Vol.5 No.1 2012
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研究論文:モノピボット遠心血液ポンプの実用化開発(山根ほか)−20−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)認できるよう、我々が開発した手法である[7]。ポンプを含む閉回路を購入牛血で満たし、クエン酸ナトリウム(凝固抑制)と塩化カルシウム(凝固促進)で調整しながら、手術時のヒト血液の凝固能ACT≒200 s(37 ℃)と同等に維持し、2時間後に血栓観察を行った。その結果、雄・雌球面ピボットの半径製作誤差によるすき間に生じた血栓が、雄・雌球面の製作時径でなく使用時径を一致させることで解消できることを確認した(図5)。4.2 医工連携による動物実験評価動物実験については、筑波大学でプロトタイプを用いたヒツジによる動物実験を延べ20回以上繰り返し、血栓除去を繰り返し最終的に5週間の動物実験で無血栓を確認した。またポリカーボネート製の量産モデルについては、東北大学の協力を得て4週間の動物実験を行った結果、血栓がおよそ解消することを確認した(図6)。前述したように、この医工連携では特に臨床サイドから、むやみに動物実験を行うのではなく、実験室評価(in vitro試験)を活用して科学的エビデンスに基づいて次の動物実験に進むという、エビデンス・ベースト・メディシンの考え方を助言された。実験室で可視化実験や模擬血栓試験や溶血試験を事前に十分実施したことにより、動物実験数は最小限に抑えて製品まで到達した。結果的に医学サイドから、課題解決の研究指針を示し動物実験施設をご提供いただいたことにより研究開発を短期に推進できた。産総研の成果は医工連携の賜物といってよい。一般に「医工連携」というと二つのパターンがありうる。一つは、企業と病院がメーカーとユーザーの立場で連携することによって、製品化を実現する場合である。なぜなら一般産業と違って、医療機器メーカー自身がユーザーになれないという、法律上の拘束を受けているためである。他の一つは、大学・病院・研究機関がシーズを提供し、そこに企業が加わってニーズに見合った製品を実現する場合である。今回はこの後者にあたる。過去の後者のパターンによる補助人工心臓(VAD)の開発例としては、・東京大学・日本ゼオンの拍動型VAD・国立循環器病センター・東洋紡績の拍動型VAD・京都大学・テルモ㈱の磁気浮上型VAD・早稲田大学・㈱サンメディカル技術研究所のメカニカル シールVAD・ベイラー医大・日機装㈱の遠心式体外循環ポンプ・ベイラー医大・京セラ㈱の遠心式体外循環ポンプ等があり、いずれも製品化に成功している。4.3 成果のまとめこのように産総研では、耐久性と血液適合性の向上を中心に研究開発を行ってきた。評価試験で確認したように、モノピボット遠心ポンプの実用上の特長は1)摩耗が少なく、動作音が静かであり、4週間以上の連続使用に耐える。2)血栓が無く、溶血が低く、4週間以上の連続使用に耐える。3)これだけの性能をもちながら、手術用ポンプ並みの価格で提供できる。ことといってよい。またモノピボット遠心ポンプの製品化に役立った産総研図5 模擬血栓試験による血栓防止回路を牛血で満たし、クエン酸ナトリウム(凝固抑制)と塩化カルシウム(凝固促進)で血液凝固能を一定に維持し2時間運転する試験で、血栓防止設計に改良図4 流れの可視化実験と数値流体解析による血栓防止隅部のよどみにおける血栓を予測し、鋭角の隅をなくして血栓除去を改良改良前改良後(a)流れの可視化実験(b)数値流体解析相対速度表示実寸換算値回転方向7065605550454035302520151050Pa黒 ~0.5[m/s]青 0.5~1.0[m/s]緑 1.0~1.5[m/s]赤 1.5~[m/s]改良前改良後TRY 6.0TRY 9.0
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