Vol.4 No.4 2011
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研究論文:地質学から見た高レベル放射性廃棄物処分の安全性評価(山元)−204−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)必ずしもあるとは限らない。水文地質学的変動に至っては、過去の変動がすべて合算された現在値のみが観測され、ここから個々の変動履歴を分離することが困難なケースがほとんどである。このように統計的推論によって変動履歴を超長期の将来に外挿することが困難な場合には、超長期にわたる評価対象地域の地質環境の安定性を担保する別の説明が必要になろう。例えば地震活動や侵食を加速させる隆起運動の状態を記述できる評価対象地域の構造発達史のモデルを確立することで、定性的な将来予測像を示すことが求められる。また、水文地質学的変動では、年代軸の入った水質形成のメカニズムを確立することで、唯一定性的な将来予測が可能になる。具体的にどのような将来予測モデルが必要かは地域の地質特性によって異なるので、その場所に対応した予測論理を地域ごとに考える必要があろう。4.2 日本の火山活動を対象にした長期変動履歴の解析例日本の火山活動を対象にした長期変動履歴の解析・評価手法の開発のため、島弧の典型的な断面モデルとして、2004年から、東北南部の太平洋側から日本海側に至る地域の火山活動の時空分布に関する研究を実施してきた。この解析例を以下に示す。日本には活火山(過去およそ1万年以内に噴火した、あるいは噴気活動の活発な火山)が100余個、“第四紀”(旧定義による過去170万年前から現在まで)に噴火した火山が200個を越えて存在する(図3)。ただし、火山は日本列島に一様に分布するわけではなく、プレートの配置に支配され偏在する傾向が顕著である。すなわち、日本列島の第四紀火山は、プレートの沈み込み境界から陸側プレート内に200~300 km離れた位置にある火山フロント上に最も密に分布し、火山フロントと沈み込み境界の間(前弧側)には火山が分布しない。また、火山フロントから反対の背弧側に離れるほど火山の分布がまばらになる傾向も顕著である。原子力発電環境整備機構では処分候補地の公募にあたって、火山活動の影響を避ける目的で「第四紀火山の中心から半径15 kmの円の範囲内にある地域が含まれない」ことを条件としている[6]。しかし、数十万〜100万年先の将来の火山活動を考える際に、このような排除要件だけでその影響を避けることは可能であろうか? 次に火山活動の時空分布の具体的な解析例を基に考えることとする。火山活動の噴火履歴を解析する際には、横軸に時間、縦軸に積算マグマ噴出量をとったいわゆる噴出量階段図を作成する。図4はその例として、東北日本南部の代表的な活火山である安達太良火山のマグマ噴出物を対象に作成したものである[7]。各マグマ噴火イベントは地質学的には一瞬であるので縦の直線、非噴火時はマグマ噴出がないので横の直線で示される。図4.1)はおよそ10万年前まで遡った噴出量階段図で、破線で示した平均的な噴出率が示すように一定の頻度で噴火が繰り返されたことが階段図から覗える。しかし、同火山について10万年を超える時間尺度まで履歴を拡張すると、図4.2)のように12万〜20万年前に大きな活動休止期があり、10万年前までの平均的な噴出率は過去に延長できない。20万〜26万年前、32万〜43万年前には別のマグマ活動時期が存在したが、個々の平均的噴出率は活動期ごとに異なり、10万年前までの安達太良火山の活動がそのまま一定率を仮定して過去には外挿できないことが明らかである。言い換えると、個々の活動期を支えるマグマ供給系には寿命があり、10万年を超25°30°35°40°45°25°30°35°40°45°145°140°135°130°125°150°145°140°135°130°125°0100500 km1)積算マグマ噴出量(km3DRE)2)積算マグマ噴出量(km3DRE)年代(万年前)年代(万年前)02468101201.02.03.0010203040051015図3 産総研情報公開データベース「日本の第四紀火山」のインデックス図赤色の三角が第四紀火山。http://riodb02.ibase.aist.go.jp/strata/VOL_JP/index.htm図4 福島県、安達太良火山の噴出量階段図1)と2)とも同火山の噴出物を対象にしているが、横軸の時間尺度が異なることに注意されたい。2)のグラフは1)のグラフを包有している。山元・阪口[7]を一部改変。

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