Vol.5 No.1 2012
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研究論文:モノピボット遠心血液ポンプの実用化開発(山根ほか)−23−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)門人工臓器グループ主任研究員。2009年より1年間、国立大学法人筑波技術大学非常勤講師。現在、ヒューマンライフテクノロジー研究部門人工臓器グループ主任研究員。この論文では、流体工学実験および数値流体解析を担当。博士(工学)。小阪 亮(こさか りょう)2003年より日本学術振興会特別研究員DC2ののち、2005年筑波大学大学院システム情報工学研究科博士後期課程修了。同年(独)産業技術総合研究所に入所し、人間福祉医工学研究部門研究員。2010年よりヒューマンライフテクノロジー研究部門人工臓器グループ研究員。この論文では、システム制御および状態モニタ・センシングを担当。博士(工学)。査読者との議論議論1 全体構成コメント(赤松 幹之:産業技術総合研究所ヒューマンライフテクノロジー研究部門)Synthesiologyは研究をいかに進めるべきかを読者が知識として獲得できるための論文を掲載することが目的です。例えば、研究開発プロセスのどのタイミングで、何が必要と判断したのか、何に注力することと決めたのか、その理由は何であったか、といったことが書かれることを期待します。例えば、2章に目標設定が書かれていますが、その目標を受けて、どのような開発をすることにしたのか、といったシナリオが書けませんでしょうか。回答(山根 隆志)第2章「2.モノピボット遠心血液ポンプの研究」を立てて研究の論理を述べ、設計上重要となる現象を抽出し、第3章を「3.開発目標の再設定と臨床ニーズ」として製品開発への目標修正を示し、第4章はもとのまま開発成果の構成に変更しました。議論2 ポンプの設計検証と実験との関連性コメント(赤松 幹之)4.1節の冒頭に、設計検証を効率的に行って課題解決を図ったと書かれていますが、流れの可視化実験や模擬血液試験がなぜ必要となったかを、専門外の読者にも分かるように説明を入れてください。他の血液ポンプの研究開発と比較する等して、アドバンテージがどの程度のものであったかを記述してください。質問(濱 純:産業技術総合研究所エネルギー技術研究部門)ポンプの設計検証の章では、可視化実験、模擬血栓試験、耐久性試験を説明されていますが、ポンプの設計検証の評価の全体像はどのようになっているのでしょうか?その中で、3つの試験の各評価項目への対応等を、より具体的に記載してください。回答(山根 隆志)4.1節に以下を加筆しました。申請に必要となる評価試験として、薬事法に定められた有効性、安全性、品質にかかわる試験を行う必要がある。企業は、試験法が定められた安全性、品質試験を担当した。産総研が担当したのは有効性試験であり、「流れの可視化実験」および「模擬血栓試験」で血液適合性を評価し、機械的な「耐久性試験」も実施して設計検証を行った。またこれらの評価技術は、臨床サイドからの要請であり、どのような効果があったかを、4.2節に加筆しました:前述したように、この医工連携では、特に臨床サイドから、むやみに動物実験を行うのではなく、実験室評価(in vitro試験)を活用して科学的エビデンスに基づいて、次の動物実験に進むという、エビデンス・ベースト・メディシンの考え方を助言された。実験室で可視化実験や模擬血栓試験、溶血試験を事前に十分実施したことにより、動物実験数は最小限に抑えて製品まで到達した。結果的に、医学サイドから、課題解決の研究指針を示し動物実験施設をご提供いただいたことにより研究開発を短期に推進できた。産総研の成果は医工連携の賜物といってよい。さらに5章にその効果を加筆しました:開発には9年間を要したが我々の開発チームの場合、影響要因の多い動物実験を最小限に抑え、工学的実験によって得られた性能データの蓄積を多く行い、企業の設計根拠やユーザーへの説明資料が数多く残ったことが特徴である。議論3 補助ポンプの承認基準質問(濱 純)心臓血管外科手術等の補助循環ポンプとして、承認できる尺度は具体的にどのように規定されているのですか。回答(山根 隆志)基本的に薬事では安全性には尺度がありますが、有効性には尺度はありません。有効性は数字ではなく、提出したエビデンスの期間(この場合6時間データ)に基づいて承認するという形で行なわれています。議論4 評価技術の展開質問(濱 純)評価項目ならびに検証実験は、実際に評価手法として国内外へどのように認定されていくと考えればよいのでしょうか? 例えば、これらの評価方法を人工心臓設計評価のより一般的な評価手法として認知されるように、どのような取り組みをされているのでしょうか。回答(山根 隆志)ISOでの人工心臓の評価法には可視化実験を盛り込みました。企業がどこまで申請したいかで適用される評価法は異なります。具体的には6章に記述したとおりです。2010年12月には植え込み型補助人工心臓2機種が承認されましたが、(株)サンメディカル技術研究所のEVAHEARTに対しては、共同研究による流れの可視化実験データの提供を産総研が行い、薬事申請およびFDAのIDE申請に使用され、いずれも承認を得ています。議論5 製品化への判断、目標の再設定質問(赤松 幹之)この論文のポイントの一つは、泉工医科工業(株)が製品化を目指して参画してきたときの判断や、その後の目標の再設定のところです。他にも多くの人工心臓の研究があったと思いますが、なぜ企業はこのモノピボット遠心ポンプを製品化しようと判断したのか(あるいは製品化できる可能性を見出したのか)その理由を書けませんでしょうか。質問(濱 純)大学との連携で補助人工心臓を開発目標としていたものが、企業との製品化では体外用循環ポンプに目標設定が変更された理由については、特に医療関連の製品化の難しさやバリアーが推測されますが、その変更の理由を具体的にご教示ください。回答(山根 隆志)企業がモノピボット遠心ポンプを製品化しようと判断したのは、ある大学の先生が遠心ポンプ開発パートナーとして産総研を紹介してくれたことによります。2002年当時、我が国で回転型人工心臓を研究している施設の中で、動物実験まで到達していたのは5グループだけでした。このうちで新たに企業が参画し易い状態だったのが産総
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