Vol.4 No.4 2011
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−232−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)座談会:システムと構成学を考える解析する手法を用いていましたが、日本では計算機によって理論解を求めるというアプローチによる制御システムの独自開発が発達したわけです。目的は操業効率の向上、製品品質の向上でした。このように、研究開発におけるシステム的思考やシステム技術の重要性については論を俟ちませんが、企業にとって科学技術の出口は、あらゆる場合において科学技術の複合体としての「システム」です。システム的思考とはシステムや製品を生み出すことではなく、ある目的をもったとき、その解を出すために必要となるものです。企画、計画、仮説形成の先頭にとても明確に「目的」があるわけですから、その目的から持続的競争力のあるシナリオを作ることができたら、あとは簡単なのです。ここのところに、猛烈に私達チャレンジすべき人間の行為・行動がなければいけないと思っているのですが、今、どうでしょうか。論文については、私はよくわかりませんが、大河内賞は生産工学や生産技術の研究開発および高度生産方式の実施等の功績に対するものですから、実用化の世界で表彰しているわけです。小野さんもおっしゃるように、これまでの学会の論文は大変重要ですが、いわゆる第2種基礎研究の領域について、研究者の評価も含め、どうやってその市民権を確立するかということがとても大切ですね。ただ、第2種“基礎研究”と書いたのは、僕に言わせると一種の逃げなのですね。もちろん重要性は100 %わかりますが、「基礎研究」というと「応用研究ではない」ということを含蓄するわけです。けれども、第2種基礎研究もあるけれども、応用研究もあるという感覚を持ちたいのです。その両方を含蓄することで市民権を与えなければいけません。今日本では、自然科学だけでも750学会を越えていますから、例えばシステムの大きな会か何かをつくって表彰する等、別の大きな動きをしたほうがいいのではないでしょうか。小野 確かに今の細分化された学会では難しいですね。赤松 これらシステム的思考やシステム構成能力はどのようにして身に付けることができるのか、あるいはどのような資質が必要とお考えですか。桑原 重要なのは、研究者や設計者の“システムで勝つ”という“負けじ魂”です。日本の国を世界から尊敬される国にしたい、ということはシステムで勝たなければいけないのですね。この“負けじ魂”、目的を完遂するために妥協しない、勝たねばという心のもちようが大事だと思うのです。では、そういう気持ちがあればだれでもできるかというと、その人にシステムをつくる能力があるかです。能力のある人は、想像もしないようなことを考えて役に立つシステムを作ります。ですから、「人の教育」ということを、実践も含めて、しばらくは(“しばらくは”という意味は、学問的に体系ができるまでということです)きちんとやっていくということが必要です。そういう人達は、過去の経験や広範な知識がいっぱい頭の中にあって、目的に応じてそれを引っ張り出してシナリオを作っていると思うのです。その思考プロセスがもっと論理体系化できないか、と考えています。その他には、人の力を借りられる協調性、取りまとめ力、そして適切な妥協力も必要でしょうね。赤松 研究者にとっても、研究を進める上でゴールをぶれずにもち続けることが大切です。とかく「まあ、いいか」と思うときは、ゴールも緩くなっているし、自分自身の評価が甘くなっているのですね。桑原 産業の場合、安易な妥協は必ず落第します。負けたら完璧にわかるのも、厳しくもあり、冷徹です。小野 企業は評価軸がとてもはっきりしているということですね。学のほうがそこははっきりしていないのかもしれません。客観的自己評価が大切ですね。システム構築とシナリオ赤松 先ほど桑原さんから「目的が明確にあるので、シナリオになったら、あとは簡単」というお話がありましたが、シンセシオロジーでは編集方針として「シナリオをちゃんと書いてください」とお願いしておりまして、ここがなかなか難しいのです。小野 「なぜその研究をやろうかと思ったか、あなたが過去に考えたことや描いていたシナリオを書いてほしい」ということと、そのために「どういう素材や部品を選んだか」、この二つが揃ってシンセシオロジーの論文ですと言っているのです。ただ、ほとんどの研究者は第1種基礎研究のスペ赤松 幹之 氏

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