Vol.5 No.1 2012
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研究論文:モノピボット遠心血液ポンプの実用化開発(山根ほか)−19−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)補助循環ポンプは、下記4種類に分類される。①短期使用型(ポリマー製、軸シール付き、耐久性6時間、一般型とも呼ばれる)は薬価約6万円であり、年間4万個が心臓血管外科手術用に使用されている。②長期使用型(ポリマー製、シールレス構造、耐久性4日間)は薬価約10万円だが、関東地区では一般手術用としては保険で払えない縛りがある。③体外拍動式補助人工心臓(ポリウレタン製、寿命1ヶ月)は1ヶ月使用でき、保険で払えるが薬価は316万円である。④長期体内埋め込み型補助人工心臓(チタン製、超高耐久性)は最近承認され、長期間使用でき保険も使えるが、薬価は1,810万円と高価である。経済的には、6万円の体外循環ポンプを年間4万台の市場でシェア25 %を販売すれば、年間売り上げ6億円を期待できる。比較として、1,810万円の埋め込み型補助人工心臓を年間100台の市場でシェア50 %を販売すれば、年間売り上げは9億円が見込まれ、売り上げはおよそ同等である。そこで、臨床応用の第一ステップとして、堅実に製品化できると見込まれる前者を目指すことにした。このポンプは、高価な1ヶ月使用の拍動人工心臓(316万円)と同等の性能を、安価な(6万円程度)短期使用型ポンプで実現し得る経済性に大きな特徴がある。このポンプの製品化目標としては、手術用も当然含めるが、あわせて臨床ニーズが高まりつつある長期補助人工心臓までのつなぎ用(bridge-to-bridge)も考慮に入れ、性能は②以上で、コストは①のポンプを目指すことにした。技術的には、モノピボット遠心ポンプの製品は、結果的に直線流路を有し直径50 mmのインペラが直径3 mmの球面ピボット(SUS球/超高分子量ポリエチレン)で支えられ、ピボット周りには8 mmの孔が設けられたポリカーボネート製のディスポーザブル遠心ポンプとなった。ポリカーボネート製は遠心ポンプ製品に共通な仕様であるが、断面積一様を実現する直線流路インペラ、およびほとんど接着剤もシールも使用しない組立方法は、経済性も勘案した企業独自の発案であった。4 補助循環ポンプ製品化のための設計とその検証における産総研の役割と研究成果4.1 実験室における工学評価申請に必要となる評価試験として、薬事法に定められた有効性、安全性、品質にかかわる試験を行う必要がある。企業は、試験法が定められた安全性、品質試験を担当した。産総研が担当したのは有効性試験であり、「流れの可視化実験」および「模擬血栓試験」で血液適合性を評価し、機械的な「耐久性試験」も実施して設計検証を行った。流れの可視化実験では、産総研の経験値としてせん断速度300 s−1以下の領域は血栓形成の可能性ありと判定している。実験の結果、ピボット支持部の鋭角な隅にせん断速度300 s−1以下のよどみが見い出されたため、血栓形成の可能性があると判断して、この隅をなくす設計にした[5][6](図4)。4週間の耐久性試験では、インペラ上面の変位をレーザー焦点変位計で連続計測し、ピボット受の軸方向摩耗率がわずか1.1μm/dayであることを確認した。ピボット受形状は、回転摩耗に一般的なW字型断面の摩耗痕が観察できる摩耗レベルではなかった。しかも連続使用でも動作音が静かであることがわかった。模擬血栓試験は、動物実験前に実験室で抗凝固性を確図3 ピボット形状によるポンプ溶血特性の違い1.03.03.30.30.0020.0040.0030.0030.0020.0120.0100.001dcbaモノピボット遠心ポンプ溶血指数(g/100L)相対指数市販ポンプ溶血指数試験ポンプ溶血指数ピボット形状Contact area, Point contactContact area 8.0 mm2Contact area 3.6 mm2Contact area 1.6 mm2dcbaFemaleMaleφ3.0φ1.4FemaleMaleφ3.0φ2.0FemaleMaleφ3.0φ2.7FemaleMaleφ3.0φ5.0

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