Vol.4 No.4 2011
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研究論文:圧力計測の信頼性向上と国際相互承認(小畠ほか)−220−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構研究開発推進部主任研究員。圧力標準、圧力計測の研究に従事。この論文では、研究統括、圧力全般に関する研究開発・校正業務、原稿執筆を担当した。小島 桃子(こじま ももこ)2003年東京工業大学大学院総合理工学研究科創造エネルギー専攻博士課程修了。博士(理学)。同年(独)産業技術総合研究所入所。同所計測標準研究部門力学計測科圧力真空標準研究室研究員として現在に至る。圧力標準、圧力計測の研究に従事。この論文では、主に気体圧力全般に関する研究開発・校正業務を担当した。梶川 宏明(かじかわ ひろあき)2006年京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻単位認定退学。同年(独)産業技術総合研究所入所。同所計測標準研究部門力学計測科圧力真空標準研究室研究員として現在に至る。博士(理学)。圧力標準、圧力計測の研究に従事。この論文では、主に液体圧力全般に関する研究開発・校正業務を担当した。査読者との議論議論1 全般コメント(小野 晃:産業技術総合研究所)この論文は、近年高精度化した工業用デジタル圧力計を国家標準体系にうまく組み込むことにより、産業現場での圧力計測の信頼性を向上させ、また圧力計測に関する国際的な相互承認を促進した優れた研究と思います。また圧力の標準体系全般を俯瞰的に見た上で、要素技術を特定し、それらを適切に統合して新しい圧力標準体系を構成していった過程が記されており、シンセシオロジー誌の論文としてふさわしいと思います。議論2 デジタル圧力計の経時変化の原因質問(小野 晃)図7に国際比較に用いたデジタル圧力計の校正値の経時変化が出ています。個々の圧力計ごとに経時変化の程度が異なるので難しいかもしれませんが、経時変化の原因が何か、およその推定はできているのでしょうか。回答(小畠 時彦)圧力計の校正値の経時変化の程度は、圧力計の種類、使用する圧力範囲、使用方法によっても異なります。一般的には、圧力計の校正値の経時変化は高圧用の圧力計で大きくなり、低圧用の圧力計では小さくなり、はっきりとした経時変化が見られないこともあります。また、図7の例にも示したように、一つの圧力計でもその経時変化の量が印加圧力の関数となる場合があります。したがって、一概には扱えませんが、校正値が経時変化する一つの要因として挙げられるのは、その受圧部の塑性変形の影響です。受圧部が完全な弾性変形をするのであれば、印加された圧力の大きさに応じて変形し、圧力をゼロに戻せば元の形状に戻ります。しかし、実際の圧力計においては圧力を印加している間に、受圧部がとてもわずかな量ではありますが塑性変形を起こすことがあります。この場合、圧力をゼロに戻しても完全に元の形状には戻りません。圧力ゼロから再度同じ圧力まで加圧する手順を繰り返すと、受圧部は同じ圧力に対しても次第に大きい変形を示すようになります。図7の例においても、6台の圧力計の校正値はすべて、時間と共に、同じ印加圧力に対して受圧部の変形が大きくなる方向に変化しています。おそらく、これら校正値の経時変化は、上述した塑性変形の影響を含んでいると考えられます。もっともこれらの変化量は、通常メーカーが主張している仕様精度に比べてとても小さいので、一般的な使用において問題になることは、ほとんどありません。しかし、国際比較では最高レベルの測定精度が必要となるため、その変化の補正が必要となります。議論3 これまでの方法とこの方法の定量的比較質問(濱 純:産業技術総合研究所エネルギー技術研究部門)高精度デジタル圧力計を仲介器として用いる校正技術は、製品開発、研究開発においてデータの信頼性を担保するよりどころとして、現場での圧力校正の負担軽減に大いに寄与していると思います。その現場校正の簡便さ、効率化、低コスト化等、これまでの方法との比較で具体的に日数や費用等の校正の軽減の実例があれば、ご教示ください。回答(小畠 時彦)効率性を示す実例としては、デジタル圧力計を校正対象とした場合、持ち込み校正では、被校正器の移送も含めて通常1~2週間程度の校正期間が必要となりますが、遠隔校正では、国内で実施した各種実証試験において、多くの場合に2日で校正を実施することができました。また、遠隔校正では校正担当者の拘束時間が短縮できますので、必要な人件費も低減できます。しかし、現状、遠隔校正の校正コストは持ち込み校正と比較して、十分に抑えられてはいません。遠隔校正に用いている多機能、高性能な仲介器のコストが主な原因です。今後、遠隔校正を普及させるためには、必要な不確かさに応じて機能を絞り込む等して、仲介器のコストを下げていく努力が必要であると考えています。議論4 デジタル圧力計の仲介器を活用できる地域質問(濱 純)デジタル圧力計を活用した簡便、迅速、安価な圧力校正・標準供給方法の開発のより具体的な取り組みについて、開示可能範囲でご教示ください。特に、産業現場遠隔校正手法の進展は一つの重要なキーワードと思いますが、そのカバーする地域は国内外どこまでをイメージしていますか。逆に、デジタル圧力計の不確かさの主な要因から、地域が制約されるのかもしれませんが。回答(小畠 時彦)圧力の遠隔校正については、具体的な開発内容を6.3節に追記しました。今後、整備している国家圧力標準の値を広く、円滑に産業現場に供給することが、より重要になると考えています。将来的には、圧力計測の信頼性を一段と向上させるために、産業現場で使用されている圧力計の表示値の信頼性を、間欠的に行われる校正の結果だけから保証するのではなく、通常の使用時も含め時間的に連続にリアルタイムで保証する必要があると考えています。また、遠隔校正がカバーする地域についてですが、基本的には仲介器を安全に輸送でき、安定に設置可能で、インターネット等の情報通信網が利用できる場所であれば、国内外問わず特段の制約はないと考えています。ただし、仲介器の輸送に時間を要するような地域では、遠隔校正のメリットである迅速な校正を行うことができません。また、ご指摘のとおり、遠隔校正では仲介器にデジタル圧力計を使用していますので、校正を実施する場所の環境に応じて5章で示した不確かさ要因を考慮しなければなりません。例えば、校正場所の空調の制御が良くない場合には、周囲温度の変化による影響で校正の不確かさも大きくなります。議論5 デジタル圧力計の活用に関する諸外国の動向質問(小野 晃)高精度のデジタル圧力計を仲介器として標準体系に組み込むこと

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