Vol.4 No.4 2011
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研究論文:圧力計測の信頼性向上と国際相互承認(小畠ほか)−221−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)は、諸外国でも同じような動きがあるのでしょうか、あるいは日本独自の取り組みなのでしょうか。回答(小畠 時彦)この論文では、圧力の国家標準の設定・管理、国家標準の国際比較、国内標準供給にデジタル圧力計を組み込んだ事例を述べました。それぞれについて、状況を説明します。はじめに、圧力の国家標準の設定・管理に用いられる、重錘形圧力天びんの比較測定におけるデジタル圧力計の利用についてですが、6.1節で述べた第一の校正方法であるデジタル差圧計を利用した方法は、特に気体圧力の校正において諸外国でも利用が進んでいます。しかし、第二の校正方法である置換法については、産総研が独自に開発してきた要素技術もあり、低圧から1 GPaまでの広い圧力範囲でこの方法を校正に適用しているのは、現在、産総研だけです。産総研で高度化してきたこれら二つの方法は、伝統的な方法による校正結果とも十分に整合することがすでに確認されていて、校正の自動化にも適しています。実際に国内校正事業者でも導入が進んでいて、今後、海外も含めて広く利用されていくと考えられます。次に、国家標準の国際比較におけるデジタル圧力計の利用についてですが、こちらについても、近年その利用が拡がっています。特に、通常、重錘形圧力天びんでは発生できない1 kPa以下の低圧力範囲においては、仲介器に複数の高精度デジタル圧力計を使用することが通例になっております。また、太平洋・アジア、アメリカ、アフリカのような広い地域での輸送が必要な国際比較では、6.2節で述べたように、大型で重量のある重錘形圧力天びん等よりも小型、軽量なデジタル圧力計を仲介器として利用した方が、輸送上大きなメリットがあります。国内標準供給におけるデジタル圧力計の組み込み事例として示した遠隔校正については、世界において、いくつか類似の技術開発が報告されていますが、現在、圧力計の遠隔校正サービスとして確立されているのは、産総研における校正サービスだけです。この遠隔校正技術に関しては、外国の国家計量標準機関も興味を示しており、7.1節で述べた、校正コストの低減および校正事業者の認定のための枠組み構築のような課題が解決すれば、国内だけでなく諸外国においてもその利用の拡大が期待できます。議論6 圧力以外の量における遠隔校正の開発状況質問(小野 晃)この研究で述べられたことは、仲介器の性能向上が、標準体系全体に大きな影響を与えた例と思います。圧力以外の量においてもこのような事例はあるのでしょうか。また6.3節で述べられた遠隔校正に関するNEDOプロジェクトでは、圧力以外の他の量はどのようなアプローチをとったのか、簡単に紹介していただければありがたいです。回答(小畠 時彦)近年、さまざまな量に対して、仲介器(仲介標準器)の性能向上のための取り組みが進められており、それぞれの標準体系において、仲介器の与える影響が増大しています。圧力以外の量において、仲介器の性能向上が、その標準体系に大きな影響を与えた一例として、このシンセシオロジーのバックナンバーの論文[Vol.3 No.1 pp.1-15 (Mar. 2010)]に掲載されている温度の計測における例が挙げられます。その論文において、新井らは、高温度の標準体系を構築し、その計測の信頼性を確保するために、新たに開発した熱電対を仲介器として有効に利用しています。NEDOのe-traceプロジェクトでは、各種計量標準の供給を効率的に行うため遠隔校正技術の開発を行いました。e-traceプロジェクトにおいて研究対象とした各種計量標準は、その形態により大きく二つに分類されます。一つはGPS(全地球測位システム)や光ファイバ網を利用して遠隔校正を行う標準、もう一つは輸送可能な仲介器を利用する標準です。前者に分類されるのは時間(周波数)標準、長さ標準(波長、光ファイバ応用)、電気標準(直流電圧)等、後者に分類されるのは、電気標準(交流電圧、低周波インピーダンス)、放射能標準、三次元測定機標準、振動・加速度標準、圧力標準、温度標準等となります。前者の典型的な例となる時間(周波数)標準では、GPS衛星を仲介とする方式により周波数の遠隔校正技術を開発しています。また、後者では、基本的には、6.3節で述べた圧力標準の場合と同様に、仲介器を依頼者の指定場所に輸送しインターネット等を活用して遠隔校正を行う技術を開発しています。

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