Vol.4 No.4 2011
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研究論文:圧力計測の信頼性向上と国際相互承認(小畠ほか)−215−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)この圧力範囲において、これまでの国際比較で使用されていた重錘形圧力天びんを仲介器とする場合、その安定性は相対的に1×10−5程度と期待される。したがって、上記のデジタル圧力計の校正値を補正なしに使用する場合、国際比較の実施に必要な安定性を得ることはできない。しかし、詳細な評価により、各圧力における変化は経過日数の一次関数になっていることがわかった。これらを補正し、また仲介器を構成する2台のデジタル圧力計から得られる校正値の平均値を使用することで、最終的には、各仲介器の安定性は測定全期間を通して、5×10−6 以下にすることができた[19]。このように、デジタル圧力計の仲介器としての特性を詳細に把握し、適切に補正することにより、国際比較に使えるだけの十分な比較精度を引き出せた。上述の国際比較を含む二つの国際比較(CCM.P-K7[25]、APMP.M.P-K7[19])における各参加機関の100 MPaでの校正値の結果を図8に示す。横軸に参加機関の略称と国名、縦軸に各機関の校正値の国際比較参照値からの相対偏差を示す。参照値は、参加機関の校正値の一種の平均値として計算で得られたものである。各国のデータごとに付いているバーの長さは各参加機関が自ら表明した校正値の不確かさ (信頼の水準約95 %) を表している。また、同じ国際比較から得られた結果は、同じ種類のマーカー(黒丸あるいは白丸)で示した。図8から、この圧力における各国の圧力の国家標準の同等性を知ることができる。日本の国家標準は、参照値からの偏差がほとんどゼロで、不確かさも主要国と同程度であった。したがって、現在、当該圧力範囲で設定・維持・供給している日本の圧力の国家標準が、優れた国際同等性を有していることを確認できた。その他の国際比較においてもデジタル圧力計を仲介器として利用することが進んでいる。気体差圧の国際比較において、シリコンレゾナントセンサを用いたデジタル圧力計を使用し、同様に優れた比較精度を引き出せた[20]。このように、さまざまな圧力範囲の国際比較において、デジタル圧力計の仲介器としての有効性を確認した。6.3 遠隔校正による標準供給これまで、産業現場で使われる圧力計の校正では、校正依頼者が圧力計を、使用している場所から校正機関まで持ち込む校正、いわゆる“持ち込み校正”が行われてきた。しかし、より広範な産業分野に圧力標準が使われていくためには、より効率的な新たな標準供給の形態も検討していく必要がある。これまでNEDOプロジェクト「計量器校正情報システム(e-trace)研究開発事業」で、デジタル圧力計とインターネット等の情報通信技術を活用し、圧力標準の供給を速く、安く、正確に行うための圧力遠隔校正技術の開発を行った[26][27]。これは、圧力計を産業現場から遠くにある校正機関に持ち込まずに、産業現場で校正できるようにするための技術開発で、校正依頼者の負担軽減を図る新しい圧力標準の供給形態である。現在、校正機関が、依頼者からの校正依頼を受けて校正を行う場合、その校正実施形態には大きく分けて、持ち込み校正、出張校正、遠隔校正の三つがある。各校正実施形態の主要な特徴を表2に示す。伝統的に行われている持ち込み校正では、依頼者が圧力計を校正機関に持ち込んで校正が行われる。この場合標準器には校正機関の標準器を使用し、作業は校正機関の要員が行う。これに対して、依頼者の圧力計の持ち運びが現実的に難しい場合には、その圧力計が据え付けられている現場で校正が行われる。これまでに行われてきた校正機関以外の場所で行われる校正の形態として、出張校正(現地校正)がある。この場合、輸送可能な標準器(仲介器)を校正機関から現場まで輸送する。校正に必要な作業は、持ち込み校正と同様に、校正機関の要員が行う。図7 液体圧力の国際比較に使用した6台のデジタル圧力計の校正値の1日当たりの変化量 図8 圧力100 MPaにおける二つの国際比較の結果(●:CCM.P-K7、○:APMP.M.P-K7)圧力/MPa100806040200-100102030405060654321校正値の変化量/(Pa/day)PTB(ドイツ)IMGC-CNR(イタリア)BNM-LNE(フランス)NPL(イギリス)CENAM(メキシコ)NIST(アメリカ)INMS/NRC(カナダ)NMIJ/AIST(日本)NPLI(インド)CSIR-NML(南アフリカ)NIS(エジプト)KRISS(韓国)SCL(香港)SPRING(シンガポール)NMIA(オーストラリア)VMI(ベトナム)NML SIRIM(マレーシア)KIM-LIPI(インドネシア)NSCL(シリア)NIMT(タイ)CMS/ITRI(台湾)NIM(中国)国際比較参照値からの相対偏差 /10-6-100-80-60-40-20020406080100

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