留物は、スズとMg中の酸化マグネシウムからなると考えられるので、図3の分解プロファイルに示されるように黒鉛るつぼの中で5,000 W以上の電力で加熱すると、酸素を一酸化炭素として完全に抽出できることが予想される。そこで、Mg0.3 g、Sn0.5 gに酸化マグネシウム10 mgを添加したモデル試料を用いてMgを分離し、残留物を5,000 Wで加熱した時に抽出・検出される一酸化炭素中の酸素の量が、添加した酸化マグネシウムから予想される酸素量約4 mg(酸化マグネシウム中酸素の化学量論組成は39.7 %)に対して、どの程度の比率(回収率)になるかを調べた。ところがこの実験において回収率は2割程度に留まり、この原因究明に少なからぬ時間を要することとなった。最終的には、るつぼの縁についたMgをそのままにして加熱すると、残留物から発生する一酸化炭素中の酸素と再結合したためであることをつきとめ、再結合を防止するためには炉を開けて黒鉛るつぼから残留物を取り出し、炉内のMgを除去後に新しい黒鉛るつぼで測定すればよいという簡単な手順を思いつくに至った。Mg蒸気と発生した一酸化炭素との反応性が予想以上に高く、IGF-IRA法は一連の分析操作を不活性ガス気流下で行わなくてはならないという自らの固定観念に捕らわれていたために、原因究明に時間を要することとなった。なお、分析の途中で大気中に残留物を取り出すことによって試料の酸化が起こることが懸念されたが、試料をるつぼに入れずに分析を行って確認したところ、その影響はほとんどないことが分かった。2.2 試料採取法についての検討規格にしたがって測定された分析値は、商取引において対象物全体を代表する値として取り扱われるため、分析手法を標準化するにあたっては基本となる分析手順以外に試料全体を代表する分析値が得られるような試料採取方法を規定する必要がある。このため、通常は測定対象物の複数か所から分析に用いる量より相当に大量の試料を採取し、それらをよく混ぜ合わせて均質化を図ること(均質化操作)が行われる。この研究でも、当初は金属中の主成分や不純物の化学分析に広く用いられ、試料採取物の均質化操作が可能な「切粉採取法」を検討した。これは、測定対象物の複数か所からドリル穿孔によって採取した切粉に対して均質化操作を行い、分析試料を得るものである。しかし、Mgがとても酸化されやすいため、簡便で実用的な酸素遮蔽では切粉採取に伴う試料の酸化が避けられないことが分かったため、均質化操作を行うことはできないが酸化の影響が小さいコアドリル採取法について検討した。以下に、試料採取法の検討結果と、その過程で得られた標準化に資すると期待される知見について述べる。2.2.1 切り粉採取法通常の切粉採取法では、切粉生成段階で試料は大きな表面積をもつことになるため、Mgのように酸素親和性の高い材料では表面の酸化が避けられず、これをそのまま適用することは難しいことが予想された。そこでまず、簡便な酸化防止処置を施した状態で切り粉採取を試みることとした。図5に模式的に示すように、窒素パージしたグローブボックス内でミニ旋盤を用いて直径10 mmの丸棒を表面から0.2~0.6 mmずつ切削し、その切粉を錠剤成形器に量りとりパスボックスを通じて外に出してからプレスしたものを試料とした。これを分析したところ、図6に示すように、窒素パージ中で採取した切粉は材料の芯の部分よりも高い酸素濃度を示しており、窒素パージしたグローブボックス内で切粉を採取するという手順をとっても大気中での作業と同じく切粉の酸化が避けられないということが分かった。これは、用いたグローブボックスが、真空パージができ②切粉を7 mmΦ×4 mmに成形7 mm4 mm直径10 mm丸棒を表面から0.2 mm~0.6 mmずつ切削切り粉4 mmに切断①直径7 mmの芯を残して長さMg丸棒試料酸素分析へ錠剤成型器表面からの深さ(mm)0.010.020.030.04窒素置換大気中0酸素濃度(wt%)0.9 - 1.50.3 - 0.90 - 0.3芯芯1.2 - 1.50.6 - 0.80.2 - 0.40 - 0.2図5 切粉採取方法および分析用試料作成方法図6 切粉採取時の雰囲気による表面酸化の影響
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