Vol.4 No.4 2011
24/62

研究論文:圧力計測の信頼性向上と国際相互承認(小畠ほか)−213−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)器としての活用を進めながら、要素技術をさらに統合させ、計量標準体系のいくつかの局面、すなわち圧力の国家標準の設定・管理、国家標準の国際比較、国内標準供給に組み込む。国家標準に関して、産総研では現在、1 Paから1 GPaまでの国家標準を多数の標準器を用いて設定・管理しているが、操作に手間のかかる標準器の高精度校正を、デジタル圧力計を有効利用して効率的に行えるよう技術開発を進める。国家標準の国際比較に関しては、主要な圧力範囲において、デジタル圧力計を活用して、国際比較を効率良く実施する。国内標準供給に関しては、校正依頼者の負担がより小さい標準供給方法を開発する。また、デジタル圧力計を対象とした産総研の圧力校正サービスの拡充を行う。さらに、圧力標準を社会・産業界の各方面へ効率良く供給するための国内標準供給体制の高度化および各種関連技術基準の整備を目指す。最終的に、デジタル圧力計を利用した標準供給の効率化は、計測器メーカーで行われている工業用圧力計の開発と相乗的に、研究目標の一つである産業現場での圧力計測の信頼性向上を達成する。また、デジタル圧力計を利用した国際比較の実施は、もう一つの研究目標である圧力計測の国際相互承認に大きく貢献する。このような研究シナリオを設定した。以下、シナリオに沿って実施してきた研究開発の内容と結果について述べる。5 デジタル圧力計の特性評価信頼性を維持しながら、合理的で効率的な圧力の標準体系を構築するためには、デジタル圧力計の有効利用が鍵となる。そのため産総研では、圧力標準器を用いた各種デジタル圧力計の特性評価および校正方法の研究開発を行ってきた [15]-[17]。デジタル圧力計が表示する測定値の不確かさの主な要因としては、以下が挙げられる。a) 印加した圧力の不確かさb) 測定値のばらつきによる不確かさc) 履歴効果による不確かさd) 表示分解能または短期安定性による不確かさe) 周囲温度の変動に起因する不確かさ(温度特性)f) 設置の姿勢に起因する不確かさ(姿勢特性)g) 供給電源電圧変動による不確かさ h) 入出力関係の直線性に起因する不確かさ(線形性)i) ライン圧力による不確かさ(差圧計の場合)j) 長期安定性(経時変化)に起因する不確かさk) 周囲環境変化(相対湿度、大気圧、振動、衝撃等) に起因する不確かさデジタル圧力計を標準器として使用する場合には、上述した特性の評価を十分に行い、実際に使用する状況に応じて校正値への補正や不確かさ評価について考慮が必要である。また、圧力計を輸送する場合には、輸送時に圧力計が被る周囲環境の変化によっても特性が影響を受けるので、これらについても考慮が必要である。現在、広い圧力範囲において、優れた性能を有するさまざまなデジタル圧力計が利用可能であるが、当該研究において、特に重点的にその特性を評価してきた圧力計は、国内計測器メーカーが製造している感圧部にシリコンレゾナントセンサを用いた差圧計と、海外メーカーが製造している感圧部に水晶振動素子を用いた圧力計の2種類である。詳細な特性評価をした上で適切な補正を行い、定められた校正手法を用いて各デジタル圧力計を定期的に繰り返し校正し、安定性を評価した。その結果、使用方法を工夫することによってデジタル圧力計でも、既存の圧力標準器に匹敵する信頼性が得られることを明らかにした。各デジタル圧力計の安定性の評価データは、後述するデジタル圧力計の標準体系への組み込みにおける実例の中で示す。6 デジタル圧力計の標準体系への組み込み この章では、デジタル圧力計を圧力の標準体系に組み込んだ三つの事例を述べる。6.1 国家標準の設定と管理圧力の一次標準器として日本で国家標準器に位置づけられているのは、液柱形圧力計と重錘形圧力天びんである。一次標準器として用いるためには、各々の特性値を決定し、管理する必要がある。産総研で使用している圧力標準器の特性値は、質量、長さ、温度等の国家標準に対してトレーサブルになるように正確に測定され、管理される。産総研において、重錘形圧力天びんおよびそのピストン・シリンダは、圧力範囲ごとに複数台ずつ管理されている。それら多数の標準器を群管理することで、広い圧力範囲で国家標準を維持している。これら標準器の管理では、定期的に各標準器間での比較測定を実施し、相互の整合性を確認している。また、さまざまな組み合わせの比較測定の結果から、各標準器の発生圧力の長期安定性を評価している。圧力範囲にもよるが、一般的に、その長期安定性は相対的に年間10−6 のオーダーである。ここでは、民間校正機関が自己の標準器として用いる重錘形圧力天びんを、産総研の国家標準器である重錘形圧力天びんで校正するためにデジタル圧力計を利用した例を示す。産総研において重錘形圧力天びんを校正する場合、2台の圧力天びんを連通配管し、発生圧力を比較する。伝統的な校正では、2台の圧力天びんを同時に動作状態におき、両方のピストンの降下速度の変化を観測し、平衡状態が得られるまで、どちらかの圧力天びんに微小な分銅を負

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です