Vol.5 No.1 2012
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研究論文:モノピボット遠心血液ポンプの実用化開発(山根ほか)−17−Synthesiology Vol.5 No.1(2012)6)ローラーポンプや遠心ポンプ等の手術用体外循環ポンプは、1日以内の使用に限定され、7)カテーテル挿入の補助循環ポンプは、1週間以内の使用に限定されていたが、8)この論文のような耐久性の高い遠心ポンプの登場により、長期人工心臓の埋め込みまで、あるいは移植まで、1か月~1年間のつなぎに使用できる人工心臓(bridge-to-decision)を目的とした新しいカテゴリーの治療が始まろうとしている。人工心臓開発の歴史は、血栓と感染を克服する歴史であった。1957年米国Cleveland Clinic病院でKolff-Akutsu博士の動物実験から始まった。しかし抗血栓性材料が登場するまで実用化を待って、1981年から全置換拍動型の臨床試験が行われた。次に生体心臓を残して装着する補助人工心臓が主流となり、感染防止に有効な埋め込み拍動型の臨床試験が1987年から始まり、臨床使用例は4,600例を超えた。埋め込み型補助人工心臓の第1世代は、主として重量1,400 gを超す大型の拍動型ポンプであった。1998年より回転型の補助人工心臓が導入され、技術革新が起きた。機械接触軸受を採用したもので第2世代と呼ばれる。1998年より軸流型の臨床試験が始まり、臨床適用数はすでに6,500例を超えている。回転型であるため、重量200~500 gと小型で埋め込みが容易なことと、部分点数が少ないため信頼性が向上したことが大きい。拍動型から回転型になったことにより「非接触軸受」を導入することが可能になり、再び技術革新が起きた。これが第3世代補助人工心臓であり、その臨床試験が2004年から始まった。位置センサーと電磁石でインペラを浮かばせる「磁気軸受」を採用した遠心型、10ミクロンオーダーの凹凸を付けることによって発生する局所流体圧を利用する「流体動圧軸受」を採用した遠心型、およびサブミクロンの液膜で血液と冷却水の混合を遮断する「メカニカルシール」を採用した遠心型等である。形式は遠心ポンプが多く、血液ポンプサイズは軸流型よりは大きくなるが、超高耐久性(理論上は無限耐久性をもつ)に特徴がある。また小児用まで適用領域の広い動圧軸受式軸流補助人工心臓も、国立循環器病研究センター/産業技術総合研究所/三菱重工業㈱/ニプロ(株)で開発されつつある。実用化が始まった第2世代、第3世代の補助人工心臓は体内埋め込み型で、退院ができる点が大きなメリットであり、コントローラ/バッテリー(8~10時間使用)はキャリーバッグで携行できシャワーも使える。海外での新規埋め込みはほとんどすべてこれら回転型ポンプになっており、国内でも適用患者は退院ばかりでなく、就労・就学復帰までできるようになっている[1]。ただし、患者が埋め込み型補助人工心臓に適しているか、例えば肺機能等の様子を見る必要がある場合、つなぎ(bridge-to-bridge)の人工心臓が必要であるが、現状では高価な(300万円以上の)空気駆動型人工心臓を使うしかなく、4週間以内のつなぎに使用できる経済的な(50万円以下の)補助循環ポンプが必要とされている。我々は第2世代および第3世代の補助人工心臓を開発してきたが、その技術を基にして4週間使用できる第2世代の補助循環ポンプを製品化することに成功したので、その研究開発のシナリオを述べ医工連携による製品化研究について論じる。2 モノピボット遠心血液ポンプの研究我々が人工心臓の開発を始めた1991年当時、世界的には貫通軸・シールがないシールレス回転型血液ポンプの開表1 人工心臓の適用目的、機構、寿命、製品例図1 製品化したモノピボット遠心ポンプの構造と概観(泉工医科工業(株)使い捨て可能なメラ遠心ポンプHCF-MP23)(ポリカーボネート製、直径50 mmのインペラ、直径8 mmの洗浄貫通孔、直径3 mmの球面ピボット(SUS球/超高分子量ポリエチレン製))直線流路インペララジアル磁気カップリング駆動モノピボットSUS/UHMWPE承認品はまだない1か月~半年間遠心ポンプ(非接触軸受等)人工血管接続8)長期型埋め込みまでのつなぎ補助循環:新治療マッケ社RotaFlow等4日間遠心ポンプ(機械軸受)カテーテル挿入7)術中・術後補助循環日本メドトロニック㈱BioPump、 テルモ㈱Capiox、泉工医科工業㈱HPM15等6時間ローラーポンプまたは遠心ポンプ6)手術時体外循環テルモ㈱DuraHeart、 ㈱サンメディカル技術研究所EVAHEART(機械軸受に分類されることもある)、 Ventracor社VentrAssist、 HeartWare社HVAD7年間以上(更新中)モーター駆動による回転型(非接触軸受)5)埋め込み補助人工心臓DeBakeyVAD=HeartAssist5、 Jarvik 2000、 HeartMate II5年間以上(更新中)モーター駆動による回転型(機械軸受)4)埋め込み補助人工心臓Novacor、 HeartMate XVE1年間(耐久限界)電磁駆動による拍動型3)埋め込み補助人工心臓東洋紡績㈱ 補助人工心臓1~12か月(耐久限界)空気圧による拍動型2)補助人工心臓Symbion社Jarvik 71年間(耐久限界)空気圧による拍動型1)完全置換型人工心臓開発品・製品例使用限界駆動機構適用目的

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