Vol.4 No.4 2011
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−236−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)座談会:システムと構成学を考える1960年東京大学工学部電気工学科卒業。㈱日立製作所 大みか工場長、電機システム事業本部長、常務、専務、副社長、副会長を歴任。元 内閣府 総合科学技術会議議員。日立マクセル、日立電線、日立国際電気 各社 会長を経て、日立製作所 特別顧問。有限責任事業組合 海外水循環システム協議会 前理事長。日本工学会 前副会長。現 日立製作所 名誉顧問、日立マクセル 名誉相談役。小野 晃:システムと構成学の今後に向けてずっと官と学の中で過ごしてきた私にとって、総合科学技術会議の議員を務められ、民間における研究開発のオピニオンリーダーたる桑原さんとどのくらい接点を持てるのか、対談前に懸念がなかったわけではない。だが、座談会を終えてみると多くの点で議論がかみ合い、大変有意義な機会をいただいたことに感謝している。シンセシオロジーが強調する「シナリオ」や「統合的・構成的な研究」のエッセンスは、システム研究やシステム的思考と関係が深いことが改めて理解できた。産総研等の公的研究機関や大学の研究者が、企業の研究者や技術者と今後より良い連携をしていくための、道筋と課題が見えてきた気がする。科学は17世紀にヨーロッパで「サイエンス」として生まれたが、要素還元主義がとても成功した。いろいろな事象を細かく分解し、階層化して、一番下のレベルまで分かることが重要だとの信念で、分析を主たる手段として研究をやってきた。その研究の手法は300年以上の時間経過の中でよく確立され、現在でも大いに役に立っている。しかし地球環境問題や福島の原子力発電所の事故をみると、システムや複合的な問題を解決するためにはこれまでの要素還元主義だけでは太刀打ちできないことも見えてきた。そのような社会のニーズに対して、現在の科学がうまくかみ合っていない。また要素還元主義を徹底した結果として、一方で、科学アカデミーが著しく細分化され、それぞれの狭い領域の中で研究することで十分だとする風潮ができてしまったことも弊害ではないだろうか。図aは分析的手法と統合的・構成的手法のプロセスを対比して描いたものである。分析的手法を主とした現在の科学(第1種基礎研究)のプロセスを上部に描いた。それに対して、統合的・構成的研究(第2種基礎研究)を下部に描いた。現在の科学は右側にある自然や存在物(人間も存在物の一つである)を出発点として、それらを学問領域ごとにそれぞれ異なる視点から分析する。例えば物理学、化学、生物学、機械工学、電気工学等である。それぞれの視点から自然と存在物を観察して、それを階層化し、要素に分解し、それぞれの学問領域の中で整合的に理解できるように、いろいろな知識要素を体系化する。例えば領域Aでは物理学の法則と公式とデータベースを整備し、領域Bでは機械工学の法則と公式とデータベースを整備する。一方で科学とは独立に、人類は自然や存在物に手を加えたり、あるいは社会的に意味のある「人工物」を技術により創造してきた。現実の複合的な課題を解決するに当たっては、さまざまな学問領域の科学的成果を使っていかないと、図aの右側にある「人工物」を作るという最終目的、すなわち社会的な価値のところまで到達しない。それでは統合的・構成的な研究開発はどういうプロセスで進めるのかというのが、図aの下部である。何か作り上げたいと思う人工物があると、それを実現するためのシナリオを考え素材・部品要素 4素材・部品要素 3素材・部品要素 2学問領域C知識要素 4知識要素の選択要素の統合と構成領域の選択シナリオ Bシナリオ C素材・部品要素 1知識の体系化知識要素 3階層化 と要素への分解シナリオドリブン製品システムサービス環境仮説検証 市場投入仮説形成 企画・計画学問領域Aの法則・公式・データ学問領域Bの法則・公式・データ学問領域Cの法則・公式・データ自然・存在物人工物(社会的価値)学問領域B技術の進歩(当為的知識の集積)学術・科学の進歩(事実的知識の集積)シナリオ A知識要素 2知識要素 1学問領域A図a 分析的研究と構成的研究のプロセス

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