Vol.4 No.4 2011
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研究論文:圧力計測の信頼性向上と国際相互承認(小畠ほか)−211−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)産総研は、我が国の国家計量標準機関として、圧力の国家標準の設定と供給、国内の圧力計測のトレーサビリティ体系の整備を担っている。また、国際比較に積極的に参加し、その結果から、日本の圧力の国家標準の国際同等性を上記の基幹比較データベースにおいて示し、さらに、各国から承認された形で校正・測定能力を示すことで我が国の国益を確保する責任がある。このような背景の中で、私達は国家標準をより高度化して設定し、世界各国との間で国家標準の同等性を示すための活動に携わってきたが、その中で近年性能の向上が著しい工業用デジタル圧力計を活用することにした。2.3 技術的課題産総研が整備している圧力の国家標準[4][5]は、気体あるいは液体を媒体とする静水圧性が成り立つ静止流体に対するものである。一般的に圧力標準の媒体には、低圧側では気体を、高圧側では液体を用いる。なお、絶対圧力が小さい圧力は、同じ産総研で真空標準としても整備している[6]。2001年の産総研発足当時、複数台の圧力標準器を用いて、5 kPaから500 MPaの圧力範囲で国家標準を設定し、校正サービスを実施していた。しかし、科学・産業技術の進歩に伴い、2002年に実施した物理標準ニーズ調査では、圧力標準の種類の増加、圧力範囲の拡大、不確かさの低減等の高度化が産業の現場から要望された[7]。具体的には、空調管理、製薬、医療、半導体製造等に必要な10 kPa以下の差圧標準および低圧力標準への要望が多く、また、内燃機関の開発や材料・製造、機械加工等の分野で500 MPaを超える高圧力標準への要望もあった。そこで、産総研では新たな技術開発を行って、これらの国家標準を整備してきた[8]-[10]。現在、多くの圧力標準器を用いて、大気圧の約10万分の1の圧力(1 Pa)から約1万倍の圧力(1 GPa)までの圧力範囲をカバーしている。これらの国家標準器の発生圧力の整合性を確認するために、標準器同士の比較測定が必要となるが、多数の標準器を管理するため、その効率化、高度化も課題となっていた。また、圧力計測の現場では、校正対象機器の増加により、効率的でユーザー負担の少ない校正および標準供給の手法も望まれていた。前述したように、近年、国内外企業による新しい技術開発もあり、各種圧力センサを利用した工業用デジタル圧力計の信頼性が向上し、フルスケールに対して6桁以上の高分解能をもち、長期安定性に優れた高精度圧力計も利用可能となってきた。そこで産総研では、工業用デジタル圧力計のうち高精度のものを対象にして、圧力標準器の管理の効率化や高度化に用いることができるか、および、標準器として十分な要件を満たすかどうかに関して、その特性を実験的に調べることとした。3 種々の圧力計図2に、圧力計測の現場で利用されている各種圧力計の例を示す。他の計測器による校正をすることなしに、自分だけで物理量を絶対測定することができる計測器を一次計測器とよぶ。圧力に関する一次計測器(一次圧力計)としてはさまざまな装置が考案されてきているが、主なものには、重錘形圧力天びん[11]と液柱形圧力計がある。図3に、重錘形圧力天びんと液柱形圧力計の原理図を示す。一方、自分だけでは物理量を絶対測定できずに、その目盛り付けには一次計測器による校正を必要とする計測器を二次計測器とよぶ。圧力に関する二次計測器(二次圧力計)としては、デジタル圧力計[12]と機械式圧力計(ブルドン管圧力計[13])がある。重錘形圧力天びんは、圧力を高精度に発生可能な計測器である。測定の信頼性が高く、多くの国で圧力の国家標準として用いられている。産業現場においても標準器として広く用いられている。重錘形圧力天びんの基本的な構成要素はピストンとシリンダ、質量が既知のおもり(重錘)である。ピストン外面およびシリンダ内面は、真円度と円筒度が良好に保たれるよう精密に加工されている。通常、重錘形圧力天びんで圧力を発生する時には、ピストンと重錘によって下向きの重力が負荷されたピストンを、上向きの圧力により適正な位置に浮上させた後、ピストンと重錘を回転させる。そうすることにより、ピストンとシリンダ間の機図2 各種圧力計の例図3 重錘形圧力天びん(a)と液柱形圧力計(b)の原理図 液柱形圧力計機械式圧力計デジタル圧力計重錘形圧力天びん(b)(a)作動媒体U字管周囲圧力重力被測定圧力回転運動周囲圧力被測定圧力重力重錘ピストンシリンダ

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