Vol.4 No.4 2011
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シンセシオロジー 座談会−230−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)システムと構成学を考える赤松 産総研では第2種基礎研究を推進しています。それは、分析的な研究だけでは社会に研究成果を十分に生かすことができないのではないか、“もの”をつくるための科学、つまり構成的研究の方法の確立が必要なのではないかと考えているからです。桑原さんは、システム構築の重要性を強調されておられます。“もの”をつくるということはシステムアップするということにつながりますし、要素還元に陥らずにどのように組み上げていくかという意味で言えば、言葉は若干違うかもしれませんが、シンセシオロジーと同じようなことを目指しているのではないかと考えて、桑原さんにお話をお伺いしたいと考えた次第です。お二人のご経験を踏まえて、まず小野さんから、産総研のシンセシオロジーについてご紹介いただき、そののち、桑原さんからシステム構築についてお話ししていただきたいと思います。構成的研究と分析的研究小野 私は理学部物理学科の出身なのですが、旧工業技術院計量研究所でプロセス計測の御三家と呼ばれる温度、圧力、流量のうち、温度の計測と標準を研究してきました。10年前に産総研に組織変更したのですが、初代理事長の吉川先生が提唱された第2種基礎研究にとても感銘を受けました。私が計量や標準の仕事をする中で、成果が、そのまま研究論文として、学会でなかなか受け入れられないという経験をしました。私達の使命は精度の高い国家標準を作って、世の中にある一番高い精度の計測器を校正することです。校正業務は民間のビジネスにもつながっていきますので、そういうトレーサビリティ体系を社会の中につくるために、標準の精度を上げたり、より簡便に校正作業ができるようにしたり、コストパフォーマンスを考えたりしながらやっているのですが、このような成果が学会で研究論文として受け入れられません。技術のオリジナリティや新規性がどこにあるのか、と言われてしまいます。私達とすれば、日本の社会に一番フィットするようなトレーサビリティ体系のシナリオを考案します。例えばどういう事業者がどういう技能をもっていて、現にどういう装置をもっていて、何人くらい技術者がいるのかというところまで考えながらトレーサビリティ体系を設計します。ところがそういう話は研究論文になじまないとされてしまいます。国家標準に新しい要素技術を導入したときに、その部分だけを抜き出して研究論文にすることでしのいでいました。分野毎に多少違うかもしれませんけれども、日本の学会は「学」の会でして、アメリカのように「エンジニアズ」のソサエティではないものですから、学としての新しさを常に求めます。そのために、かえって社会との接点が見失われがちだと、これは健全でないと思っていました。社会的に総合科学技術会議の前議員であり、元日立製作所副会長で現日立マクセル名誉相談役の桑原洋氏のもとを、本誌の小野編集長と赤松編集幹事が訪問しました。桑原氏は前号で対談を行った科学技術振興機構(JST)木村英紀上席フェローが主宰したJSTのシステム科学技術委員会の委員でもあり、これまでの多くのシステム開発の実績をもとに、同委員会での提言作りを主導してこられました。そこでシステムと構成学をキーワードとして座談会を行いました。桑原 洋小野 晃赤松 幹之株式会社日立製作所名誉顧問、日立マクセル株式会社名誉相談役産総研副理事長(シンセシオロジー編集委員長)産総研(シンセシオロジー編集幹事)座談会出席者シンセシオロジー編集委員会

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