Vol.4 No.4 2011
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研究論文:フレキシブル太陽電池の高性能化技術開発(増田)−196−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)を派遣する集中研方式を採用した。全社の研究員が参加する月次研究会を開催し、研究成果は全社で共有するとともに、研究会での議論を通じて、参加企業間の協業テーマの設定や、研究テーマの方向性の見直しも臨機応変に進めた。これらのことを通じて研究開始当初は想定していなかった派生的な成果も得られた。したがって、月次研究会での発言は極めて重要であり、発明の認定の証拠と成り得ることもあるので、研究会の議事録は充実させた。このコンソーシアムには相互に競合となる企業も参加しているため、合同の月次研究会での発表には次のようなルールを設けた。つまり、このコンソーシアムの中心的メンバーである材料・部材メーカーが最も重要視する材料の合成法やノウハウについては研究会で開示しなくともよいこととした。材料の合成は基本的には参加企業が社内で単独で実施するものであり、原則として知見を共有すべきものでないと考えたからである。一方、太陽電池の作製に関する結果は参加企業で共有すべきものと考え、太陽電池性能に影響する部材の特性については開示を原則とした。また、部材を組み合わせる際には、構成材料の合成法等を知ることが必要になる場合もあるが、その場合は限られたメンバーで別途秘密保持契約を締結することで合意を得た。このように、各社が共同で保有する技術と個別に開発する技術を明確に区分することで、コンソーシアム参加の利点を最大限に引き出すとともに、各社の個別の利益も保護できたことが、コンソーシアム成功の一因と考えている。4.3 運営委員会と特許戦略さらに、参加企業各社と産総研の代表で構成されるコンソーシアム運営委員会を最高意思決定機関と定義した。成果の取り扱いや発明が生じたときの発明者の認定、さらには利害の調整等について課題が生じた場合には運営委員会を開催し、その裁決に従うこととすることで、コンソーシアム運営の公平性ならびに透明性を高め、円滑な運営が実現できた。コンソーシアムで生じた発明については、発明者の所属する組織が出願人となり、その持ち分比率は寄与度に応じるものとしたが、出願人とはならない参加企業も適正な実施料を支払えば当該発明を実施できるものとした。つまり、特定の企業の独占は認めないことをコンソーシアム参加の動機付けの一つとした。太陽電池に関する成果はコンソーシアムの共有財産であるという考え方と、参加企業の社内での研究開発を原則とする材料そのものに関する知見やノウハウはコンソーシアムに持ち込まないとの考え方の二つを基本とすることで、このような発明の取り扱いを可能にした。さらに、コンソーシアムで得られた研究成果は、特許出願後に速やかに公開することを基本とした。4.4 若手人材育成の方針このコンソーシアムは、公的資金は用いずに民間資金で運営されているものの、研究に使用している装置の大半はコンソーシアム設立以前に産総研の研究費で購入されたものであり、研究に適用しているノウハウ等も産総研でこれまでに開発してきたものである。また、民間企業からの共同研究費と同額を上限として、いわゆるマッチングファンドが産総研から支給されている。このような事情に鑑み、公的研究所としての使命を果たすためにも研究成果は積極的に公開しているところである。このような研究成果の公開を通じて、参加企業から派遣された共同研究員が国際会議等の学会で発表したり、英文の論文を執筆したりすることも、若手人材育成の観点から有益と考えている。学会発表の場で得られたコメント等により研究が大いに進展した例や、共同研究員が新たに構築した人脈により参加企業にとってもビジネスの機会が広がった例もあった。また、産総研に派遣された共同研究員が、産総研在籍中に太陽電池の知識を幅広く身につけることを目的に、研究活動の一環として関連のセミナー等も多数実施し、共同研究終了後も社内で太陽電池の専門家として活躍できることを心がけた。5 コンソーシアム研究の成果コンソーシアム研究の結果、PENフィルムやPIフィルム上に、旭硝子(株)製酸化物透明電極付ガラスAsahi-Uの表面凹凸形状を転写した紫外光硬化性アクリル樹脂をラミネートした基材が開発された。図4には開発した基材の外観写真を示す。当該基材のベースフィルムはPENであり、転写された凹凸形状により光の散乱が増強され、肉眼では白く見えることがわかる。図5に基材の作製法の概略を示す。Asahi-Uやモスアイ構造をそのまま転写したのでは、図5中に走査電子顕微鏡写真を示すように凹凸形状が逆転するため、所望の構造を図4 Asahi-Uの凹凸形状を転写したPENフィルムの外観写真

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