Vol.5 No.1 2012
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研究論文:マグネシウムおよびその合金中の不純物酸素分析手法(柘植ほか)−26−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)のことはリサイクルシステムの構築という観点からも障害となり、Mg使用量増大をさらに難しくしている。すなわち、酸素親和性の高いMgにおいては、その部材化工程や部材の使用過程で表面の酸化が起こりやすく、部材化時に生じる端材やリユース部品の再原料化使用にあたっては、酸素含有量のチェックとその評価結果に基づく酸化物清浄化処理が必要不可欠であるが、生産現場で適用可能な酸素分析方法のないことがリサイクル推進の障害となっているのである。Mg材料および部材の製造技術という観点からは、我が国は世界的に優位にあり、特に酸素遮蔽下での融解鋳造技術や半溶融状態での射出成形加工を行う技術では、世界をリードしている。これらの部材化技術は、加工時の酸素増加を原理的に起こさない技術であり、製造された部材の酸素含有量が低いことが知られている[5]。Mgを巡る国際市場においては、我が国は「原料輸入加工品輸出国」と位置付けることができる。同様の位置付けにあるといわれている韓国では、比較的大規模な事業者が、押し出し成形による棒材や双ロール圧延による薄板等加工用素材の製造を行うという形が多い。一方、図1に示すようにMg地金の世界シェアのうち約85 %を中国の熱精練地金が占めており、中国は現在「原料輸出国」として位置付けられているものの、将来的には合金や部材の製造に力を入れてくると考えられている[2]。このように、現状では東アジアの主要国が三者三様の形で世界市場に参入しており、ライバルであるとともに協調・協力関係を構築できる可能性を秘めているのがMg材料業界の特徴の一つであるといえる。地球環境保護という観点からは、Mg材料の利用拡大を図るべきであることは論を待たない。酸素分析手法の普及は、材料・部材の品質・信頼性の裏付けを容易にし、これらの向上に大きく貢献することが期待される。同時に、Mg部材加工技術に関しては世界のトップクラスにある我が国の製品の優秀性をアピールすることも可能になる。そこで我々は、部材製造現場での工程管理等にも利用可能な簡便かつ信頼性の高い酸素分析手法を開発することとした。この研究の成果は、当初から産業界への普及を意識したものであるが、本格的に研究開発プロジェクトに着手する段階で、開発した手法を国際規格として提案することを最終的な目標に設定した。国際規格が、世界市場における製品特性評価の公正な物差しとなることを期待したものである。この報告では、酸素分析手法を構成する要素技術の開発と、手法の信頼性を検証した過程を紹介するとともに、国際標準の提案に向けた国際協力の経緯についても述べる。2 国際標準化に必要な要素技術・課題2.1 基本となる技術の開発工業材料の分析方法の標準化にあたっては、単に分析技術からの視点以外に考慮すべき要素として汎用性がある。例えば、酸素の分析方法としてよく知られる放射化分析法等は、結果の正確さにおいては優れているものの、放射化に用いる原子炉や加速器の使用は一般に制約が大きく、生産現場で日常的に分析する方法としては適さない。また、過去には主流であった湿式操作を伴う分析法は、分析者が分析操作に習熟を要するため敬遠される面があり、他に汎用的な機器分析法がない時に限って標準化されているのが実情である。このような背景から、金属中の酸素の工業的計測手法としては、一般に不活性ガス融解-赤外線検出(IGF-IRA)法が用いられている[6]。IGF-IRA法による酸素分析は、鉄鋼業界を始めとする産業界で広く用いられており、自動化された装置も多数普及している。また、外注分析を受託できる分析会社も数多く存在する。これらの点から、Mgの酸素分析においても、この方法が標準化に適していると考えられた。IGF-IRA法の測定原理を図2に模式的に示す。ヘリウム等の不活性ガス気流下にある黒鉛るつぼ中に入れた試料を、黒鉛るつぼに通電することによって加熱し、試料中の図1 マグネシウム地金の世界シェア図2 不活性ガス融解法の概念図原典 米国地質調査所 “Mineral CommoditySummaries, January 2011”中国イスラエルその他ブラジル力ザフスタンロシア黒鉛るつぼ+ N2(熱伝導度検出器 )2500 ℃<+ CO(赤外線検出器 )HeHe
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