Vol.4 No.4 2011
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研究論文:フレキシブル太陽電池の高性能化技術開発(増田)−195−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)3 フレキシブル太陽電池開発に必要な要素技術課題「フレキシブル太陽電池基材コンソーシアム」では、薄膜シリコン太陽電池の光閉じ込めに適した凹凸形状をポリマー基材そのものに形成することを基本的な要素技術とした。このことによって、透明電極に凹凸形状をもたせなくともよくなるので、透明電極製膜時の基板温度等の条件が緩和され、耐熱性の低いポリマー基材に適したプロセスになると考えられるからである。ポリマー基材自身に凹凸形状を形成するというアイデア自体は、このコンソーシアムでの研究で初めて得られたわけではなく、これまでにもいくつか報告がある[1][2]。例えば、凹凸形状を有するスタンプによる転写や、リソグラフィ等を用いる方法がこれまでに提案されてきた。しかし、スタンプによる転写は、対象が熱可塑性のポリマー基材に限定されるうえ、プリントされた凹凸形状に充分な精度や再現性が得られないことが課題である。また、リソグラフィを用いる方法では、理想的な凹凸形状を得るのが困難なうえ、リソグラフィ装置が高価なことも課題であった。この研究では、ポリマー基材の材料を選択しない汎用的な技術となり得ること、さらには光閉じ込めに適した凹凸形状を正確に転写できることを条件として、ポリマー基材上への凹凸形状の新しい作製法を検討した。その結果、モールド上に形成した凹凸形状を転写した紫外光硬化性アクリル樹脂をラミネートした基材が有効であるとの結論を得た。この論文ではAsahi-Uの凹凸形状を転写した基材ならびに無反射構造として知られるモスアイ構造の凹凸形状を転写した基材を比較検討した結果を示す。また、この論文では、ポリマー基材としてポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムやポリイミド(PI)フィルムを用いた例を示すが、この方法の対象は、これらのフィルムに限定されるわけではなく、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート(PC)等の他のポリマー基材でも有効なことを確認している。さらに、この方法は、ポリマー基材のみならず、ガラス基板に対しても適用できることを見いだしている。4 コンソーシアムの構成と運営4.1 コンソーシアムでの役割分担フレキシブル太陽電池開発に必要な要素技術課題が明らかになったが、この課題を解決するためには、ポリマー基材や紫外光硬化性アクリル樹脂に関する材料技術、両者の貼り合わせに関する加工技術、最適凹凸形状のシミュレーション技術、量産化に必須のロールツーロール装置技術、薄膜シリコン太陽電池作製のためのプロセス技術やデバイス技術等を組み合わせることが必須である。これらの技術は太陽光発電研究センターがすべてを持ち合わせているわけではなく、第2章でも述べたように、産学官連携コンソーシアム型共同研究で実施するのが好適と判断した。本章では、コンソーシアムの具体的な運営方針について紹介する。「フレキシブル太陽電池基材コンソーシアム」では、産総研が研究を統括するとともに、ポリマー基材上での透明電極ならびに太陽電池作製条件の検討を担当し、参加企業はポリマー基材開発を担当した。参加企業の役割分担は図3にも示すように、主として、三菱瓦斯化学(株)がシミュレーションによる凹凸形状の設計、帝人デュポンフィルム(株)がPENフィルム(テオネックス®)の開発とコンソーシアムへの供給、日本合成化学工業(株)が紫外光硬化性アクリル樹脂の開発とコンソーシアムへの供給、(株)きもとがポリマー基材表面へのハードコート、東芝機械(株)が枚葉方式またはロールツーロール方式でのナノインプリント技術によるアクリル樹脂への凹凸形状の転写を担当した。凹凸形状の設計については現在開発中の項目も多く、この論文ではAsahi-Uならびにモスアイ構造の凹凸形状を転写した結果についてのみ示す。Asahi-Uが自己形成で得られた形状を用いているのに対して、このコンソーシアムで開発した基材は転写により凹凸形状を形成しているため、任意の形状に対応することができる。したがって、凹凸形状の精密設計により、Asahi-U基板を用いた場合を凌駕する性能の太陽電池が得られる可能性もある。このことは、ガラス基板上に作製された現行の薄膜シリコン太陽電池よりも高効率の太陽電池がポリマー上で得られる可能性を示唆するものである。このため、凹凸形状の設計は極めて重要な研究テーマとなる。4.2 月次研究会の運営このコンソーシアムでは、参加企業から産総研に研究員当該ポリマー基材に最適化した装置設計ナノインプリント装置技術コンソーシアム開発基材を用いた高効率フレキシブル薄膜太陽電池の実用化量産実証試験東芝機械(機械メーカー)ハードコート技術きもと(樹脂加工メーカー)紫外光硬化樹脂技術日本合成化学工業(樹脂メーカー)帝人デュポンフィルム(樹脂メーカー)ポリマー基材技術コンソーシアム産総研フレキシブル太陽電池用基材への要求事項の明確化凹凸形状設計技術若手人材の育成高効率化三菱瓦斯化学(樹脂メーカー)太陽電池メーカー(オブザーバー)特許の有効活用ポリマー基材上への凹凸形状形成技術薄膜シリコン太陽電池の先行技術図3 コンソーシアム方式によるフレキシブル薄膜シリコン太陽電池の実用化シナリオ
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