Vol.4 No.4 2011
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研究論文:圧力計測の信頼性向上と国際相互承認(小畠ほか)−218−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)び校正方法に関する技術や知見を産業界や圧力計のユーザーが広く利用できるように、産総研は各種工業規格[11]-[13]および各種技術基準の整備に技術専門家として協力してきた。特に、管理用のデジタル圧力計の特性試験方法および校正方法についてはJIS B 7547[12]に規定した。このように、デジタル圧力計を活用した校正方法および校正技術は、産総研の校正サービス、国内標準体系、各種規格および技術基準を通して、産業現場での圧力計測の信頼性向上に貢献している。この論文で述べた開発では、比較的に高精度なデジタル圧力計の活用が中心であった。今後、圧力計測の信頼性確保をより効率的に低コストで行うためには、一般の工業用デジタル圧力計に対しても、開発した特性評価および校正のための手法を適用し、標準体系へ広く組み込んでいくことが必要であると考えている。遠隔校正は、依頼者の負担軽減を図り、標準の供給を速く安く正確に行うための技術開発であった。当該研究開発により、圧力遠隔校正に必要とされる基礎技術、すなわち産業現場において信頼性を維持しながら短時間で校正を行うための技術は開発された。しかし、遠隔校正の仲介器の製造コストが十分に抑えられていないため、現状では、その校正コストは持ち込み校正に対して十分に低価格とはなっておらず、利用拡大の障害の一因となっている。また、遠隔校正を行う校正事業者を認定するための枠組みをつくることも課題となっている。将来的には、校正事業者から産業現場の圧力計への校正において、関連技術の利用が進むよう整備を進めたい。7.2 圧力計測の国際相互承認産総研は、圧力の国家標準の国際的な同等性を確認するために、国際度量衡委員会 (CIPM) の質量関連量諮問委員会 (CCM)、および、アジア地域の計量組織であるアジア太平洋計量計画 (APMP)の質量関連量技術委員会が行う圧力の国家標準の国際比較に参加してきた[19]-[23][25]。これまでに参加した国際比較を、実施中のものを含め表3に示す。APMPの国際比較の大半において産総研は幹事所として国際比較を主催し、その実施スケジュールの作成、測定手順書の作成、仲介器の準備と特性評価、比較結果のとりまとめ、最終報告書の作成等を行った[19]-[22]。また、産総研が主催した国際比較においては、6.2節で述べたように積極的にデジタル圧力計を仲介器に活用し、効率化を図った。多くの圧力範囲の国際比較の結果において産総研の国家標準の国際同等性が確認されている[19]-[23][25]。今後実施される国際比較にも積極的に参加し、我が国の国家標準の国際同等性を継続的に確保していく予定である。産総研が幹事所として主催した国際比較の結果は、2.2節で述べたように、CIPMの国際相互承認協定の附属書Bに登録されている。また、参加した国家計量標準機関が国際比較の結果に基づいてそれぞれ表明した校正・測定能力が、国際的に承認されたのち、相互承認協定の附属書Cに登録されている。このように、国際比較に係わる活動に積極的に参加することにより、我が国はもとよりアジア地域を中心とする国々の校正・測定能力のスムーズな登録を支援することができたと考えている。デジタル圧力計を活用することにより、仲介器の小型化、軽量化が可能となり輸送の障害を低減することができた。また、各仲介器には冗長化のため複数台のデジタル圧力計を用い、それぞれの長期安定性を評価することにより、十分な比較精度を引き出せた。さらに、複数の仲介器を準備し、同時に回送することにより、国際比較の短期間での実施が可能となった。このように、デジタル圧力計を活用した仲介器を国際比較に利用することで、国際相互承認に必要となる国家標準の国際同等性を効率的に確認することができた。8 おわりにデジタル圧力計を活用した産業現場の圧力計測の信頼性確保と国際相互承認のための国家標準の国際同等性の確認を目指し、研究開発を進めてきた。産業現場の圧力標準器としては、伝統的には、長期安定性に優れた重錘形圧力天びんや液柱形圧力計等が用いられてきたが、近年ではデジタル圧力計およびそれを搭載した各種圧力発生器の利用も増えている。この論文で述べてきたデジタル圧力計の特性評価および校正のための技術は、圧力標準体系の中で有効に用いられ、デジタル圧力計を標準器や仲介器として利用した効率的な標準供給体系の実用化が進んだ。さらに、JCSSの普及により、登録された圧力校正事業者を通して、圧力の国家標準にトレーサブルなデジタル圧力計の校正が、広い圧力範囲で、一般ユーザーでも利用可能となり、現場圧力計測の信頼性向上に資している。*産総研が幹事所の国際比較表3 産総研が参加してきた圧力国際比較(2001年以降)2007-2010100 MPa - 1000 MPaAPMP.M.P-S8*2010-50 MPa - 500 MPaAPMP.M.P-K13*2008-201150 MPa - 500 MPaCCM.P-K13200140 MPa - 200 MPaAPMP.M.P-K7.TRI*2007-200910 MPa - 100 MPaAPMP.M.P-K7.1*2002-200510 MPa - 100 MPa液体ゲージ圧力APMP.M.P-K7*2003-200510 MPa - 100 MPa液体ゲージ圧力液体ゲージ圧力液体ゲージ圧力液体ゲージ圧力液体ゲージ圧力液体ゲージ圧力CCM.P-K72005-20061 Pa - 5 kPa気体差圧APMP.M.P-K5*2009-10 kPa - 110 kPa気体絶対圧力APMP.M.P-K91998-20010.4 MPa - 4 MPa気体ゲージ圧力APMP.M.P-K1.c1998-200120 kPa - 105 kPa気体ゲージ圧力APMP.M.P-K6実施年圧力範囲種類識別記号
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