Vol.4 No.4 2011
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研究論文:フレキシブル太陽電池の高性能化技術開発(増田)−194−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)ト型薄膜シリコン太陽電池では、図1に示すように、光をガラス基板側から入射するために、酸化物透明電極表面に凹凸形状を設け、光を散乱させて光吸収層に光を閉じ込めることで、効率向上を実現している。旭硝子(株)製Asahi-Uは、フッ素添加酸化錫透明電極を形成したガラス基板であるが、アモルファスシリコン太陽電池に最適な凹凸形状を有する酸化錫表面が得られることが知られている。Asahi-Uでは、最適な凹凸形状を形成するために、フッ素添加酸化錫の製膜時に500 ℃程度の基板温度を要する。しかし、500 ℃程度の耐熱性を有する汎用ポリマー基材は存在せず、ガラス基板を用いる場合と同様の方法でフレキシブル薄膜シリコン太陽電池の高性能化を図ることはできない。この課題を解決するために、ポリマー基材の耐熱性を上げる戦略も考えられるが、この研究では、ポリマー基材そのものに凹凸形状をもたせる新たな技術を開発することで、酸化物透明電極に凹凸形状を形成した場合と同等の特性を発現させることを検討した。このことにより、酸化物透明電極自体は、凹凸形状の形成に必要な高い基板温度で製膜する必要がなくなるため、製膜条件を大幅に緩和することが可能となる。このような技術開発は産総研 太陽光発電研究センター(当時)だけで実施できるものではない。太陽電池の作製技術に関しては、太陽光発電研究センターでさまざまな経験やノウハウを持ち合わせているものの、フレキシブル太陽電池に重要なポリマー基材の技術やロールツーロール装置の技術は持ち合わせていないため、研究を円滑かつ迅速に遂行するため、これらの技術を有する部材メーカーや装置メーカーを中心に、広く産学官の知見を結集可能な産学官連携コンソーシアム型の共同研究を実施することを試みた。コンソーシアム型共同研究の目的は大きく分けて二つある。一つ目は、複数の民間企業と集中研方式で研究課題に取り組むことにより、迅速な技術の集積で開発が加速され、その成果の産業界への移転も加速されることである。二つ目は、民間企業から産総研に派遣された共同研究員のOJTを通じた人材育成であり、複数の企業が連携して研究を行うことにより、研究面での成果のみならず人的ネットワークの構築も期待できる。上記シナリオに基づいて研究開発を遂行するために設立した「フレキシブル太陽電池基材コンソーシアム」の実施体制について以下に紹介する。「フレキシブル太陽電池基材コンソーシアム」第一期の期間は2006年6月~2008年3月で、石川島播磨重工業(株)(期間中に(株)IHIに社名変更)、(株)石川製作所、(株)きもと、筒中プラスチック工業(株)(期間中に住友ベークライト(株)と合併し住友ベークライト(株)に社名変更)、帝人デュポンフィルム(株)、日本合成化学工業(株)、三菱瓦斯化学(株)、(株)麗光(五十音順)の8社が参加し、石川県工業試験場と太陽電池メーカー1社がオブザーバーとして加わった。第一期のコンソーシアムの体制を図2に示す。第二期の期間は2008年4月~2010年3月で、(株)有沢製作所、(株)きもと、住友ベークライト(株)、帝人デュポンフィルム(株)、東芝機械(株)、日本合成化学工業(株)、三菱瓦斯化学(株)(五十音順)の7社が参加し、第一期と同じ太陽電池メーカー1社がオブザーバーとして加わった。第三期は2010年4月以降継続中であり、(株)きもと、帝人デュポンフィルム(株)、東芝機械(株)、日本合成化学工業(株)、三菱瓦斯化学(株)(五十音順)の5社が参加し、実用化を目指したフェーズでの研究を進めている。図3にはこの論文で紹介する内容に限定して、このコンソーシアムでの実用化シナリオを、当該課題にかかわったメンバーと役割分担を含めて図示する。アモルファスシリコン透明電極透明電極銀裏面電極ガラス基板凸凹形状pinオブザーバー石川県工業試験場バリア膜装置バリア膜装置コンソーシアム運営委員会太陽電池メーカー太陽電池作製技術光閉じ込め機能・バリア機能付フレキシブル基材の開発8社から10名の共同研究員、産総研での集中研方式新開発高機能フレキシブル基材IHI麗光三菱瓦斯化学日本合成化学工業帝人デュポンフィルム住友ベークライトきもと石川製作所図1 アモルファスシリコン太陽電池における光閉じ込めの原理図2 「フレキシブル太陽電池基材コンソーシアム」(第一期)の体制
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