Vol.4 No.4 2011
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研究論文:地質学から見た高レベル放射性廃棄物処分の安全性評価(山元)−208−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)研究がどのような位置付けにあるかを示していただけると読者にとって分かり易いと思います。回答(山元 孝広)コメントにしたがい、この研究と地層処分における閉鎖後の安全確保の関係を示す図1を追加しました。地層処分事業の進め方、すなわち最終処分地選定手順は特廃法により規定されており、処分地の選定自体は実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)が実施しますが、安全規制の中身は確定していません。この研究の最終的な目標は、処分地選定調査における調査・評価項目の選定と各項目の判断指標を確立することです。例えばこの論文に示したように、火山活動が起き影響を被る場所や将来新たに火山活動が起こる恐れのある場所は処分地に相応しくありません。そのことをどのようにして評価法として確立するのかの方法論がこの研究の主題です。議論4 将来世代に対する現世代の責任質問(小野 晃)この論文では、放射性廃棄物の処分の安全性を将来数十万年から百万年の時間範囲で評価する必要性があり、その根拠は、高レベル放射性廃棄物の放射能レベルが自然に存在する放射性物質のレベルまで減衰することと記述されています。この時間範囲を経過したときには、おそらく現生人類は別の進化段階にまで達している可能性がありますし、ましてや現在の文明や文化、民族等は跡かたもないと想像されます。この論文は、そのような遠い将来においても、現在の人類はその時の地球環境や生物圏に関して責任をもつべきだという考えに基づいていると思いますが、その考えの妥当性に関して筆者はどうお考えですか。回答(山元 孝広)今の原子力発電の恩恵に浴した世代が、その廃棄物の処分に責任をもつことは当然のことと考えます。福島第一原子力発電所の事故以降、脱原発依存の世論が高まっていますが、廃炉のためには各原発にすでに存在する放射性廃棄物の処分を避けては通れません。単に発電を止めれば「脱原発」が達成されるわけではなく、廃棄物の最終処分まで私達の世代が責任をもつことが原発を継続する上でも、廃止する上でも必要になります。さて、ご指摘の将来の人間活動についてですが、地層処分の閉鎖後の安全評価ではこのことも念頭においた検討を諸外国同様に日本でも行っています。例えば、図1の「地質環境に関する調査・評価項目」に鉱物資源とありますが、これは将来の人間活動による廃棄体との接触を避けるために、掘削の可能性のある地下資源の存在を排除要件として設定しているからです。議論5 将来におけるリスク発現の評価のシナリオ質問(小野 晃)将来のある時点で、処分した放射性廃棄物がヒトに与えるリスクは、その時点の放射性物質の放射能のレベルと、放射性物質がヒトに影響を与える状況に成り得る可能性の積になるのではないかと考えます。放射性物質の放射能のレベルは原子核物理のデータから対数的に減衰することが推定できます。一方廃棄物に由来する放射性物質がヒトに与える状況に成りうる可能性は地質学の問題ですが、具体的にはどのようなシナリオでリスクを評価するのでしょうか。回答(山元 孝広)地層処分における天然バリアは、距離的な隔離のみを担うわけではありません。地下深部に埋設された人工バリアを含む廃棄体は埋設後の腐食により、いずれその機能が失われます。その後、放射性物質は地下水により天然バリア中を移動する過程で、鉱物の吸着能による遅延効果や、地下水による希釈等により、地表の生活環境に到達するまでに放射能が十分減衰することが期待されています。閉鎖後の安全評価はこのような地下水移行シナリオが基本となります。

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