Vol.4 No.4 2011
16/62

研究論文:地質学から見た高レベル放射性廃棄物処分の安全性評価(山元)−205−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)えるような将来予測においては、現在活動中の活火山ではなく、活動していない火山の再活動評価が重要になってくることを示唆していよう。図5は、安達太良火山を含む東北日本南部における前期更新世初頭の約180万年前から現在までの火山の時空分布変遷を示している[8]。この間の火山の分布パターンの特徴でまず重要なことは、火山フロントの位置はほとんど変化せず、フロント沿いには絶えず火山が存在していることである。一方で背弧域の火山の分布は区間ごとに大きく異なり、前期更新世に背弧域で活動していた火山は、中期更新世の前半には活動を停止している。中期更新世後半の30万年前以降になると新たな背弧域火山活動(沼沢火山・砂子原カルデラ火山)が始まるものの、その位置はそれまでの火山活動の空白域であることに注目しなければならない。すなわち、時間を30万年前まで遡ったとすると、沼沢火山や砂子原カルデラ火山は「既存の第四紀火山の中心から半径15 kmの円の範囲内」の外側に新規に出現しており、この要件だけでは火山活動を立地で排除できないことを意味している。図5の東北日本南部の火山の時空分布変化を理解するためには、さらに時間尺度を拡張して地域全体のマグマ噴出率の傾向を見てみる必要がある。図6はその結果で、横軸の時間目盛りは100万年単位、縦軸には火山フロント沿いの那須火山群から背弧側の沼沢火山にかけての会津地域におけるすべての火山からのマグマ噴出量の総和をとっている[9]。図6の地域全体の噴出量階段図から明らかなことは、この地域の破線で示される長期的なマグマ噴出量率が100〜200万年間隔で起きる一度の噴出量が100 km3を超える巨大噴火に支配されていることである。噴出箇所には直径が10 kmを超える大型の陥没構造(カルデラ;図中のピンク色部)が60 km×50 kmの範囲に折り重なるように形成されおり、その活動は1000万年前にまで遡ることができる[10]。沼沢火山や砂子原カルデラ火山の出現は、この火山活動域の中で起きたものであり、第四紀の火山に限定した活動履歴の調査のみからはその位置付けを捉えることはできないものである。ここで例示したような事象の階層構造の存在は、単純な変動履歴の外挿のみの将来予測の難しさをよく表している。数十万〜100万年先の将来予測にある不確実性を軽減するためには、評価期間を大きく遡った対象地域の構造発達史を理解し、“想定外の事象”を極力避ける努力が求められよう。4.3 確率論的評価の限界:事象の地質学的理解に踏み込んだ将来予測の必要性米国では、2002年にネバダ州ユッカマウンテンが高レベル放射性廃棄物処分地として決定され、2008年9月より処分場の建設認可に関する安全審査が始められた。しかし、オバマ大統領のユッカマウンテン計画中止方針により、2010年3月に許認可申請の取り下げ申請が行われ、地層処分は事実上中断している。このような経緯は別にして、ユッカマウンテンでは安全評価において大きな地質学的問題があったことは、我が国の地層処分においても再考しておく必要がある。それは、ユッカマウンテン・サイトが第四紀にも活動している玄武岩マグマの単成火山群内にあるため、サイトを対象とした火山活動のさまざまな影響評価を行わざるを得なかったことである。実施主体である米国エネルギー省(DOE)は、カルデラを形成するような巨大噴火は起こらないとする前提のもと、過去の単成火山噴火履歴から平均的な噴火再来間隔を求め、サイトでの噴火確率を評価している[11]。しかし、単成火山群の噴火活動は、前期更新世(177~78万年前)中期更新世の前半(78~30万年前)中期更新世の後半以降(30万年前~現在)凡例カルデラ火山成層火山・溶岩ドーム群火山フロント139°E140°E141°E飯士砂子原沼沢安達太良37°N050 km139°E140°E141°E37°N050 km139°E140°E141°E37°N050 km燧図5 東北日本南部における火山の時空分布変化第四紀の期間中、火山フロントの位置はほとんど変化していない。一方、火山フロントの背弧域では火山活動域が大きく変動し、特に30万年前以降では背弧域の第四紀火山空白域でも火山が新規に出現した。Yamamoto[8]を一部改変。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です