Vol.4 No.4 2011
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研究論文:圧力計測の信頼性向上と国際相互承認(小畠ほか)−212−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)械的な接触抵抗が大きく低減され、重錘とピストンにかかる重力が正確に圧力に変換される。液柱形圧力計は、測定圧力と釣り合うU字管内の液柱の密度とその高さから、圧力を求める計測器である。通常、U字管内の作動媒体としては、密度が正確に知られている水、または水銀を用いることが多い。我が国の圧力の国家標準の根幹としている光波干渉式標準圧力計は、水銀を作動媒体とした液柱形圧力計である[14]。諸外国の国家計量標準機関においても、同様の圧力計は、大気圧付近の国家標準器として用いられている。デジタル圧力計とは、圧力センサと、その出力をデジタル表示する装置またはデジタル信号を出力する装置を備えた圧力計のことである[12]。圧力センサの測定原理はさまざまであるが、ひずみゲージ等の抵抗変化、静電容量型センサの静電容量変化、水晶やシリコン振動子の周波数変化を検出する方法が典型的である。測定結果を連続的に、アナログ信号またはデジタル信号として外部出力できるものが多い。近年、技術の進歩が著しく、表示分解能が高く安定性に優れたデジタル圧力計が利用可能となってきている。機械式圧力計は、弾性素子の圧力による変形量を機械的に拡大して圧力を測定する計測器である。このうち、扁平な断面をもち、管端を閉じた曲がった管を弾性素子に用いた指示圧力計はブルドン管圧力計と呼ばれ、比較的に低コストのため、社会・産業の現場で広く用いられている[13]。表1に、4種類の圧力計の特徴・特性をまとめた。一次圧力計である重錘形圧力天びんと液柱形圧力計は、測定圧力の不確かさが小さく、長期安定性に優れ、信頼性が高い。一方で、これらの圧力計は、一般的にはその取り扱いが複雑で、重量が重く、コストも高い。また、正確に発生圧力を求めるためには、設置場所の重力加速度の値が必要となる。圧力範囲に関しては、重錘形圧力天びん、機械式圧力計、デジタル圧力計は広い圧力範囲で利用可能であるが、液柱形圧力計はこれらの圧力計と比較すると、圧力範囲が限定的である。二次圧力計であるデジタル圧力計と機械式圧力計は、重錘形圧力天びんや液柱形圧力計に比較して信頼性は劣るが、取り扱いは簡単であり、重量も軽く、コストも低い。したがって、複数の計測器をそろえて冗長化することによる信頼性向上も容易である。また、上に記した一次圧力計の発生圧力は重力加速度により変化するのに対して、デジタル圧力計と機械式圧力計の測定値は、直接は重力加速度に影響されない。一般的に、連続測定や測定結果の伝送が容易なデジタル圧力計は測定の自動化・システム化に適しており、操作性や効率性の向上に役立つ。私達は、デジタル圧力計の長所である小型・軽量の可搬性、簡単な操作性、自動化・システム化への高い適応性を活かせるよう開発を進めてきた。4 研究開発のシナリオ当該研究ではデジタル圧力計の活用により、産業現場の圧力計測の信頼性を向上し、国際相互承認に必要となる国家標準の同等性を確認することを目標に設定した。研究シナリオを図4に示す。当該研究の主要な要素技術は、デジタル圧力計の各種特性とその評価技術および校正技術である。デジタル圧力計の各種特性としては、その測定範囲、分解能、重量、サイズ、線形性、環境変化および輸送に対する安定性、短期・長期安定性等が挙げられるが、これらは計測器メーカーに大きく依存する。一方、デジタル圧力計の各種特性の評価や校正値の不確かさ評価は、国家標準器を保有して日常的に種々の圧力計を評価している産総研が得意とする技術である。研究目標を達成するために、上述した要素技術を統合する。はじめに、デジタル圧力計の特性評価方法および校正方法の開発を行い、デジタル圧力計の標準器としての性能を詳細に評価する。このためには特に、デジタル圧力計の環境変化および輸送に対する安定性や短期・長期安定性の評価技術が必要である。次に、デジタル圧力計の標準表1 各種圧力計の特徴図4 圧力計測の信頼性向上と国際相互承認のための研究シナリオ 研究の目標産総研要素技術の統合と構成計測器メーカー液柱形圧力計重錘形圧力天びん不確かさ評価重量、サイズ測定範囲、分解能デジタル圧力計工業用圧力計の開発要素技術の開発国際比較の実施標準供給の効率化一次圧力計二次圧力計産業現場での圧力計測の信頼性向上圧力計測の国際相互承認線形性環境変化及び輸送に対する安定性短期・長期安定性校正方法デジタル圧力計の標準器としての活用国家標準の整備機械式圧力計デジタル圧力計液柱形圧力計重錘形圧力天びん自動化・システム化圧力計の種類難小・軽・易1 GPa超二次易小・軽・易1 GPa超二次難大・重・難300 kPa一次難大・重・難1 GPa超一次サイズ・重量・操作性最大圧力計測器の種類
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