Vol.4 No.4 2011
25/62
研究論文:圧力計測の信頼性向上と国際相互承認(小畠ほか)−214−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)荷し調整する。しかし、この方法は操作が複雑で、校正結果がシステムの構成や校正作業者の技術力に大きく依存する。そこで、産総研では、デジタル圧力計の高分解能性と連続測定機能を利用した二つの校正方法を選択し、高度化した。結果的にはいずれの方法でも、重錘形圧力天びんと使用するデジタル圧力計の性能が十分に良ければ、相対的に10−6 以下のオーダーで平衡状態の決定が可能であることを明らかにした。現在、産総研が維持している国家標準器をはじめとする多数の重錘形圧力天びんの校正と管理は、すべてこれらのデジタル圧力計を用いた方法により行っており、これまでより大幅に高度化、効率化された。第一の校正方法は、2台の重錘形圧力天びんの発生圧力差を高分解能のデジタル差圧計で直接測定する方法である。この方法においては、差圧計により測定される2台の圧力天びんの圧力差がゼロとなるまで負荷する微小分銅を調整する。第二の校正方法は、デジタル圧力計を比較器として使う置換法である[17][18]。図5に示すように、この校正方法では、2台の重錘形圧力天びんの発生圧力を定積弁の切り替えにより交互にデジタル圧力計で測定する。2台の圧力天びんの発生圧力にある程度の差があっても、その差を正確に求めて補正できるという利点がある。さらに、この方法は、3台以上の圧力天びんに同時に適用することも可能である。第二の校正方法では、デジタル圧力計の高分解能性と連続測定機能に加えて、短期安定性を活用した。6.2 国家標準の国際比較通常、圧力の国家標準の国際比較では、仲介器と呼ばれる輸送可能な計測器を各国に順次回送し、その計測器に各国の参加機関が自己の国家標準に基づいて校正値をつける。各国が付けた校正値を相互に比較することにより、各国の圧力の国家標準値の違いを明らかにすることができる。最高精度の測定が必要な国際比較には、伝統的に標準器と同等な性能をもつ重錘形圧力天びんを仲介器として用いることが多かった。そのような状況の中で産総研は、小型化・軽量化・低コスト化が可能で、取り扱いやすいデジタル圧力計に着目し、世界に先駆けて、高精度タイプの工業用デジタル圧力計を利用した国際比較用の仲介器の開発を進めてきた。そして、開発した仲介器を用いて、実際に、複数の国際比較を主催した[19]-[23]。仲介器には複数台のデジタル圧力計を同時に用い、冗長化により信頼性を向上させた。通常1年以上にわたる国際比較の実施期間を通して、デジタル圧力計の長期的な特性の変化を詳細に把握し、それを校正値の補正に用いた。この補正により、仲介器の長期安定性の不足を補って、十分な比較精度を確保することができた[19]-[22][24]。国際比較におけるデジタル圧力計の利用例として、圧力範囲が 10 MPaから 100 MPaの液体ゲージ圧力の国家標準の国際同等性を確認するために2002年から2004年に行った国際比較(APMP.M.P-K7[19])を紹介する。図6に、その国際比較で用いられた仲介器を示す。前述した水晶振動素子を感圧部に用いたフルスケールが100 MPaで分解能が0.1 kPaのデジタル圧力計を2台組にして仲介器とした。デジタル圧力計の利用により、輸送する仲介器の総重量は50 kg以下に抑えることができ、圧力天びんを使用した場合(通常200 kg超)よりも大幅に軽量化することができた。さらに同じ仕様の仲介器を3組準備し、それぞれ別々の回送ルートで同時に各参加機関に輸送することにより、国際比較に要する全測定期間を大幅に短縮させた。測定期間中定期的に、仲介器を構成する合計6台のデジタル圧力計を幹事所である産総研に戻し、日本の国家標準器を用いて、これらのデジタル圧力計を再校正することで、仲介器としての安定性の評価を行った。図7に各デジタル圧力計の校正値の1日当たりの変化量を、測定圧力の関数として評価した結果を示す。同図に示されているように、最大測定圧力100 MPaでの変化量は、圧力計によっては1日当たり50 Paを超えている。国際比較の全測定期間は約400日であったので、最終的には、測定圧力値が最大圧力において20 kPa変化すると推定される。これは測定値に対して相対的に2×10−4の変化に相当する。一方、図5 デジタル圧力計を比較器として用いた置換法による校正 図6 デジタル圧力計を用いた液体圧力の国際比較用仲介器(2台ずつ、計3組)の写真 標準器被校正器デジタル圧力計定積弁圧力発生器定積弁
元のページ