Vol.4 No.4 2011
28/62

研究論文:圧力計測の信頼性向上と国際相互承認(小畠ほか)−217−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)2×10−6 以下と十分に小さかった。この結果から、遠隔校正でも持ち込み校正と同等な結果が得られること、また、仲介器、校正されたデジタル圧力計ともに、環境変化および輸送に対する安定性も含めて、十分な安定性が得られることを示した。今回開発した圧力の遠隔校正技術は、実証実験の結果からその信頼性が確認され、現在、産総研の校正サービスとして確立されている。その遠隔校正サービスにおける現状の不確かさ(信頼の水準約95 %)は、気体差圧10 Pa から 10 kPaの圧力範囲において100 mPa または0.01 %以下、液体圧力 10 MPaから100 MPaにおいて0.01 %以下である。7 社会・産業界への波及効果と今後の課題7.1 産業現場での圧力計測の信頼性向上現在、産総研では、1 Paから1 GPaの9桁に及ぶ圧力範囲で国家標準を整備し、社会や産業界からのさまざまな校正依頼に応えている。圧力の国家標準となる一群の圧力標準器の整備・高度化には、6.1節で述べたデジタル圧力計の活用を進めている。現在、デジタル圧力計を用いて複数の重錘形圧力天びんの全自動校正技術を開発中である。これにより、群管理している国家標準器の整備・管理のさらなる高度化や効率化が期待できる。産総研で現在運用している校正サービスの主要部分については、すでに外国の主要な国立計量標準機関から招いた専門研究者を審査員とした技術審査、および試験・校正機関への一般的要求事項である国際規格 ISO/IEC 17025 の適合審査を終了し、その校正・測定能力は世界各国から承認されている。産業界の計測現場および国内ユーザーへの圧力の標準供給は、計量法の校正事業者登録制度(Japan Calibration Service System: JCSS)により登録された圧力の校正事業者を中心に行われている。図11 にその体系の概略を示す。気体圧力と液体圧力の主要な圧力範囲で、産総研がJCSS校正事業者の重錘形圧力天びんを校正することにより、国家標準の値が供給される。JCSS校正事業者は産総研の国家標準にトレーサブルな自己の標準器をもつとともに、共通の要求事項、適用指針により品質システムを構築し、認定機関から審査を受ける。JCSS校正事業者は自己の標準器に基づいて、種々の産業用圧力計をJCSS制度のもとで校正する。産総研ではこれらJCSSの圧力分野における技術基準の作成、さらに、登録審査にも技術的側面から協力・支援を行っている。現在、登録されている校正事業者とその最高測定能力の一覧は、(独)製品評価技術基盤機構のウェブサイト(http://www.nite.go.jp/)の適合性認定分野、JCSSの項に記載されている。2011年9月現在、JCSSの圧力区分に登録されている校正事業者は全部で13事業者である。また、全校正事業者の発行するJCSS校正証明書発行件数は、過去3年間増加し続けており、2010年度においては約2,300件であった。今後も発行件数のさらなる増加が見込まれており、国家標準にトレーサブルな圧力計測の必要性が我が国の社会・産業界において増大してきていることがわかる。なお、校正件数の多い圧力計の種類は、デジタル圧力計、機械式圧力計である。前述したとおり、これらの圧力計は測定値が重力加速度に直接影響されないので、その補正の必要がなく、簡便にトレーサビリティを確保できるメリットがある。また、通常、高圧力域において標準器となる重錘形圧力天びんは大がかりなものとなり、その設備の導入や維持は校正事業者やユーザーにとって大きな負担となる。しかし、デジタル圧力計を標準器とすることで、その負担を低減することができる。この論文では詳しくは述べなかったが、圧力差の標準である差圧標準に関しては近年整備が進み、JCSS校正された2台の重錘形圧力天びんを用いた方法[8][15]により、JCSS校正事業者が自ら差圧標準を設定することが可能な仕組みとした。しかし、重錘形圧力天びんを用いる方法は高精度ではあるが、日常的な校正業務に使うには、あまり簡便な方法ではない。そこで、差圧標準をより効率的に広く普及させるため、デジタル差圧計を利用した標準供給体系を開発した。2008年より、JCSS校正事業者によるデジタル差圧計の校正も開始され、差圧標準を効率良く供給することが可能となった。研究開発により得られたデジタル圧力計の特性評価およ図11 圧力の国内標準供給体系NMIJ,AIST校正JCSS校正JCSS校正JCSS校正jcss注2)校正重錘形圧力天びん、液柱形圧力計、デジタル圧力計、機械式圧力計現場における一般圧力計測機器ユーザー重錘形圧力天びん、液柱形圧力計、デジタル圧力計、機械式圧力計JCSS校正された圧力標準器 JCSS校正事業者重錘形圧力天びん国家標準により校正された圧力標準器 JCSS校正事業者光波干渉式標準圧力計 (液柱形圧力計)ピストン式一次圧力標準器群 (重錘形圧力天びん)圧力の国家標準 産業技術総合研究所

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です