Vol.4 No.4 2011
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−233−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)座談会:システムと構成学を考えるシャリストですから、書くのには相当苦労しています。自分がやった研究にもかかわらず、「どうして自分がそのシナリオを考えついたかわからない」というわけです。桑原 そこがポイントなのです。答えを出してきているわけですから、そこをきちんと考えるべきなのです。これは僕らも経験があるのですが、仕事とは全く関係ない人と付き合ったり、遊びの中からシステムのヒントがパッと思い浮かんだりすることがあるのです。いろんなインプットがシナリオ構築の源流にあると思いますね。小野 そうだと思います。一種、思いつきのような面があるのですけれども、思いつきも何かベースがないと思いつかないはずなので、そのベースが何かということを書いてほしいと言っているのです。これがなかなか難しいのですが、それをゆくゆくは体系化したいという思いがあるのです。桑原 そういう論文になっていたかな(笑)。小野 その点は今一つピンとこなかったかもしれません。編集者と筆者の間の意思の疎通が未熟であるという言い訳なのですが。桑原 シナリオにいく前に、「あなたはどういう知識をもっていて、この目的のためにどういう他の知識も入れましたか」というふうに分解して書くということもいいかもしれませんね。そういう努力は大事ですし、目指していることは大賛成です。もう一つ感じたのは、研究者の評価が今までずっと論文、論文できていますが、それでは出口論につながらないのではないでしょうか。第2種基礎研究はこれでいいと思うのですが、システムの財産というのは発明であり、それは結果的に特許になるわけです。そこに価値観をもう一つ置いたほうがいいのではないでしょうか。小野 これまでの論文は、分析であり、分解なのですね。時計を分解したら何が出てきたかというところを書く。そうではなくて、この部品を組み合わせると時計になるというのを書く論文がなかったわけです。桑原 ただ、学者の方々に第2種をやってほしいといったときに、自分のやった第1種からの展開はやってくれます。しかし、他人の第1種からは絶対にやらない。これでは日本は進化しません。ここは私が産総研に期待したい一番のお願いです。小野 まさにそこが産総研の第2種基礎研究の真骨頂です。産総研ではたこつぼ的な考え方から脱し、細分化された科学アカデミーの枠組みを超えて、物事をトップダウンで俯瞰的に見ることを奨励しています。先ほど、桑原さんから「システム思考が出口を生み出すのではなく、目的に対する解を出すためにシステム思考が必須なのだ」というお話がありましたが、まったく同感です。それは共同研究の場合も同じではないかと思います。共同研究をやること自体に価値があるのではなくて、社会的な価値を実現しようと思うと単独ではできないので、共同でやらざるを得ません。システムのシナリオを考えざるを得ないということになります。企業の方々のシステム的思考や考えているシナリオと、産総研の研究者が考えているシナリオは、ややレベルが違うかもしれませんが、共通の部分をシェアすることによって、必ずよい共同研究が生まれるだろうと思っています。私達はこれまで技術の細部にこだわるあまり、シナリオの共有にはあまり熱心でなかったように思っています。企業の方ももう少しシナリオを語っていただけると、私達のシナリオと何が違って、何が同じで、何をどう共有したらいいかという議論がよりかみ合うのかなと期待するのですが、いかがでしょうか。桑原 一つの例ですが、海水淡水化というシステムがあります。これは現在RO(逆浸透)膜という膜を使って海水をろ過していますが、そもそもどういう原理なのかということを説明してもらうと、その原理が分かっていなくてやっていることがいっぱいあって驚いています。そうではなくて、物理的現象等について、こういうことなのだということを解明し、これを理解した上で、こういう膜あるいはこういう生物学的処理ではどうか、またはこういう中間処理をしたほうがいいのではないかとあれこれ考えなくてはなりません。これを今JSTのプロジェクトで真剣にやっているのです。できたら3年、だめでも5年後には日本の海水淡水化は圧倒的強みを持てるようにしようということで今取り組んでいます。私達は原理・原則の整理された考え方をもっていないし、学の方々はシステムやシンセシオロジーをご存じでない方が多いので、お互いのエリアをいい形で詰めていくには、「システムとは何か」というのをみんなで勉強することが重要ではないかと考えています。このために今、科学技術振興機構研究開発戦略センター(CRDS)のプロジェクトで“システム技術”の勉強会がスタートしています。産総研の方

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