Vol.4 No.4 2011
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シンセシオロジー 研究論文−222−Synthesiology Vol.4 No.4 pp.222-229(Nov. 2011)1 はじめにビタミンD3(VD3)は脂溶性ビタミンの一種であり、人間の体内においてさまざまな生理機能を担う極めて重要な物質である[1]。人間はVD3のほとんどを食物から摂取し、摂取されたVD3は肝臓および腎臓において活性型VD3へと変換される。この活性型VD3はステロイド炭素骨格の25位が水酸化された25−ヒドロキシVD3(25(OH)VD3)、さらに1α位が水酸化された1α,25−ジヒドロキシビタミンD3(1α,25(OH)2VD3)であり、人の体内においてカルシウムやリン酸の恒常性維持、細胞の増殖・分化、免疫調節等に深く関与する。遺伝的もしくは環境的要因による活性型VD3の欠乏は、骨粗鬆症・くる病・乾癬・副甲状腺機能亢進症等の病気を引き起こすことが知られており、実際にこれらの病気の治療薬として活性型VD3が使用されている[1]。現在、主に薬剤として使用されている1α,25(OH)2VD3は有機化学合成の手法によって製造されており、コレステロールを出発物質として約20の反応ステップを経て合成することが可能であるが(図1A)、その収率はわずか1 %程度にとどまる[2]。この様な生産効率でも事業化されているのは、活性型VD3が極微量の投与(0.5〜数µg/日以下)でその薬理効果を示すからであり、その価格はとても高価である(一般試薬として販売されているVD3の値段は1 mg当たり約7円であるのに対し、1α,25(OH)2VD3は1 mg当たり約13万円となる(S社カタログより))。このようなファインケミカルを大量に生産するためには、上記化学合成方法では低い反応効率のため精製方法が複雑となり、薬剤として使用するための高純度精製品を製造するためには高いコストを支払わなくてはならない。また、化学合成法ではステロイド骨格に対する部位選択的水酸化反応を行うことが困難であるため、薬効を示す可能性のある多様な活性型VD3誘導体を製造するには不向きな手法でもある。安武 義晃、田村 具博* 生体触媒を用いた物質変換プロセスは、一般に反応特異性が高く、効率的な物質生産を行う上で極めて重要な技術である。加えて、生体触媒は有害物質の排出が少なく、環境汚染のリスクが少なく、生産過程におけるエネルギー消費量が少ないという利点がある。この論文では、放線菌ロドコッカスエリスロポリス細胞を用いた生体触媒変換系による活性型ビタミンD3の生産に関して記述する。この微生物変換の触媒反応を担う酵素の性能向上は、進化工学および立体構造を基にした手法の組み合わせにより達成した。これにより、活性型ビタミンD3の実生産効率を高めることに成功した。さらに、抗菌物質であるナイシンを用いて細胞を処理することにより、ビタミンD3の細胞膜透過効率を飛躍的に向上させることに成功し、新たなビタミンD3水酸化反応プロセスの基盤開発に成功した。微生物変換による活性型ビタミンD3の効率的生産− 分子の改良から細胞膜改変までの包括的アプローチ −Yoshiaki Yasutake and Tomohiro Tamura*Efficient production of active form of vitamin D3 by microbial conversion- Comprehensive approach from the molecular to the cellular level -Conversion processes of organic compounds using biocatalyst generally have high regio- and stereo-selectivity, and are becoming increasingly important for efficient production of chemicals. In addition, biocatalysis is less hazardous, less polluting and less energy-consuming than the conventional chemical method. We report the highly efficient bioconversion system using actinomycete Rhodococcus erythropolis to produce active form of vitamin D3 currently used as a pharmaceutical. The improvement of performance of the enzyme used for the bioconversion has been achieved by the combination of evolutionary engineering and structure-based methods. Accordingly, the practical production efficiency of active form of vitamin D3 has been substantially increased. In addition, we have succeeded in significant improvement of cellular permeability of vitamin D3 by using nisin-treated cells, and have developed a new platform for vitamin D3 hydroxylation process.キーワード:シトクロムP450、ビタミンD3、微生物変換、ナイシン、構造生物学、タンパク質工学Keywords:Cytochrome P450, vitamin D3, bioconversion, nisin, structural biology, protein engineering産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 〒062-8517 札幌市豊平区月寒東2条17-2-1Bioproduction Research Institute, AIST 2-17-2-1 Tsukisamu-Higashi, Toyohira, Sapporo 062-8517, Japan *E-mail: Original manuscript received September 7, 2011, Revisions received October 31, 2011, Accepted November 7, 2011
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